本記事について
本記事は株式投資の世界における、バリュー投資をする際の「ファンダメンタルズ分析」に用いる各種指標についてまとめています。 PERやPBRを始めとして、バリュー投資には様々指標が出てくるのですが、個別に解説しているサイトはあっても、一覧でまとめて解説しているサイトはあまり見当たらなかったので、備忘録も兼ねて自分で整理しました。 最初にそれぞれの指標値を一覧形式で一般的な値とバリュー投資時の対象とする目安の値についてまとめ、その後に各種指標の詳細について解説していきます。
バリュー投資とは
バリュー投資における各種指標を一覧で解説する前にそもそも「バリュー投資」は何かという話をしたいと思います。既に知っている人は飛ばして構いません。
「バリュー投資」というのは、簡単に言えば株式市場で過小評価されている(株価が割安水準で放置されている)と判断される株を見つけ出し、その株を長期的に保有することで、将来的に本来の価値に見合った株価に評価されるのを待つ投資戦略です。
株価というのは移り気で、多くの人々は企業の業績をほとんど見ずに、その時々で話題の企業(AIやIT等のトレンド企業)に資金が集中するため、それらの株価が高騰する傾向があります。
しかし、いずれ時間が経てば業績の良い企業は業績に見合った株価に落ち着くことが多く、逆に話題となっていた企業の株価はバブルのように弾けてしまうことがほとんどです。
このバリュー投資という戦略はそんな市場の短期的な価格変動に惑わされずに、業績や財務状況といった、「企業の本質的な価値(ファンダメンタル・バリュー)」に注目して投資をするために「バリュー投資」と呼ばれています。
また、この時の「企業の本質的な価値」を分析することを「ファンダメンタルズ分析」と呼び、分析結果として現状の株価が割安と判断された対象に投資することが、バリュー投資となります。
バリュー投資の概念自体は、1934年にベンジャミン・グレアム氏とデビッド・ドッド氏が著した『証券分析』という書籍で初めて明確化されたといえます。
ですが、「バリュー投資」を一大手法として有名にしたのは、世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏の影響が大きいと考えられています。
バフェット氏はグレアム氏の「バリュー投資」に更に改良を加えた、バフェット式のバリュー投資によって、世界有数の億万長者となったためです。
尚、バリュー投資以外にも投資戦略は様々あり、他の代表的な戦略としては株価チャートの値動きから将来の株価を予測する「テクニカル分析」や、投資家の期待から大きく値上がりが予測される株に投資する「成長(グロース)株投資」等があります。
興味があれば、バリュー投資に最も詳しいウォーレン・バフェット氏の書籍を読んでみることもオススメします。
指標一覧
それでは「バリュー投資」をする際に必要となる「ファンダメンタルズ分析」に用いる主な指標について、一覧形式で簡単に値の目安を整理します。 それぞれの値はあくまで一般的な値で厳密には業種等によっても大きく異なるため、本気で分析するのであれば対象企業の所属する業界の平均値等も合わせて確認する必要があることはご留意ください。
指標 | 一般的な値 | バリュー投資目安 | 補足 |
---|---|---|---|
PER | 15倍前後 | 10倍以下 | 低いほど割安 |
PBR | 1倍 | 0.8倍以下 | 低いほど割安 |
ROE | 8%~10% | 10%以上 | 高いほど良いが、ROAと比較必要 |
ROA | 3%~5% | 5%以上 | 高いほど良いが、ROEと比較必要 |
BPS | – | – | 企業規模に依存する |
EPS | – | – | 企業規模に依存する |
EV/EBITDA倍率 | 8倍前後 | 8倍以下 | 低いほど割安 |
時価総額 | – | – | 100億円以下が成長度合いは大きい傾向 |
配当利回り | 1%~3% | 4%以上 | 高いほど良い |
売上高成長率 | 5%~10% | 10%以上 | 高いほど良い |
営業利益率 | 5%前後 | 10%以上 | 高いほど良い |
純利益率 | 5%前後 | 10%以上 | 高いほど良い |
負債比率 | 100%~150% | 100%以下 | 低いほど安定している |
各指標の詳細
上記の一覧で紹介した各種指標がそれぞれどういった意味を持つものなのかについて、簡単に解説していきます。
PER(株価収益率)
