会社を辞めてフリーランスを目指す人の失業保険(雇用保険の失業等給付)受給方法

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本記事について

本記事は現在会社勤めをしているが、今の会社を辞めてフリーランスとして独立する際に、どうすれば失業保険を受給できるのかについて解説しています。

最近は生成AIを始めとした様々な便利ツールが世の中に出回り、個人で出来ることの範囲が格段に広がった印象があります。

そのため、会社を辞めてフリーランスとして独立する人は今後ドンドン増えると予想されますので、そういった方が少しでも有利に進めていくためにも、失業保険という資金面での支援は非常に大きいものと考えています。

しかし、意外に失業保険受給の手続きは複雑かつ、かなり面倒な制限が多いので、何も考えずに受給できるだろうと思っていると痛い目にあいます。

正直、ここまで受給しづらい失業保険の制度は本来の目的である、失業者の支援の役目をあまり果たせていないのではないかと感じていますが、そこら辺は日本政治の根本的な問題だとは思います。

それでは早速、失業保険をもらうまでの手順について解説していきます。

会社員からフリーランスを目指す人が失業保険を受給する際の流れ

それでは具体的に現在の会社を辞めて、フリーランスとして独立する前に失業保険を受給する際の流れについて見ていきたいと思います。

失業保険受給のための申請手順を載せているサイトは数多くありますが、実際にどの程度の日数が掛かるか等はあまり触れられていないことがほとんどなので、この記事ではそういった部分についても詳しく解説していきます。

失業保険(失業手当)とは

先ず今回の記事の要となる「失業保険(失業手当と呼ぶ人もいる)」とは何かについて簡単に解説していきます。

この「失業保険」という名称は実際は正式名称ではなく、単に失業時に保険金のようにお金を貰えるので、多くの人が「失業保険」と呼んでいるだけのものです

失業時に保険金がもらえる制度の正式な名称は「雇用保険」と呼ばれる保険に加入している際にもらえる、「失業等給付」となります

「雇用保険」というのは労働者が失業した時、もしくは継続的な雇用に問題が生じた際に、労働者の生活と雇用の安定を図るために必要な給付を行う公的な保険制度です。

そして、基本的にこの「雇用保険」というのは通常の会社員であれば確実に入ることになりますので、会社員であればそこまで意識する必要はありません。

問題はパートやアルバイトで生計を立てている人達で、この人達は本人が申し出を行わないと雇用保険には加入出来ません。

そのため、今回の記事としている失業保険の受給手順についても、そもそも雇用保険に加入していない人はどうしようもありませんので、次にそういった受給するための前提条件について記載していきます。

前提条件

それでは本記事の手順で失業保険を受給する際の前提条件について記載していきます。

①「雇用保険」に加入している
②一定以上の期間、現在の仕事を継続している(自己都合退職の場合は12ヶ月以上)
③副業をしている場合、週に20時間未満の活動状態であること
④未だ開業届を出していない


①については上でも解説した通り、失業保険というのは雇用保険の給付制度の一つの俗称のため、雇用保険に加入していなければ受給できません。

②は失業理由によって期間が変わりますが、フリーランス転向を目指す人であればほとんどが「自己都合」による退職だと思いますので、その場合は12ヶ月以上働いたうえで辞めないと、失業保険の給付対象になりません。

③はフリーランス転向のために副業を始めている人がそれなりに居るかも知れませんが、その場合は20時間を超えて副業をしていると本業とみなされて、失業給付の対象になりません。まぁ、この時間は自己申告なので嘘は付けますが、後でバレると不正受給として罰せられるので、正確に申告しておく方が良いです。

④も③に近いのですが、フリーランス転向前に副業をしていて、その副業について開業届を出してしまっている場合、それは失業状態と認められないため、失業保険を受給することは出来なくなります。

