- はじめに
- 『バフェットの財務諸表を読む力』の概要
- バフェット流 利殖術の要諦
- バフェット流 損益計算書の読み方
- バフェット流 貸借対照表の読み方
- 大不況という困難な時代がやってきたとき、現金は最大の武器となる
- 棚卸資産の急激な増減がある企業は、要注意
- 総売上高に占める売掛金の割合が、一貫して他社より低い企業は、ある種の競争優位性を持つ可能性が高い
- 流動比率で企業の優劣を見分けることはできない
- どんな会社を買収しているのか。のれん代が増加している企業に注目
- あまりに高い総資産利益率は、競争優位性の脆弱性を表している場合がある
- 長期借入金より短期借入金が多い銀行は、投資対象から除外せよ
- 永続的競争優位性を持つ企業は、ほとんどの場合、長期借入金が少額もしくはゼロである
- わたしたちが探し求める会社は、自己株式調整済み負債比率が0.80以下
- 内部留保の着実かつ長期的な増加は、永続的競争優位性を持つ企業の特徴のひとつである
- 株主資本利益率が高ければ、やがて株価の上昇となって表われる
- バフェット流 キャッシュ・フロー計算書の読み方
- 永続的競争優位性を持つ企業の評価法
- この書籍を読んだ感想
- まとめ
はじめに
本記事では『史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール』(長いので以降は省略)の概要とそこから得られるバフェット氏の投資銘柄の選定基準について載せています。 バフェット氏の考え方をテーマにした書籍はいくつもありますが、その中でもこの書籍では企業の財務諸表を読み解き、超優良企業を見分けるための手引書のような位置付けとなっています。 貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の中でどの項目がどういった数字の場合に、それは良いのかもしくは悪いのかといった非常に具体的な観点での考察が中心です。 そのため、本書籍を読むためには最低限の財務諸表の知識が有る方が望ましいですが、そういった知識が無くても理解できるような初心者向けの解説になっているのも嬉しい部分です。 本記事で興味を持った人は書籍の方も買って読んでもらえればと思います。
本記事は『史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール』の内容を引用して執筆しております。
史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール | メアリー・バフェット, デビッド・クラーク, 峯村利哉 |本 | 通販 | Amazon
『バフェットの財務諸表を読む力』の概要
『バフェットの財務諸表を読む力』は世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏の息子であるピーター氏の元妻のメアリー・バフェット氏と、バフェット研究の第一人者であるデビッド・クラーク氏の二人の共著となっています。 ちなみにバフェット氏は投資家であって本の執筆は彼の本業とは異なることから、バフェット氏本人が執筆した書籍というのは存在しません(バフェットの手紙は本人の言葉が多いですが、それも編集されたものです)。 この二人はバフェット氏の投資哲学をずっと近くで見続けてきた人達であり、バフェット氏がどういう思考で投資しているのかを本書籍や他の書籍等にして出版しています。 そのため、この本に書かれている内容はほぼバフェット氏が考えている頭の中をそのまま文字にしたと呼べるくらいのクオリティだと思ってもらって大丈夫です。 本書籍で書かれている内容は以下の章立てで、それぞれのテーマに基づいて解説されています。 1.バフェット流 利殖術の要諦 2.バフェット流 損益計算書の読み方 3.バフェット流 貸借対照表の読み方 4.バフェット流 キャッシュ・フロー計算書の読み方 5.永続的競争優位性を持つ企業の評価法 それでは本書籍で書かれている内容について以下に概要を記載いたします。
バフェット流 利殖術の要諦
