論理クイズ

【論理クイズ】12枚のコインと天秤 ─ 3回の計量で偽物を見つけ出す情報の数え方

【論理クイズ】12枚のコインと天秤 ─ 3回の計量で偽物を見つけ出す情報の数え方

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。 本記事は論理クイズの名作「12枚のコインと天秤」について解説します。

見た目がまったく同じ12枚のコインのうち、1枚だけ重さの違う偽物が混ざっています。偽物が本物より重いのか軽いのかは分かりません。使えるのは分銅のない天秤だけ。さて、たった3回の計量で、偽物がどれかを特定し、しかも重いのか軽いのかまで当てることができるでしょうか。一見すると回数が全然足りないように思えますが、実はぴったり足りるのです。

図解

12枚のコイン問題とは

12枚のコイン問題(英語では twelve-coin problem、偽コイン問題全般は counterfeit coin problem)とは、天秤の限られた計量回数で偽物を特定するパズルの代表格です。ルールを整理しておきます。

・コインは12枚。うち1枚だけ重さが違う偽物で、残り11枚は同じ重さ ・偽物が本物より重いのか軽いのかは分からない ・天秤は左右の皿にコインを載せて傾きを見るだけ。分銅はない ・計量は3回まで。偽物がどれか、そして重いか軽いかを特定する

このパズルが面白いのは、「重いか軽いか分からない」という一点にあります。仮に偽物が重いと分かっているなら、話はずっと簡単です。しかし軽重不明の場合、天秤が傾いても「左の皿に重い偽物がある」のか「右の皿に軽い偽物がある」のか区別できないため、素朴なやり方ではすぐに手詰まりになります。

1945年に雑誌へ載り戦時中に大流行した

このパズルの歴史は意外と新しく、記録に残る初出は1945年1月、アメリカの数学雑誌アメリカン・マスマティカル・マンスリーだとされています。E・D・シェルが出題したのは8枚のコインから軽い偽物を2回で見つける問題で、その後まもなく、軽重不明・12枚・3回という今の形が広まりました。

第二次大戦のさなか、このパズルは連合国側の科学者や軍人の間で爆発的に流行したと伝えられています。あまりに多くの人が仕事そっちのけで考え込んだため、「このパズルをドイツ側に落として敵の研究を妨害してはどうか」という冗談まで残っているほどです。真偽はともかく、それだけ人を捕まえて離さない問題だったことは間違いないと思います。

戦後は数学パズルの定番として世界中の本に収録され、今では情報理論やアルゴリズムの入門教材としても使われています。

6枚ずつ量る初手はなぜ悪手なのか

多くの人が最初に思いつくのは、「12枚を6枚ずつに分けて量る」という初手です。半分に割って絞り込む、いわゆる二分探索の発想ですね。しかしこれが典型的な悪手になります。

理由は2つあります。第一に、偽物は必ずどちらかの皿に載っているので、天秤は100%傾きます。結果が1通りに決まっている実験からは、得られる情報が減ってしまいます。第二に、傾いたとしても「左の6枚に重い偽物」「右の6枚に軽い偽物」かが区別できないため、容疑は12通りしか減りません。

ここで、このパズルの核心になる数え方を導入します。天秤の1回の計量の結果は、「左が重い」「釣り合う」「右が重い」の3通りです。つまり3回の計量で区別できるパターンは、最大で3×3×3の27通りしかありません。

一方、答えの候補は「どのコインが偽物か」の12通りと「重いか軽いか」の2通りの掛け算で24通りあります。27対24。ぎりぎり足りますが、余裕はたった3つです。だからこそ、「必ず傾く計量」のように結果の3通りを使い切らない手を1回でも打つと、その瞬間に3回では解けなくなるのです。釣り合いも貴重な情報である、というのがこのパズル最大の教訓です。

4枚ずつ量って入れ替える具体手順

では実際の解法です。初手は4枚対4枚で量ります。コインに1〜12の番号を振り、1・2・3・4を左の皿、5・6・7・8を右の皿に載せたとしましょう。

釣り合った場合は話が早く、偽物は残りの9〜12の4枚の中にいます。しかも1〜8の8枚は本物と確定したので、基準として自由に使えます。2回目は9・10・11と本物3枚を比べれば、傾き方で容疑者と軽重が絞れ、3回目で特定が完了します。

面白いのは傾いた場合です。仮に左が下がったとすると、容疑者は「重いかもしれない1〜4」「軽いかもしれない5〜8」の8枚に増えたように見えます。ここでの妙手がコインの入れ替えです。