「PER」は「Price Earnings Ratio」の略称であり、「株価収益率」とも言われる指標です。 この指標の意味としては、企業の現在の株価が純利益に対してどの程度の評価を受けているかを数値で表しています。 この指標を通じて、投資家は企業が生み出す利益に対して現在の株価が高いのか、それとも低いのかを評価することができます。 【計算式】 PERは企業の株価を1株あたりの純利益で割れば算出することが出来ます。 PER = 現在の株価 ÷ 1株あたりの当期純利益(EPS) つまり、株価が1,000円でEPSが100円だったとすれば、PERの数値は10倍となります。 PERの数値がなぜ重要な指標なのかという話ですが、先ず一般論として株式会社というものは、株主のものであるという大前提が存在します(社長のものとか社員のものとか言う人も居ますが、法律的に株主のものです)。 そのため株主のものである株式会社が生み出す利益というものは原則として、配当金という形で株主に還元されることになります。 現代企業が配当で純利益の100%を株主に還元することは基本的に無いのですが、それでも上の企業が仮に全額還元したとすれば、10年で現在の投資資金(株の購入に支払った額)を回収できることになります。 つまり、PERというのは現在の投資資金を何年で回収可能見込みなのかを示す指標であり、回収見込みの無い企業と分かれば、投資する価値を感じないのは当たり前のことですよね。 そして、PERの値が10倍の企業と20倍の企業があったとすれば、20年掛けて投資資金を回収できる企業よりも、10年で回収できる企業の方に誰もが投資したいと思うはずです。 これが、PERという指標の意味であり、重要視される理由でもあります。 ただし、現代の投資としては何年も待って利益を回収しようとする人は少なく、目先の株価の増減で売買を行うので、仮にPERが異常に高い企業であっても、短期に高値で売れる見込みがあれば欲しがる人達も大勢居るので、絶対的な指標ではないことを理解しておいてください。 このPERは業種によってかなり差が出ますが、一般的には15倍前後が日本企業の全体的な平均値とされていますので、この数値付近であれば株価は妥当な範囲と評価されることが多いです。 逆に10倍以下の水準となっている企業は割安と判断されますが、こういった企業が放置されたままなのは単純に人気の低い業種であることが多いです。 また、バフェット氏曰く、PERが40倍を超えた企業は完全にバブルなので手を出しては行けないと警告しています。一般的には20倍を超えてくると危険な水準に近いと言えます。
PBR(株価純資産倍率)
「PBR」とは「Price Book-value Ratio」の略称であり、「株価純資産倍率」とも言われる指標です。 この指標の意味としては、企業の株価がその企業の純資産(株主資本)に対してどの程度の評価を受けているかを示します。 この指標を通じて、投資家は企業の市場価値とその実質価値(帳簿上の価値)の関係に対して、現在の株価が高いのか、それとも低いのかを評価することができます。 【計算式】 PBRは企業の株価を1株あたりの純資産で割れば算出することが出来ます。 PBR = 現在の株価 ÷ 1株あたりの純資産(BPS) つまり、株価が1,000円でBPSが同じく1,000円だったとすれば、PBRの数値は1.0倍となります。 PBRの数値が重要な理由もPERと同様に、株式会社は株主のものであるという原則が大前提となっています。 PBRの計算式で株価をBPSを割っているのですが、このBPSというのは会社が保有している純資産を1株あたりで算出している数値のため、仮に会社が解散した場合は会社の持ち主である株主が、このBPSに応じた資産を得ることが出来ます(厳密には負債等も影響するので、そのまま割当てにはなりません)。 まぁ、現実的には会社は解散ではなく、倒産か吸収合併という形になることがほとんどで株主に直接資産が割り当てられることはほぼ無いのですが。 それでも仮に今すぐ解散した場合に得られる資産と株価の釣り合い具合をPBRを見れば判断できるため、実際に保有している資産以上に評価されている企業や、逆に保有している資産の割に評価されていない企業を見分けることが出来ます。 簡単に言うと100億円分の純資産を保有している企業が、時価総額90億円の株価で買える場合はPBRが0.9倍となり、時価総額110億円の株価で買える場合はPBRが1.1倍になるイメージです。 そのため、PBRは一般的に1.0倍が適正、1.0倍を超えていれば割高、1.0倍未満であれば割安のように判断されることが多いです。 とは言え、大体の人気企業はPBRが1.0を超えています。これは収益性が高い等の理由で将来性に期待されているためであり、1.0を超えているから必ずしも割高だとは限りません。 逆に今後高い確率で事業が衰退する等が見込まれる企業はPBRが1.0未満になることが多いです。 株価はあくまで将来の期待等を含めた価格で売買されているので、実際に企業が保有している純資産とのギャップが生まれるのはそういった背景も影響していることを理解しておいてください。 つまり、PBRが0.5倍で凄い割安だと思っても、将来に期待が出来ない企業であれば、今後株価が値上がりせずにそのまま低価格帯の株価で推移することも十分にありえます。