バフェット氏の師であるベンジャミン・グレアム氏の投資戦略は「過剰に売り込まれた株」を長期的な適性価値よりも安い価格で買っておき、やがて市場が評価の間違いに気づいて上昇したタイミングで売却することで利益を上げる手法だった。 しかし、グレアム氏の投資戦略は数字のみを信頼し、投資対象の企業がどのようなビジネスを行っているかは興味を持たなかった。 バフェット氏はグレアム氏のバリュー投資の考え方を踏襲しつつも、更に対象企業のビジネスが「永続的競争優位性」を持っているかどうかに着目した。 そしてこの永続的競争優位性を持つ企業に投資することできれば、それは的中率100%の予言に乗っているようなものだと断言している。
永続的競争優位性を持つ企業の特徴
バフェット氏は永続的競争優位性を持つ「スーパースター企業」を以下3つのモデルに分類していた。 第一モデル:他にはないユニークな製品を売っている会社 第二モデル:他にはないユニークなサービスを売っている会社 第三モデル:一般大衆からの安定した需要がある製品もしくはサービスを、低コストで仕入れて低コストで売っている会社 第一モデルの他にはないユニークな製品を売っている会社の代表は、「コカ・コーラ」「ペプシ」「ハーシーズ」「バドワイザー」「ワシントン・ポスト」「リグリー」「クラフト」等が挙げられる。 これらの優れた企業は消費者の心の一部を所有しているため、優れた自社製品に変更を加える必要がなく、競合他社よりも高く多く製品を売ることが可能なのである。 第二モデルの他にはないユニークなサービスを売っている会社の代表は、「ムーディーズ」「H&Rブロック」「アメリカン・エキスプレス」「サービスマスター」「ウェルズ・ファーゴ」等が挙げられる。 これらの企業も第一モデルと同様に消費者の心の一部を所有しているため、人々はこの企業のサービスをどうしても必要とし、進んでお金を支払ってくれるからである。 この第一と第二のモデルは要するに競争他社と比べて、圧倒的に優位な製品orサービスを持っていることにより、事実上の独占状態で高い利益を上げることが出来るのが大きな理由である。 第三のモデルの一般大衆からの安定した需要がある製品もしくはサービスを、低コストで仕入れて低コストで売っている会社の代表は、「ウォルマート」「コストコ」「ネブラスカ・ファニチャー・マート」等が挙げられている。 これらの企業は大規模な仕入れと大規模な販売をしており、この大規模な薄利多売によって競合他社よりも高いマージンの確保が可能となっている。 この3つのモデルのいずれかに該当する企業に投資していれば、来年もその次の年もその更に次の年であっても、貴方のふところにはキャッシュが転がりこんでくるようになるだろうと言っている。 また、バフェット氏は永続的競争優位性のうちで重要なのは「永続的」の部分であると言っている。 そして、この永続的かどうかは会社の財務諸表を確認し、そこから永続的に繋がる「一貫性」を読み解く必要があるとしている。
バフェット流 損益計算書の読み方
この章では「損益計算書」のバフェット流の読み方について解説している。 その中でバフェット氏が言っている主な重要確認ポイントは以下となっている。 ・永続的競争優位性を持つ企業は、高い粗利益率を示す傾向がある ・販売及び一般管理費(SGA費)は一貫して低いことが望ましい ・多額の研究開発費を要する会社は、競争優位性に先天的欠乏を内包している ・減価償却費はきわめて現実的なコストである。利益を計算するとき除外すべきではない ・営業利益に占める支払利息の比率は、企業の危機レベルを表す ・まず第一に、純利益が右肩上がりがどうかを確かめよ 基本的にはこれらの特徴を過去10年間分追跡して、一貫性を確認できれば永続的優位性を持った企業か否かを判断することが出来るというのがバフェット氏の主張となっている。
永続的競争優位性を持つ企業は、高い粗利益率を示す傾向がある
損益計算書の中で特に重要な項目の一つは「売上総利益(粗利益)」である。
この粗利益は数字自体に注目するのではなく、更に「粗利益率」を算出(粗利益÷売上)することで、売上に対する粗利益の割合が分かるようになる。
そして、永続的競争優位性を持つ企業は、一貫してこの「粗利益率」が高い傾向があるとバフェット氏は言っている。