受給手順の時系列

次に失業保険を申請してから受給するまでにどれくらいの期間が必要となるかを解説します。

今回は以下に私が実際に掛かった時間と各日付を載せておきますので、今後申請を考えている人はこの期間が必要となることを理解しておいてください。

尚、お住いの自治体に依って多少手順が変わる可能性があります。大体の流れは同じだと思いますが、それでも手順や期間等が一部異なる可能性があるということはご理解ください。
ぱっと見ただけだと少し分かりづらいかも知れないので、簡単にそれぞれの申請時系列について解説していきます。

最初の手順として、フリーランスになるために今の会社を辞める必要がありますので、退職の意向を上司に伝えます。法律的には最低1ヶ月前ですが、私は結構立場があったので約3ヶ月前の10/1に伝えていました。

次の手順は実際に会社を退職するところです。ここは会社によって手続きが多少変わると思いますが、基本的には意向を伝えた後にいつ辞めるかを記載した退職願を提出して、最後に引き継ぎ関連を終わらせて退職するという形が一般的です。

その次はすぐに失業保険の申請に行きたいところですが、失業保険の申請に必要な持ち物として、「雇用保険被保険者離職票」というものがあります。

この「雇用保険被保険者離職票」は退職日以降に退職元の会社が手続きをして発行するので、手元に届くまで1週間~2週間近くの時間が掛かります。そのため、この期間は基本的には完全な待ちの状態となります。

「雇用保険被保険者離職票」が届いた後は、お住まいの自治体の「ハローワーク」に行って失業保険受給のための申請を行います。この申請時は簡単な説明と初回講習会の参加案内となります。

その次の初回講習では大体1時間掛けて失業保険の詳細説明を受けることになります。この説明を聞いた後は初回認定日(認定日については別途解説)の日時を案内されます。

初回認定日では就職活動実績を自己申告し、就職に向けた意思があることを伝えます。自己都合退職の場合は、給付制限2ヶ月が有るため、次の認定日は2ヶ月後となります。

初回認定日の後に待機期間(7日)+再就職手当給付制限(1ヶ月)になると、再就職手当(後で解説)がもらえるようになりますので、このタイミングでフリーランスとして開業すれば、最速で失業保険を一度に受け取れます。

2回目認定日後からは実際に失業保険の給付が始まりますので、自己都合の場合は基本的に3ヶ月間受給できます。ただし、毎月認定が必要となるため何か仕事をしてしまうと受給が出来なくなってしまいます(本業の場合は再就職手当として受給、単発バイト等であれば仕事した日の受給が延期される)。

こういった流れが失業保険受給までの全体的な流れです。

正直、私自身が申請した経験としては、あまりにも受給までに時間が掛かり過ぎな制度であるとは感じました。

ここら辺は日本の経済状況を考えれば、今後改善されるとはあまり思えませんので、これくらい時間には貯金で耐えられるという人以外は受給せずに、すぐに就職先を探すことをおすすめします。

しかし、本来はお金のない失業者を救うための制度のはずが、貯金がそれなりにある人でなければまともに使えない制度になっているのは日本の闇を感じますね。

一応補足しておくと、退職理由が自己都合以外(会社が潰れた等)であれば給付制限が無いので、待機期間が終わればすぐに受給することは可能です。

ただ、現実的に世の中の退職者の理由の大半は自己都合であるため、その理由の場合にここまで給付を渋る制度は現実に即していないとは思います。

参考情報として2025年からは給付制限が1ヶ月に短縮されるとニュースがありましたので、今後はもう少し早くなる可能性はありますが、恐らく再就職手当で全額もらうための期間は大きく変わらないと思います。

受給できる金額の目安(自己都合の場合)

詳細の解説に入る前に、失業保険でどの程度の金額が受給できるのかという点について解説しておきます。

受給金額は様々な要因で金額が変わってくるので、貴方の場合はこの金額ですというのはハローワークで確認しないと分かりませんが、私のケースにおける受給金額は以下となります。