ROE(自己資本利益率)
「ROE」とは「Return On Equity」の略称であり、「自己資本利益率」とも言われる指標です。 この指標は企業が株主から預かった資本(自己資本)をどれだけ効率的に利用して利益を生み出しているかを測定することが出来ます。 【計算式】 ROEは企業の純利益(税引き後利益)を自己資本(株主が出資したお金等)で割ることによって算出できます。 ROE = 純利益 ÷ 自己資本 × 100 つまり、企業の純利益が1億円で、企業が株主から集めた資金(自己資本)が10億円だった場合、ROEは10%ということになります。 ROEはPERやPBRと違って現在の株価は見ないため、株価が割安か割高なのかを判断する基準としては使えません。 ROEで分かる情報は、企業が株主に投資された資本を上手く使えているのかどうかという、企業の経営効率の良さを測っているものになります。 これは企業というものはどんな業種でも必ずお金を使って運営しており、その運営資金の源が基本的に自己資本となるためです。 もちろん、自己資本以外にも銀行からの借入金等も活用して企業を運営していることが多いですが、あくまで運営のベースとなるのは自己資本となります。 つまり、ROEが高い(経営効率が良い)企業は将来性に期待がし易いということで、投資対象として魅力的に映ります。逆にROEが低い(経営効率が悪い)企業は誰も投資したがりません。 一般的にROEは5%~10%が平均的な値で、10%を超えていればかなり効率的に資本を使った経営が行えていると判断されることが多くなります。 しかし、高いROEが必ずしも良いとは限らず、例えば自己資本よりも遥かに大きい借り入れ金(負債)を使って経営を行っている企業は、ROEが高い水準となる傾向があります。 そのため、バリュー投資の際はROE単独で判断するのではなく、次に出てくるROAとのバランスを見ながら投資する必要があります。
ROA(総資産利益率)
「ROA」とは「Return On Asset」の略称であり、「総資産利益率」とも言われる指標です。 この指標の意味としては、企業が保有するすべての資産をどれだけ効率的に利用して利益を生み出しているかを測定することが出来ます。 【計算式】 ROAは企業の純利益(税引き後利益)を総資産(企業が保有するすべての資産)で割ることによって算出できます。 ROA = 純利益 ÷ 総資産 × 100 つまり、企業の純利益が1億円で、企業が株主から集めた資金(自己資本)が10億円、借入金が10億円だった場合、ROAは5%ということになります。 ROEとROAは非常に似ていますが、違いとしては純利益を自己資本だけで割っているのがROEで、自己資本だけでなく負債も含めた全ての総資産で割っているのがROAです。 そのため、ROAは基本的に必ずROEより低い値となります。例外的に負債が一切無く自己資本だけで経営している企業であれば、全く同じ値となる可能性はあると思います。 ROAは負債を含んでいるため、ROEよりもより本質的な経営効率を判断することに使える一方で、負債がどうしても大きくなる業種もあるため、ROEよりも数値が分散する傾向があります。 一般的にROAは3%~5%が平均的な値で、5%を超えていれば総資産を効率的に運用した経営が出来ていると判断されることが多いです。 また、ROEが高くROAが低い企業の場合は借入金等の負債が大きい可能性が高く、逆にROEが低くROAが高い場合は株主資本を使った経営効率に難がある可能性があります。 例を上げると以下となります。 ①純利益1億円、株主資本10億円、負債10億円の場合は、ROEは10%でROAは5% ②純利益1億円、株主資本5億円、負債20億円の場合は、ROEは20%でROAは4% ③純利益1億円、株主資本20億円、負債5億円の場合は、ROEは5%でROAは4% この場合、①はROEもROAも一般的な水準よりも若干良いため投資対象としては魅力的であり、②はROEが高いがROAが低い水準のため負債の多さが投資対象としては懸念であり、③はROEが低くROAも低い水準のため、経営効率に難があると考えられます。
BPS(1株当たり純資産)