企業が高い粗利益を稼ぎ出せるのは、永続的競争優位性の存在によって、売上原価をはるかに上回る価格設定の自由が与えられるからである。
そして、バフェット氏はこの粗利益率が一貫して40%以上の企業は何らかの永続的競争優位性を持っている可能性が高く、逆に一貫して20%以下の企業は永続的競争優位性を持っていない可能性が高いとみなしている。
販売及び一般管理費(SGA費)は一貫して低いことが望ましい
損益計算書の中で「販売及び一般管理費(SGA費)」の項目には経営陣の報酬、宣伝費、出張費、弁護士費用、手数料、従業員の給与等が含まれている。
この費用は永続的競争優位性を持たない企業ほど高くなる傾向があり、それは厳しい競争に苦しんでいるためこれら費用を高く支払い続けなければならない事情がある。
バフェット氏はこのSGA費が一貫して高い(たびたび100%付近やそれを超える数字を示す場合)企業は避ける必要があると解説している。
逆に粗利益に対して30%以下の企業は優良企業とみなせるが、30%~80%程度であったとしても一貫してこの水準を保てているのであれば、永続的競争優位性を持っている可能性はある。
多額の研究開発費を要する会社は、競争優位性に先天的欠乏を内包している
損益計算書の中で「研究開発費」の項目には特許や先進技術の研究・取得のために使われる費用である。
そしてこの「研究開発費」が粗利益に対して高い割合を占めている企業は、競合他社との競争に打ち勝つために慢性的にこの出費を強いられている可能性があるとのことです。
もしもこの費用を出し渋れば競争に負けてしまい、長期的な企業の経済性が危険にさらされているため、競争優位性を保つために必須になっているということです。
尚、この比率の目安は明示されていないが、「研究開発費」が粗利益の約30%を占める企業を例に上げているので、粗利益の30%以上を掛けている企業は永続的競争優位性が危ぶまれている可能性が高いという評価と思われます。
減価償却費はきわめて現実的なコストである。利益を計算するとき除外すべきではない
損益計算書の中で「減価償却費」は機械や建物が長い時間を掛けて損耗していく(1000万円の印刷機の耐用年数が10年の場合は毎年100万円)ことを表しているコストである。
そして、永続的競争優位性を持つ企業は「減価償却費」の粗利益に対する割合が低くなる傾向がある。
尚、この比率の目安は明示されていないが、具体例では永続的競争優位性を持つ企業は6%~8%となっており、逆にそうでない企業は22%~57%の例となっていることから、10%~15%以下の企業は永続的総優位性を持つ企業である可能性が高くなると思われます。
営業利益に占める支払利息の比率は、企業の危機レベルを表す
損益計算書の中で「支払利息」は負債に対して支払った金利である。
そして、営業利益に占める支払利息の比率が高い会社は以下2つのタイプのどちらかである可能性が高い。
一つは、所属する業界特有の激烈な競争にさらされ、競争力を保つために巨額の設備投資が必要な会社である。
もう一つは、ビジネスとしての経済性は優れているものの、特別な理由(レバレッジド・バイアウト等)で多額の債務を背負わされてしまった会社である。
そして、永続的競争優位性を持つ企業の大多数は、支払利息が営業利益の15%以下となっている。
しかし、この比率は業界によっても大きく異なり、銀行等であれば30%でも低い水準となるため、業界内での平均と比べてみることも重要である。
まず第一に、純利益が右肩上がりがどうかを確かめよ
損益計算書の中で「純利益」は売上高からすべての経費と税金を引いたものである。
この純利益が単年でどれだけ上がっていても大きな意味はなく、長期的(10年以上)に右肩上がりのトレンドなのかが、永続的競争優位性を持つ企業を見分けるために非常に重要となる。
尚、このトレンドはかならずしも平坦である必要性は無く、長期的に上向きのトレンドになってさえいれば問題ない。
また、一般的な原則として、売上高に占める純利益の割合が長期的に20%以上で推移してきた企業は何らかの永続的競争優位性を持っている可能性が高く、逆に10%以下で推移してきた企業は永続的競争優位性を持っている可能性が低い。