私は離職時の年齢が30代、退職理由が「自己都合」のため3ヶ月間の受給、離職前の賃金日額が失業保険の上限額の水準にありました。

この条件で受給開始から早期に再就職手当でもらったので、合計で「約50万円」の受給となりました(申請から全額受給まで約5ヶ月)。

再就職手当を使わずに、自己都合の最長受給期間である、3ヶ月間全てを受給し続けたのであれば、恐らく合計で「約70万円」相当の受給額になったと思われます(申請から全額受給まで約6ヶ月)。

失業保険は受給できればこれだけ大きい額の受給が可能ですので、あまりにも時間が掛かり過ぎるという点を除けば、受給するメリットは非常に大きい制度です。

ちなみに失業保険金額の上限や計算方法等については、以下の厚生労働省のページを確認してください。

厚生労働省の雇用保険の基本手当日額は以下を引用しています。

Microsoft Word – LL050726保01_雇用保険法改正リーフ (mhlw.go.jp)

失業保険を申請する手順の詳細

一連の流れについては上で解説した通りですが、一部の手順については詳細を説明しておかないと良く分からないと思いますので、それぞれ以下で解説します。

認定日

認定日というのは失業保険を受給するうえで非常に重要な日であり、この日時点で未だ申請者が失業状態に有るかどうかを確認するための日です。

この認定日で失業状態であると認定されることで、失業保険の給付対象として認められるということになります。

初回の認定日は失業保険の約3週間後にあり、それ以降は基本的に1ヶ月毎になりますが、自己都合退職の場合は給付制限が1ヶ月あるため、2ヶ月後に2回目の認定日が設定されます。

ちなみに失業状態と認定されるためには、記入用紙に自己申告で就業状況等を記載して報告する形になります。

自己申告なのでどうとでも書けそうですが、あとから嘘とバレると不正受給として罰せられるので、嘘は書かないほうが無難です。

また、面倒な点として就業のための活動実績を報告する必要があり、この実績は単にWEBサイトで就職先を探していた等ではなく、実際に面接に行ったとか、セミナーに参加したとかそういった実績が必要になります。

一番簡単な実績は「ハローワークで就職のための相談をした」だと思いますので、認定日の後にすぐに相談しに行って翌月までの実績を即満たしておくということが可能です。

この実績は毎月最低2回必要なのですが、初回認定日は初回講習の参加だけでOK、2回目認定日は1回の実績でOKとなっていますので、それ以降は多少面倒だということを理解しておいてください。

給付制限

給付制限というのは自己都合で会社を退職した人が、失業保険を受け取ることを制限されている期間のことです。

自己都合というのは、会社が嫌になったとか、給料が安いので別の仕事を探すとか、キャリアアップを目指して一時的に辞めるとか、そういった個人に属する理由となります。

日本では退職理由のほどんど(データ的には8割程度と言われている)が自己都合と判定されるため、恐らく今回の記事を読んでいる方が辞める際も自己都合という扱いになると思います。

海外では会社の環境が悪い等は自己都合ではなく、会社都合となるため失業給付が受けやすいようですが、日本はそれらの理由もまとめて就業者の自己都合という扱いになっているのはお国柄というところですね。

昔はこの給付制限が非常に長くて3ヶ月だったようですが、現在は2ヶ月となっており、2025年度には1ヶ月に短縮される見込みとなっています。

そして、通常の失業保険は基本手当という形で給付を受けるのですが、次に解説する再就職手当で受ける場合は、給付制限が2ヶ月ではなく、1ヶ月で済みます。

なので、最速で全額給付してもらうためには再就職手当を使う方が早くもらえます。

再就職手当

再就職手当とは、失業保険の給付を申請した後に給付期間(自己都合の場合は3ヶ月)の終わりよりも早くに次の就職先が見つかった場合に、残りの給付金額を貰える制度になります。

しかし、残りの給付金額は満額で貰える訳ではなく、残りの給付日数が3分の2以上であれば70%、3分の2未満でかつ3分の1以上の場合は60%のみもらえます。

そのため、失業保険をすべて満額でもらうためには本来の給付期間の終わりまでずっと待ち続ける必要があるのですが、その間は仕事をしてはいけませんし、毎月の認定日とそのための就業活動も必要になります。