「BPS」とは「Book-value Per Share」の略称であり、「1株当たり純資産」とも言われる指標です。 BPSは単独で使用することは少なく、PBRの算出の際に間接的に利用される事が多いです。 【計算式】 BPSは企業の純資産(資産から負債を差し引いたもの)を発行済み株式数で割ることによって算出できます。 BPS = 純資産 ÷ 発行済み株式数 つまり、企業の純資産が100億円で発行済みの株式数が1,000万株だった場合、BPSは1,000円となります。 仮に企業の規模が1,000億円で発行済みの株式数が同じく1,000万株の企業は、BPSが1万円となるため、BPS自体を指標に使って株の妥当性を確認することは難しいです。 ただし、1株に対してどれだけの資産価値が有るか確認することが出来るため、仮に会社が解散したときに実際にいくら自分の手元に入るかを算出できます(実際には負債などが絡むためその真m手元には入ってきません)。 先程の純資産が100億円で発行済みの株式数が1,000万株だった企業の場合、仮に1,000株保有していたのなら、BPSが1,000円の株を1,000株となるため、解散時は100万円の割当てが期待出来るということになります。 とは言え、やはりBPSは単独では指標として使いづらいため、PBR算出時に間接的に使われる指標と理解しておく程度で良いと思います。
EPS(1株当たり純利益)
「EPS」とは「Earnings Per Share」の略称であり、「1株当たり純利益」とも言われる指標です。 EPSもBPS同様に単独で使用することは少なく、PERの算出の際に間接的に利用される事が多いです。 【計算式】 EPSは企業の純利益を発行済み株式数で割ることによって算出できます。 EPS = 純利益 ÷ 発行済み株式数 つまり、企業の純利益が1億円で発行済みの株式数が1,000万株だった場合、EPSは10円となります。 仮に純利益が10億円で発行済みの株式数が同じく1,000万株の企業は、BPSが100円となるため、EPS自体を指標に使って株の妥当性を確認することは難しいです。 EPSは要は1株あたりにどれだけの利益があるかを表しているもので、基本的には大きいほど収益力が高い企業と見なすことが可能です。 単独の指標としては使いづらいですが、EPSは同企業の過去からの推移(成長率)を確認することで、一株あたりの利益がどれだけ伸びているのかを判断することが出来ます。 企業の純利益率の伸び率を測ることでも同じような確認はできますが、もし期間内で新規株式の発行や分割等をしていた場合、1株あたりの利益が変わっている可能性があるので、EPSの推移を確認するほうが株に対する収益力の確認としては妥当になります。
EV/EBITDA倍率
「EV/EBITDA倍率」とは「EV」が「EBITDA」の何倍になっているかを表す指標となります。 「EV」は「Enterprise Value」の略称で「企業価値」とも言われています。 「EBITDA」は「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization」の略称で「利払い前、税引き前、減価償却前」とも言われています。 この指標はある企業を買収(M&A)する際に、その企業が今後何年間の本業利益で買収時に掛かったコストを回収できるかを判定するための指標として世界的に使われています。 【計算式】 EV/EBITDA倍率はEVとEBITDAを算出した後に、それらを割ることで算出できます(ここに記載以外の算出方法も色々あります)。 EV = 時価総額 + 負債の総額 ー 現金および現金同等物 EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 EV/EBITDA倍率 = EV ÷ EBITDA これまでの指標と違って、これを見ただけで何を確認できるのかは、大半の人がほとんど理解不能だと思います。 EVは上でも説明した通り、企業の価値を表していて、現在の時価総額に純有利子負債(負債ー現金)を足した金額にすることで、事業売却時のおおよその価格を算出しています。 企業を買収するということは単純に時価総額の企業を手に入れられるという訳ではなく、その会社が持つ負債と保有している現金等も合わせて引き継ぐことになります。 例えば、単純に時価総額100億円の企業が2つであっても、負債が少なくて現金を大量に抱え込んでいる企業のほうが、買収後の費用回収の手間が楽になるのは当たり前ですよね。 そのため、EVというのは企業買収時における、真のコストを算出していると言えます。 EBITDAは営業利益に減価償却費を足すことで、本業で稼げる利益とそれを生み出すための設備投資等のコストが反映された額が算出されるため、買収した企業が今後どの程度本業で利益を稼いでくれるのかを測る指標となります。 