そのため、売上高に占める純利益の割合が長期的に10%~20%の間の場合はグレーな企業であり、この中にも永続的競争優位性を持つ企業が眠っている可能性は残っている。
バフェット流 貸借対照表の読み方
この章では「貸借対照表」のバフェット流の読み方について解説している。 その中でバフェット氏が言っている主な重要確認ポイントは以下となっている。 ・大不況という困難な時代がやってきたとき、現金は最大の武器となる ・棚卸資産の急激な増減がある企業は、要注意 ・総売上高に占める売掛金の割合が、一貫して他社より低い企業は、ある種の競争優位性を持つ可能性が高い ・流動比率で企業の優劣を見分けることはできない ・どんな会社を買収しているのか。のれん代が増加している企業に注目 ・あまりに高い総資産利益率は、競争優位性の脆弱性を表している場合がある ・長期借入金より短期借入金が多い銀行は、投資対象から除外せよ ・永続的競争優位性を持つ企業は、ほとんどの場合、長期借入金が少額もしくはゼロである ・わたしたちが探し求める会社は、自己株式調整済み負債比率が0.80以下 ・内部留保の着実かつ長期的な増加は、永続的競争優位性を持つ企業の特徴のひとつである ・株主資本利益率が高ければ、やがて株価の上昇となって表われる 基本的にはこれらの特徴を過去10年間分追跡して、一貫性を確認できれば永続的優位性を持った企業か否かを判断することが出来るというのがバフェット氏の主張となっている。
大不況という困難な時代がやってきたとき、現金は最大の武器となる
貸借対照表の中で「現金および現金同等物」は、その呼称が示す通り現金そのものと、現金と同等のもの(銀行の短期CDや財務証券、流動性の高いその他資産等)である。
この「現金および現金同等物」が資産の部で多いときには、企業が競争優位性を活かして大量の現金を稼ぎ出している良い可能性と、事業の一部等を売却したばかりであるという悪い可能性が有る。
逆に保有する現金が少量もしくはゼロの企業の場合は、根源的な経済性が平凡もしくは貧弱である。
そして、ある企業が一時的な事業トラブルに苦しみ、株価の暴落に見舞われているとき、バフェット氏はこの現金の額を必ずチェックし、その企業が直面する危機を乗り切れるだけの財政力があるかを見極める。
見極める方法は「現金および現金同等物」を大量に保有しており、借入金がほぼ無いのであれば無事乗り切れる可能性が高い。
そして、更にこの現金が一時的な事業の売却等ではなく、本業によって蓄積されたものかどうかは、直近7年間の貸借対照を見ることで判断が可能である。
棚卸資産の急激な増減がある企業は、要注意
貸借対照表の中で「棚卸資産」は、将来の売却のために倉庫で蓄えている製品のことである。
多くの企業は棚卸資産が時間経過と共に時代遅れとなるリスクを抱えているが、永続的競争優位性を持つ企業は自社製品に改良を加える必要が無いため、決して時代遅れとはならない。
そのため、永続的競争優位性を持つ企業は棚卸資産と純利益が共に増加する傾向がある。
逆にある企業の棚卸資産が急増したかと思うと、数年で急落するケースも有り、この場合は過酷な競争体質を持つ業界でバブルとバブルの崩壊を経験した可能性が高い。
総売上高に占める売掛金の割合が、一貫して他社より低い企業は、ある種の競争優位性を持つ可能性が高い
貸借対照表の中で「売掛金」は、製品の受け渡した後に支払期限までに現金を受け取るまでの期間に宙に浮いた売上(製品は無くなっているのに現金が未だ入って来ていない状態)のことである。
競争が激しい業界では他社よりも有利な条件を提示して取引をすることが多くなり、その結果として売掛金の総売上高に占める割合が高くなる傾向がある。
そのため、同業種の企業同士を比較する際にこの売掛金が総売上高に対して、一貫して低い企業があったのであれば、その企業はある種の競争優位性を持っている可能性が高い。
流動比率で企業の優劣を見分けることはできない
貸借対照表の中で「流動資産合計」を「流動負債合計」で割った数字は「流動比率」と呼ばれ、1より高いほどその企業の流動性が優れているとされている。
しかし、意外にも永続的競争優位性を持つ企業の多くは流動比率が1を割り込んでいる。