フリーランスとして早期に独立したい人は、そんなに長い間待ち続けるのは嫌だと思いますので、給付制限期間が終わればすぐに再就職手当を申請して、残りの全額をもらうのが一番良いと思います。

幸い再就職手当の給付制限は1ヶ月なので、給付が始まるよりも早くに再就職手当の申請が出来ます。尚、気をつけて欲しいのは給付制限が明ける前に開業してしまうと、失業保険が一切もらえなくなってしまいます。

ちなみに再就職手当の対象となるためには本当に就職したことを証明する必要があるため、フリーランスの場合は開業届を提出した際の控えをハローワークに出す必要があります。

開業届事態は税務署に提出すればそれで終わりなのですぐに済みますが、自治体に依ってはそれだけでなく、事業をしている証も出せと言われます(私が言われました)。

その際には取引先との契約書や借りた物件の賃貸契約書等を出せば良いとのことでしたが、フリーランスとしてこれから活動する人には提出が難しいと思いますので、私は事業用に使った30万円程度の領収書(経費)を出すことでこれをクリアしました。

どのみち事業用に高いPCは買いたかったのでちょうど良かったのですが、人によってはこの基準を満たすのがかなり厳しい可能性がありますので、この点も理解しておいてください。

フリーランスとして独立(開業)

フリーランスとして独立すると一言で済ませていますが、具体的には税務署に開業届として提出する必要があります。

以下に開業届の作成方法を記事にしていますので、こちらで手順を確認してください。

この作成方法で作った開業届を税務署まで持っていたところ、手続きは数分も掛からず終わりましたので、開業することは非常に簡単です。

フリーランスになるための開業申請の手続き方法(マネーフォワードのクラウド開業届) – センコの活動記録 (senkohome.com)

フリーランスになるための開業申請の手続き方法(マネーフォワードのクラウド開業届)
本記事はフリーランスや個人事業主として独立する際の開業届をマネーフォワード(MoneyForward )で申請するための手順について解説しています。税務署に行かなくてもクラウド開業届を使うことで申請を出せますので非常に便利です。青色申告の選択や屋号等の設定方法についても解説しています。

【追記】再就職手当が振り込まれました

上記記事で申請していた再就職手当が無事振り込まれました。

どうやらハローワークからの振り込みは「シヨクギヨウアンテイキヨク」という名称で振り込まれるようです。

合計で44万円分程度となりました。想定では50万円いくかなと思っていましたが、そこまでの金額にはなりませんでした。

私の場合は4/8に開業届と再就職手当申請を出し、4/22に個人事業を開始したことを証明するための経費の領収書を提出しました。

そして、画像の通り、4/24と5/9の2回に渡ってハローワークから再就職手当が振り込まれました。

2回の理由は恐らく4/22までの基本手当分と再就職手当分が分けられているのだと思われます。

私の場合は振り込まれるのが早いケースだと思いますので、再就職手当を期待している人はもう少し振込までの期間が必要となる可能性がありますのでご注意ください。

まとめ

今回はフリーランスとして独立を目指す人がどうやって失業保険を受け取れば良いのかを記事にしました。

私自身が各申請をするのが結構大変だったので、こういった経験談を備忘録としてでも残しておけば誰かの役に立つかと思いました。

正直制度としてはどうなのかと思う失業保険ですが、実際に貰える額はかなり大きいので使えるのであれば使うのが望ましいと思います。

ここまで使いづらい制度にしているのは恐らく日本人は誰も文句を言わないから、政府が好き放題削っているからなのだと思いますが、こういう不満も個人的には積極的に言っていく方が良いと思っています。

何故ならそういう声がないと政府は何の問題も無いのだと思って、更に制度を改悪していく可能性が高いからです。

そのため、本記事を読んで制度について何か感じたことが有る人は、積極的に発信していってもらうと、少しは制度も改善に向かうのではないかと思います。

それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。
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