EBITDAを使わずに分かりやすい純利益を使えば良いと思う人も多いと思いますが、国によって税率や金利、減価償却費等の諸々のコストが異なるため、それらの影響を除外できるEBITDAという国際的な指標が使われている形です。 そして、EV/EBITDA倍率というのは、EVをEBITDAで割ることで、今後の何年間の本業利益で買収時に掛かるコスト(企業価値)を回収できるのかを求めていることになります。 一般的にEV/EBITDA倍率は8~10倍程度が目安となっており、8倍を下回っていれば割安に買収できるという判断になります。 8倍ということは、大体買収してから8年間で投資資金を回収できる企業ということになります。 ただし、業種によっても水準は大きく異なりますし、ベンチャー企業等の場合は倍率がもっと低く無いと、リスクが高すぎて買収には不向き等と判断されることも多いので、あくまで目安に過ぎないことを理解してください。 尚、PERも同じように何年で投資資金を回収できるかという観点での指標ですが、PERはその企業が抱えている負債等は考慮しておらず、また純利益がマイナスの企業を評価することも出来ないため、企業の買収時の指標としてはEV/EBITDA倍率の方が実用的な指標として使われています。
時価総額
「時価総額」とは英名で「Market Capitalization」とも言われ、企業の市場価値を測るための指標です。 投資をしない人でも企業の時価総額◯◯億円みたいな話は良く聞くと思いますが、例えばトヨタ自動車は2024年4月時点で約60兆円の時価総額を誇る企業です。 このように時価総額というのは、対象企業の規模感を表現するための指標として頻繁に使われています。 【計算式】 時価総額は企業の現在の株価に発行済み株式数を掛けることによって算出できます。 時価総額 = 現在の株価 × 発行済み株式数 つまり、企業の現在の株価が1,000円で発行済みの株式数が1,000万株だった場合、時価総額は100億円となります。 この計算式のため、大企業かつ人気企業ほど株価が高くなるため、それに比例して時価総額も高い傾向があります。 日本の上場企業ランキングを見れば分かる通り、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、キーエンス、NTTドコモ、ソニー、NTT等の大企業が上位に名を連ねています。 この時価総額は投資においても重要な指標となっており、例えば時価総額1兆円の企業と100億円の企業があった場合に、他の様々なファンダメンタルズ指標値がほぼ同等の評価であったとすると貴方はどちらに投資を検討しますでしょうか。 一見すれば時価総額の高い企業のほうが安定しているイメージなので、そちらを選ぶ人が多いと思いますが、投資をする際には時価総額の高い企業ほど株価の変化が小さい傾向があるということを理解しておく必要があります。 これは時価総額1兆円の企業が2兆円になるためには莫大な資金で株価を2倍にする必要がありますが、時価総額100億円の企業が200億円になるためには、その資金よりも遥かに少ない資金で株価が2倍になるためです。 そのため、個人投資家の人達の多くは株価の値上がり益を狙う際に時価総額の小さい会社(100億円以下が目安)に投資をして、短期で大きな儲けを狙う様子が良く見られます。 当然、時価総額の低い会社は下振れリスクも高くなるので、安定性を取るなら時価総額の大きい会社、リスクを取って高いリターンを狙うのであれば、時価総額の小さい会社に投資するといった使い分けを意識する必要があります。
配当利回り
「配当利回り」とは英名で「Dividend Yield」とも言われ、企業が出している年間の配当金が株価に対してどの程度の利回りなのかを表す指標です。 大体の企業は利益が出ている企業は株式会社としての使命である株主への還元として、利益の一部を配当金という形で株主に支払っていますので、それが株価(投資資金)に対して、どの程度の利回りなのかをこの指標で知ることが出来ます。 【計算式】 配当利回りは企業の1株あたりの年間配当金を現在の株価で割ることによって算出できます。 配当利回り = 1株あたりの年間配当金 ÷ 現在の株価 つまり、企業の1株あたりの年間配当金が50円で現在の株価が1,000円だった場合、配当利回りは5%ということになります。 この例で言えば、配当金だけで投資資金の回収をするのであれば20年掛かるということになります。 赤字の企業やその他に理由があって配当金を出さない企業もありますが、株を買う際には単純な値上がり益だけでなく、配当金で儲けを出そうとする人も大勢居ます。 そういった人達はこの配当利回りの指標を何よりも重視する傾向があります。 