これは通常の収益力では流動負債の返済に窮するはずにも関わらず、永続的競争優位性を持つ企業の高い利益率から来る収益力が簡単に流動負債を返済出来るためである。
要するに永続的競争優位性を持つ企業を判断する際に、アナリスト界隈で重要視される流動比率は判断材料になり得ないということである。
どんな会社を買収しているのか。のれん代が増加している企業に注目
貸借対照表の中で「のれん代」は、他企業を買収したときにその会社が持っている純資産価値よりも高い代金を払った場合の超過分のことである。
基本的に優秀なキャッシュを生み続けている企業は純資産通りに買収されることはほぼ皆無であり、のれん代が大きくなりやすい。
そして、長期にわたってのれん代が増加している場合、その企業が純資産価値より高い永続的競争優位性を買収し続けている可能性があり、非常に好ましい状況と言える。
あまりに高い総資産利益率は、競争優位性の脆弱性を表している場合がある
貸借対照表の中で流動資産と長期製資産を足せば「資産合計(総資産)」となり、純利益からこの総資産を割ることで「総資産利益率」を求めることが出来る。
総資産利益率は高ければ高いほど良いというアナリストが多いが、バフェット氏は40%以上等のあまりにも高い数字となると、業界への参入コストが著しく低い可能性が高いため、この数字が永続的競争優位性を判断するための材料にはならないとしている。
長期借入金より短期借入金が多い銀行は、投資対象から除外せよ
貸借対照表の中で「短期借入金」は、企業の抱える借金のうち、1年以内に支払うべきもののことである。
基本的に短期借入金は長期借入金よりも安く調達できるため、短期市場で借りた5%の資金を長期市場で金利7%で貸すことで、たやすく金儲けに利用できる。
しかし、金融界ではこの手法を「借金の繰り回し(ロールオーバー・ザ・デッド)」と呼び、最悪のシナリオの場合、短期資金の供給元が融資を打ち切り危険な状況に追い込まれることが起きる。
こういった可能性を排除するためにバフェット氏は金融機関の株を買う場合は、常に長期借入金よりも短期借入金が多い会社を除外するのである。
永続的競争優位性を持つ企業は、ほとんどの場合、長期借入金が少額もしくはゼロである
貸借対照表の中で「長期借入金」は、長期負債として企業の抱える借金のうち、1年後以降に満期を迎える借入金のことである。
そして、永続的競争優位性を持つ企業は多くの場合、この長期借入金が少額もしくはゼロである。
この傾向が10年程度続いているのであれば、それは永続的競争優位性を持つ企業の可能性が高く、この理由は高い純利益率から長期借入金を簡単に返済できてしまうことによる。
しかし、稀にレバレッッジド・バイアウト(LBO)で買収された際には、一時的に巨額の長期借入金が発生することが有り、このようなときは対象企業の株よりも社債のほうが良い投資になることが多い。
わたしたちが探し求める会社は、自己株式調整済み負債比率が0.80以下
貸借対照表の中で「負債合計」を「純資産合計」で割ると「負債比率」を求めることが出来る。
永続的競争優位性を持つ企業は高い収益力で事業資金を賄えることから、理論的には純資産合計は高い水準、負債合計は低い水準を示すため、負債比率は低くなるはずである。
しかし、こういった企業はしばしば積み上げられた純資産(内部留保)を自社株買いに注ぎ込むことで、負債比率は上昇し、数字上からは通常の企業と見分けがつかなくなることがある。
そのため、純資産に自社株買いで膨らんだ価値をすべて加えた、「自己株式調整済み負債比率」の数字を見ることで永続的競争優位性を持つ企業かどうかを判別する必要がある。
そして、金融機関等の例外的な企業を除けば、自己株式調整済み負債比率が0.80以下となっている企業は、永続的競争優位性を持つ企業である可能性が高い。
内部留保の着実かつ長期的な増加は、永続的競争優位性を持つ企業の特徴のひとつである
貸借対照表の中で「内部留保」は、企業があげた純利益の中で配当や自社株買いに当てられず、企業内に留保された資金のことである。