2回目は、左の皿を1・2・5、右の皿を3・4・6に組み替え、7・8はいったん下ろします。重い容疑の3・4を右へ移し、軽い容疑の5を左へ移した形です。この計量の結果は3通りに分かれます。

釣り合った場合:偽物は下ろした7・8のどちらか。両方とも軽い容疑なので、3回目に7対8で比べて軽い方が偽物 ・さっきと同じ左下がりの場合:原因は動かさなかったコイン。左に残った1・2(重い容疑)か右に残った6(軽い容疑)に絞られるので、3回目に1対2で比べて重い方が偽物、釣り合えば6が軽い偽物 ・傾きが逆転した場合:原因は皿を移したコイン。右へ移した3・4(重い容疑)か左へ移した5(軽い容疑)に絞られるので、3回目に3対4で比べて重い方が偽物、釣り合えば5が軽い偽物

要するに、「動かさない」「移す」「下ろす」の3グループに分けておくと、傾きの変化(同じ・逆転・釣り合い)がそのまま犯人のグループを教えてくれるという設計です。細部の割り振りには何通りかの流儀がありますが、どの流儀でも背骨は同じで、3通りの結果が3つのグループと1対1に対応するように毎回の計量を組むことが解法の本体になっています。

二分探索ではなく三分探索という発想

このパズルが教えてくれるのは、1回の試行で結果が何通りに分かれるかを最初に数えるという考え方です。

はい・いいえで答える質問なら1回で2通り、n回で2のn乗通りまで区別できます。20回の質問で約105万通りを当てられる「20の扉」ゲームや、プログラムの不具合を持ち込んだ変更履歴を半分ずつ絞り込むgit bisectは、この2進法の世界です。一方、天秤は1回で3通りに分かれるので、同じ回数でも2進法より多くの候補をさばける3進法の道具だと言えます。

この視点は実務のトラブルシューティングにそのまま使えます。障害の切り分けで「サーバーAが原因か、そうでないか」という二択の検証を重ねるより、1回のテストで「ネットワーク層か、アプリ層か、データ層か」のように結果が多方向に分かれる検証を設計できれば、少ない手数で原因にたどり着けます。結果がほぼ1通りに決まっている確認作業を何度も繰り返すのは、6枚対6枚の計量を繰り返しているのと同じことなのです。

また、「異常なし」という結果にも情報量があるという教訓も重要です。天秤の釣り合いが9〜12を容疑者にしてくれたように、正常に動いている部分の確認は、消去法で異常の在り処を照らしてくれます。

よくある疑問

最後に、12枚のコイン問題についてよく出る疑問に答えておきます。

本物と分かっているコインを1枚借りられたら何枚までいけますか?

13枚まで扱えるようになります。軽重まで特定する条件では、n回の計量で扱える枚数は最大(3のn乗−3)÷2枚、つまり3回なら12枚が限界です。しかし本物の基準コインを1枚追加で使えると、皿の枚数合わせの自由度が上がり、(3のn乗−1)÷2枚、3回で13枚まで対応できます。信頼できる基準が1つあるだけで探索能力が広がるというのは、校正済みの計測器が1台あると検査が楽になるのと同じ構造です。

計量手順を最初に全部決めておいても解けますか?

解けます。前の結果を見てから次の載せ方を変える適応型に対して、3回分の載せ方をあらかじめ固定しておく非適応型の解法も存在します。各コインに「1回目は左、2回目は載せない、3回目は右」のような役割表を3進法で割り振っておくと、3回の傾きの列がそのまま偽物の番号と軽重を示すコードになります。誤り訂正符号にも通じる、みごとな設計だと思います。

偽物が重いと最初から分かっている場合はどうなりますか?

問題は大幅に簡単になり、n回の計量で3のn乗枚まで扱えます。3回なら27枚です。毎回コインを3等分し、2グループを天秤に載せれば、傾けば重かった側、釣り合えば載せなかったグループに偽物がいると分かるので、候補が毎回3分の1になります。軽重不明の12枚版がいかに絶妙な難度設計かが、比べるとよく分かります。

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まとめ

本記事は論理クイズの名作「12枚のコインと天秤」について解説しました。如何だったでしょうか。

このパズルの本質は、天秤の使い方のテクニックではなく、「答えの候補は24通り、実験で区別できるのは27通り」と先に数えてしまう発想にあります。数えた瞬間に、無駄な計量が1回も許されないことと、それでも3回で足りることの両方が見えてきます。闇雲に手を動かす前に、情報の収支を見積もる。この習慣はデバッグにも実験計画にも、日々の調べ物にも効いてきます。

「釣り合いも情報」「異常なしも手がかり」天秤が教えてくれるこの感覚を、ぜひ持ち帰ってください。

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