一般的に配当金利回りは1%~3%程度の企業が多く、4%を超えている企業は高配当企業として扱われます。 ちなみに投資における儲けの種類には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」と呼ばれるものが有り、基本的にこれらの儲けを得る手法でどちらが良いというものはありません。 「キャピタルゲイン」は株を買った時の値段よりも株価が高騰した際に売り抜けることで、その差額を利益として得るものであり、近年ではこの手法で儲けを出そうする人が多いのは事実です。 「インカムゲイン」は配当金等のように、その株を保有していることで継続的に得られる収入を指します。 安定した利益を享受できるのは「インカムゲイン」ですが、例えば東京電力のように大震災を期に配当が出なくなった企業等も存在するため、高い配当利回りだからといって、リスクが全くない訳ではないことを覚えておきましょう。 尚、配当について必ず理解しておく必要のある事項として、「権利確定日」「権利落ち日」「支払日」「発表日」の4つがあります。 「権利確定日」は名前の通り、この日に株主名簿に名前が載っている株主(株を購入している人)が配当を受け取る資格が有るため、配当が欲しい場合は必ずこの日までに株を購入しておく必要があります。 「権利落ち日」は権利確定日の1営業日前に設定されることが一般的で、この日に株を購入しても配当が受け取れません。そのため、配当金が欲しい場合はこの日よりも前に株を購入しておく必要があります。 「支払日」は実際に配当金が株主に支払われる日のことです。支払日は権利確定日の数週間から数ヶ月後に設定されることが多いです。 「発表日」は企業が配当の支払いを発表する日のことです。この日に、支払われる配当の額、権利確定日、支払日が公表されます。 この4つは企業ごとに異なるため、もし配当金目当てで投資を考えているのであれば、該当企業の各日付について抑えておきましょう。
売上高成長率
「売上高成長率」とはその名の通り、前年等と比べてどれだけ企業の売上が成長したかを表す指標です。 基本的に企業の規模が大きくなる場合、必然的に売上が最初に成長していくことになるため、売上の成長率が高いほど、企業規模拡大のスピードが早いと見なすことが出来ます。 【計算式】 売上高成長率は対象となる2つの売上高に対して以下の式で算出できます。 売上高成長率 = (今期売上高 ー 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100 つまり、企業の前年の売上が100億円で今年の売上が110億円であったなら、前年と比較した売上高の成長率は10%ということになります。 ただし、1年だけの成長率では何らかの特殊な背景がある可能性はあるので、過去5年~10年分の成長率を並べて、平均でどの程度成長しているのかを確認する方が良いです。 また、この指標も業種によって売上が大きくなりやすい業種とそうでない業種があったり、仮に売上が大きく伸びていても借金が大幅に増大している等の財政的な問題を抱えている可能性もあるため、他の指標と合わせて確認することが重要です。 一般的には売上高成長率は大企業であれば5%~10%前後、中規模以下の企業であれば10%以上が望ましいとされています。
売上総利益(粗利)、営業利益、経常利益、税引前当期利益、純利益
企業の利益を表す言葉としては「売上総利益(粗利)」「営業利益」「経常利益」「税引前当期利益」「純利益」の5つが良く使われます。 「売上総利益(粗利)」は売上高から、その売上を出すのに掛かった原価(売上原価)を差し引くことで求められ、ビジネス単独での収益性を測るのに使われます。 「営業利益」は売上総利益から販売費及び一般管理費(主に人件費や建物の家賃等)を差し引くことで求められ、主要事業(本業)が生み出す現実的な利益を表しています。 「経常利益」は営業利益に本業とは関係しない経費や利益を加えることで求められ、銀行から借りたお金の利払いや資産運用における損益等、本業以外も含めた企業の利益を表しています。 「税引前当期利益」は経常利益に例外的に発生した特別利益と特別損失を加えることで求められ、この利益に対して法人税等の税金が発生することになります。 「純利益」は税引前当期利益に法人税等の税金を差し引くことで求められ、最終的に企業の手元に残った利益となります。この純利益から配当金等が支払われ、残りは内部留保となります。 【計算式】 各利益はそれぞれ以下の式で算出できます。 