内部留保の数字は貸借対照表の中で1,2を争うほどの重要な指標であり、この内部留保の増加率が過去5年間で平均して大きければ、その企業は永続的競争優位性を持つ企業である可能性が高い。
尚、この比率の目安は明示されていないが、具体例では永続的競争優位性を持つ企業は6%~23%となっており、目安として10%を超えていると永続的総優位性を持つ企業である可能性が高いと考えられる。
尚、マイクロソフト等の一部の極めて優秀な企業は、自社株買いを優先して内部留保を減らしていたこともあるので、そういった企業もあることは念頭に置いておくほうが良い。
株主資本利益率が高ければ、やがて株価の上昇となって表われる
「株主資本利益率」は「純利益」を「純資産」で割った指標であり、この値が業界の平均よりも高い会社は永続的競争優位性を持つ企業である可能性が高い。
尚、この目安は明示されていないが、具体例では永続的競争優位性を持つ企業は24%~34%となっており、目安として20%を超えていると永続的総優位性を持つ企業である可能性が高いと考えられる。
バフェット流 キャッシュ・フロー計算書の読み方
この章では「キャッシュフロー計算書」のバフェット流の読み方について解説している。 その中でバフェット氏が言っている主な重要確認ポイントは以下となっている。 ・永続的競争優位性を持つ企業は、資本的支出が低くなる傾向にある ・配当アップよりも自社株買いを続けている企業こそが株主を富ませる 基本的にはこれらの特徴を過去10年間分追跡して、一貫性を確認できれば永続的優位性を持った企業か否かを判断することが出来るというのがバフェット氏の主張となっている。
永続的競争優位性を持つ企業は、資本的支出が低くなる傾向にある
キャッシュフロー計算書の中で「資本的支出」は、1年超にわたって保有される資産(土地や生産設備、特許等)を取得する際に支払われた現金もしくは現金同等物のことである。
世の中の多くの企業は事業継続のための維持費としてこの資本的支出が発生し、例えば電話会社等の通信網を整備する必要がある会社等は年間で莫大な資本的支出を強いられている。
永続的競争優位性を持つ企業はこういった資本的支出が低くなる傾向があり、特に年間で純利益の50%以下という状況を長年にわたって維持している企業はその可能性が高く、25%以下なら永続的競争優位性を持つ企業である可能性は非常に高くなる。
配当アップよりも自社株買いを続けている企業こそが株主を富ませる
キャッシュフロー計算書の中で「株式の発行(償還)、総額」は、株式発行分から株式償還分を差し引いた金額のことである。
永続的競争優位性を持つ企業は大量の現金が流れ込んでくるため、現金の使い道として株主配当か自社株買い、もしくは内部留保という選択をすることになる。
株主の財産を増やしたいのなら、税金が発生する配当よりも、売却するまで税金が発生しない自社株買いに現金を使用する企業が望ましい。
また、何年もの期間で自社株買いを続けている企業(株式の発行(償還)の項目がマイナスの場合)は、それだけ余剰資金の源が存在することの証明であり、永続的競争優位性を持つ企業である可能性が高い。
永続的競争優位性を持つ企業の評価法
この章ではバフェット氏が永続的競争優位性を持つ企業をどのように評価するのかといった、方法について解説している。 その中でバフェット氏が言っている主な重要確認ポイントは以下となっている。 ・エクイティ・ボンドというウォーレンの革命的発想と、実際の活用法 ・ウォーレンはどのように優良企業の株の買い時を決めているのか ・ウォーレンはどのように売り時を決めているのか
エクイティ・ボンドというウォーレンの革命的発想と、実際の活用法
「エクイティ・ボンド」とはバフェット氏が生み出した造語と思われ、意味としては「元本保証型の株価指数連動債権」を指しています。 本来であれば「元本保証の債権」というものは非常に低金利のもので、日本なら10年国債でも年利1%未満です。 逆に株価指数連動のファンドであれば、数十%のレベルで価格が変動する可能性のある、高リスクかつ高リターンの商品となります。 バフェット氏は永続的競争優位性を持つ企業に対する投資は、この2つの商品の利点のみを組み合わせた「エクイティ・ボンド」と言って良いものと捉えています。 つまり、一度投資すれば元本が保証された状態(赤字にならない)で、なおかつ毎年高い利回りの安定したリターンを得られるということです。 これは財務諸表のところで解説した通り、永続的競争優位性を持つ企業は常に高い利益を安定して稼ぎ続けるため、倒産のリスクが基本的にないので元本が保証されているのに等しいという考えから来ています。 また、高い利益は会社を成長させ続けるため、年間の利回りも「右肩上がりで膨らむ利子」のような状態になるのが特徴だということです。
ウォーレンはどのように優良企業の株の買い時を決めているのか
バフェット氏の理論で投資を行う場合、投資開始時の取得価格が安ければ安いほど長期投資としての結果が向上する。 しかし、現実は優良企業の株がバーゲン価格で売りに出されることはほぼ無く、バリュー投資家達はこういった企業の株は既に十分に値上がった状態(高値水準)であるため、投資対象にはしない傾向がある。 そのため、買うタイミングとしては市場全体が弱気相場となっているときを狙うか、事業が一時的な失敗で短期的な下落を招いている場合を狙うのが良いとしている。 そして、この一時的な失敗で下落を招いているタイミングについては、その企業がトラブルを解決可能なだけの資金等を保有しているかを十分に確認する必要がある。 また、逆に買ってはいけないタイミングとして、市場全体が強気相場の絶頂期を迎えていると思われる場合を挙げている。
ウォーレンはどのように売り時を決めているのか
バフェット氏の投資哲学は永続的競争優位性を持つ企業を見つけ出し、その企業に長期わたって投資を続けることで、事実上のエクイティ・ボンドのように資産を増やし続けることが出来るというものである。 そのため、原則としてバフェット氏は株を売らず、何十年でも保有し続けることが理想的であると言っている。 ただし、稀に保有し続けるよりも売却したほうが有利な場合もあり、そういったタイミングでは株を売ることも有る。具体的に以下3つのタイミングについて売り時を説明している。 1つ目のタイミングは、もっと優良な企業をもっと有利な価格で買うチャンス(一時的な暴落等)が訪れ、資金調達のために現在保有している優良企業の株を売る場合である。 2つ目のタイミングは、現在保有している優良企業が永続的競争優位性を失いそうな場合であり、これは技術発展等の理由により、これまで独占できていた競争優位性に疑問符が付いたときである。 3つ目のタイミングは、株式バブルが発生して優良企業の株価がビジネスの真の経済性を遥かに上回る水準達した場合であり、具体的に言うと株価収益率(PER)が40倍以上になったときである。
この書籍を読んだ感想
投資をやっている人間なら知らない人は居ないであろうと思われる、ウォーレン・バフェット氏の具体的な投資対象の選定方法についてこの書籍には書かれていました。 多くのバフェット氏関連の書籍ではどちらかというとバフェット氏の投資哲学や発した言葉についてフォーカスされがちなので、この書籍のように具体的な数字の基準がたくさん出てくる本は非常に印象的だと思います。 実際、バフェット氏はこの書籍に書かれている方法で優良企業を探し出し、その企業に長期にわたって投資をし続けることで億万長者になりました。 そのため、この書籍に書かれている内容を理解できて実践できるようになったのであれば、バフェット氏のような億万長者を目指すことも不可能ではないと思います。 ただし、バフェット氏の投資哲学が今後の投資世界でも通用するかについては、当然検討の余地が有るとは私自身感じているため、本の内容だけを鵜呑みにせずに、得られた知識を元にそれぞれ独自の投資哲学を構築していくことが望ましいと考えています。 それでは私が特に印象に残った箇所について以下で個別に感想を述べていきたいと思います。
永続的競争優位性