売上総利益(粗利) = 売上高 ー 売上原価 営業利益 = 売上総利益 ー 販管費 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 税引前当期利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 純利益 = 税引前当期利益 - 法人税等 また、それぞれの利益は売上高との比率を求めることで、「売上総利益率」「営業利益率」「経常利益率」「税引前当期利益率」「純利益率」を算出することも出来ます。 バリュー投資の場合はどちらかというとそれぞれの利益よりも、これらの利益率の方を確認することが多くなります(利益は事業規模で大きく異なるため)。 これら利益率はいずれも重要なものですが、特に重要なものは「営業利益率」と「純利益率」の2つになってくると思います。 本業で稼いだ利益が売上に対してどうかという「営業利益率」が高ければ、本業が極めて収益性の高いビジネスであると言えますし、「純利益率」も同じように高ければ本業以外にも健全な運営が出来ていると判断できるためです。 営業利益率と純利益率の一般的な目安は5%前後、10%を超えていると優良企業と判断されることが多くなります。 もちろん、これらは業種によっても大きく変わってきます。特にIT業界等は利益率が比較的高くなりやすい傾向があるため、投資先としても人気が出やすいです。
負債比率
「負債比率」とは企業が保有している自己資本に対して、負債がどの程度の割合となっているかを図る指標です。 基本的に負債比率が低いほど、自己資本に対して負債が少ないということになるので安全性を考えれば良いのですが、企業規模の拡大のための資金として負債を増やしているケース等もあるので、負債比率だけでは企業の運営が効率的かどうかまでは判断出来ません。 【計算式】 負債比率は企業の保有している負債を自己資本で割り、そこに100を掛けることで算出できます。 負債比率 = 負債 ÷ 自己資本(純資産) × 100 つまり、企業の負債が1億円で自己資本も1億円の場合は、負債比率が100%ということになります。 負債比率は業種によって大きく異なるため目安が難しいのですが、日本企業の平均的な負債比率は約80%とされています。 海外等も合わせると300%くらいまでは健全な範囲とみなされることも多いですが、基本的には100%~150%が適正範囲、100%以下ならば比較的安全と考えられます。 この根拠は負債比率が100%までなら、今ある負債は全て自己資本で返済可能なため、経営に致命的な影響を与えるとは考え辛いためです。 しかし、ROAのところでも少し触れましたが、負債を全く作らずに経営しているのは、利益を生み出すための経営効率が悪いと考えられることも多いため、負債比率は低いほうが安全ですが、経営全般含めて優れているかは他の指標と合わせて判断する必要があります。
まとめ
今回はバリュー投資に必須の指標一覧とその指標の詳細について解説しました。
最初の方に載せた指標一覧を見て、バリュー投資の目安となる値を示している企業があれば、そういった企業に投資を検討するのは良いことかと思います。
ただし、その場合は指標1つだけを見るのではなく、複数の指標を見て総合的に投資対象とすべきかどうかを判断するのをオススメします。
それぞれの指標はとある一面から企業の状況を分析しているに過ぎないため、他の指標と合わせて見ないと重大な問題に気付けない可能性があるためです。
また、それだけでなく同じ業界の平均値等もあわせて見ないと、実は業界内ではそれほど良い数値とはいえなかった等の問題が起きる可能性もあります。
つまり、今回の内容はバリュー投資の一つの目安とはなりますが、本気でバリュー投資で稼ぐつもりが有るのであれば、今回の内容だけでなく継続して業界調査含めて勉強が必要ということをご理解ください。
ちなみに投資のことについて全般的な知識をもっと深めたいという方には、過去に以下記事で簡単な投資の基礎知識を解説していますので、そちらも興味があれば閲覧ください。
それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。
https://senkohome.com/warren-buffett-financial-statements/
投資の基礎知識(株、暗号資産、新NISA、投資信託、オルカン等)
投資の基礎知識(株、暗号資産、新NISA、投資信託、オルカン等)について解説しています。等で重要なことは投資の相場を知る、投資手法を知る、投資対象を知るの3つです。その他にも短期投資、長期投資、中期投資、スイング投資の違いや投資信託であるオール・カントリーやS&P500等の商品についても解説しています。
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