バフェットはこの「永続的競争優位性」という単語を非常に良く使っている印象です。 バフェット氏の台頭まで投資界隈にこういった概念が無かったということ自体に驚きですが、要は独占状態に近いビジネスをしており、安定して高い収益を挙げている企業が該当すると思います。 大体こういう条件だと、インフラ系の企業を真っ先に誰もが思い浮かべると思いますが、そういったインフラ系企業は事業の維持費が高いため、収益性がそこまで高く無い企業が多いです。 そのため、バフェット氏は売上に対する利益率を重視して、会社の規模と比べて潤沢な資金を生み続けている企業の価値は同程度の売上の企業と比べて遥かに高いと考えたのだと思います。 ただ、私がこの概念の中で特に印象的だったのは、バフェット氏は純利益の伸び率は意識しても、売上高の伸び率はそこまで重要視していないという部分ですね。 ビジネスをやっている人であれば一般的に誰もが売上高の伸びを一番気にすると思います。これは、ビジネス上の各数字は売上高を中心に決まってくるためです。 そのため、バフェット氏の投資対象を決めていく際の条件で売上高の伸びを大して重要視せずに決めている、「永続的競争優位性」を持つ企業というのはとても興味深い選定基準だったと思います。
エクイティ・ボンドという概念
バフェット氏は永続的競争優位性を持つ企業に投資することは、右肩上がりで膨らむ利子付きの「エクイティ・ボンド」も同然であると解説している。 これは個人的には若干怪しくは感じた。確かに多額の純利益を安定して生み続けている企業が倒産する可能性は低いと思うが、それでも元本保証と呼べるほど安定しているとは言い辛い。 特に市場全体が大暴落したときや解決が長期に渡る問題を抱えた場合は元本を大きく割る可能性も十分にあるとは考えている。 恐らくバフェット氏はそういった問題も高い利益がある企業であれば、長期投資でいつか必ず株価は元に戻るから大丈夫という考えなのだとは思うが、それは過去数十年のアメリカ経済が強かったから戻ったに過ぎないとは感じる。 アメリカ以外の国、特に日本はバブルの崩壊後に株価が戻るまでに30年近くの時を費やしており、バフェット氏の投資哲学で投資をしていた場合は、損失を取り戻すのにも長い時間を要したことは疑う余地がない。 バフェット氏の投資理論は基本的にアメリカが経済大国として長きに渡って強かったというのが理論を補強しているだけで、今後や他の国で同じ理論で考えるのは極めて危険な判断には感じる。 ただ、もちろんバフェット氏が「エクイティ・ボンド」のように考えた理由も一定理解は出来るため、安定して高い純利益を生み続けている企業が投資対象として優れているという部分については非常に同意できる。
まとめ
本記事を閲覧頂きありがとうございました。
『バフェットの財務諸表を読む力』はバフェットの投資哲学を財務諸表の具体的な数字に落とし込んで確認していく内容となっており、バフェットに憧れる人にとっては極めて重要な一冊ではないかと思います。
財務諸表の読み方がイマイチわからないという人に向けても、今回の記事は最低限それぞれの項目は何を表しているのかを説明しているので、大体は理解できたかと思います。
もちろん、バフェット氏は今回の財務諸表の項目以外にも様々なことを考えて投資をしているので、この書籍の内容だけでバフェット氏の投資哲学の全てを理解することは出来ないと思いますが、指標の目安にはなると思います。
私も学生の頃にこの本を読んで非常に勉強になった記憶があったので、今回は10年ぶりかそれ以上ぶりに読み返して記事にしました。
もし参考になったという人がいましたら、ぜひ書籍の方も購入して読んでいただけると幸いです。
また、過去に以下の投資のまとめ記事も書いていますので、興味がある方は閲覧ください。
それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。
投資の基礎知識(株、暗号資産、新NISA、投資信託、オルカン等) – センコの活動記録 (senkohome.com)
投資の基礎知識(株、暗号資産、新NISA、投資信託、オルカン等)
投資の基礎知識(株、暗号資産、新NISA、投資信託、オルカン等)について解説しています。等で重要なことは投資の相場を知る、投資手法を知る、投資対象を知るの3つです。その他にも短期投資、長期投資、中期投資、スイング投資の違いや投資信託であるオール・カントリーやS&P500等の商品についても解説しています。
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