法則

【法則】ジップの法則 ─ 2位は1位の半分、3位は3分の1になる不思議

【法則】ジップの法則 ─ 2位は1位の半分、3位は3分の1になる不思議

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。 本記事は、言葉や世の中の数字に潜む不思議な規則性「ジップの法則」について解説します。

ある文章に出てくる単語を、使われた回数の多い順に並べてみると、驚くほどきれいな規則が現れます。1番よく使われる単語を基準にすると、2番目はその約半分、3番目は約3分の1、4番目は約4分の1というように、順位が下がるほど登場回数がきれいに減っていくのです。つまり「順位」と「登場回数」をかけ算すると、だいたい同じ値になる。これがジップの法則と呼ばれているものです。しかもこの規則は、言葉だけでなく、都市の人口や所得の分布など、世の中のあちこちに顔を出します。この記事では、その面白さと、なぜそうなるのかを紹介します。

図解

ジップの法則とは

ジップの法則(英語では Zipf’s law)とは、「あるものを頻度の高い順に並べたとき、その頻度は順位に反比例する」という経験則です。もともとは、アメリカの言語学者ジョージ・ジップが、言葉の使われ方を調べる中で見つけました。

「反比例する」というのを、具体的な言葉で言い換えてみましょう。2位のものは1位の約2分の1、3位は約3分の1、10位なら約10分の1の頻度で現れる、ということです。言い方を変えると、「順位」に「頻度」をかけると、どの順位でもだいたい同じ数になるのです。1位の頻度が1000なら、2位は500くらい(2×500=1000)、10位は100くらい(10×100=1000)、という具合です。

英語の文章で調べると、最もよく使われるtheを筆頭に、単語の登場回数がこの法則にきれいに沿うことが知られています。日本語でも、「の」「は」「た」といった頻出語を上位から並べると、似た傾向が見られます。一部のものが飛び抜けて多く使われ、残りの大多数はごくわずかしか登場しない。この偏りが、驚くほど規則正しい形をしているのです。

「順位×頻度=一定」を実感してみる

この法則の面白さは、上位のものが、想像以上に大きな割合を占めている点にあります。少し数字で実感してみましょう。

たとえば、ある本に出てくる単語を数えたとします。1位の単語が全体の7%、2位が3.5%、3位が2.3%……と、順位が下がるにつれてきれいに減っていきます。ここで注目したいのは、ほんの一握りの単語が、文章全体のかなりの部分を占めてしまうことです。上位の数語だけで、文章の何割もが埋まってしまう一方、大多数の単語は数える程度しか出てきません。

私たちは日ごろ膨大な語彙を使っているつもりでも、実際に繰り返し使っている言葉は、ごく限られているのです。この「少数が全体を支配し、多数は薄く長く広がる」という形は、グラフに描くと、最初に急激に落ちて、その後ゆるやかに長く尾を引く独特の曲線になります。この長い尾(ロングテール)を持つ形こそ、ジップの法則の見た目の特徴です。

この偏りの大きさは、具体的な割合で見るといっそう驚かされます。英語の文章では、よく使われる上位のわずか100語ほどで、文章全体の半分近くが占められてしまうと言われます。数万語の語彙があるにもかかわらず、実際に文章の大半を担っているのは、ほんの一握りの常連の単語なのです。「the」や「の」のような、意味の薄い言葉ほど大量に使われ、豊かな意味を持つ言葉ほど出番が少ない。この、ちょっと皮肉な偏りの中に、ジップの法則はきれいな数式となって潜んでいます。

言葉だけではない ─ 世の中に広がる規則

ジップの法則が本当に不思議なのは、言葉以外の、まったく無関係に見える対象にも当てはまることです。

有名な例が、都市の人口です。ある国の都市を人口の多い順に並べると、2番目に大きい都市は、1番目のおよそ半分、3番目はおよそ3分の1の人口になる、という傾向が多くの国で見られます。言葉の頻度とまったく同じ形が、都市の規模に現れるのです。

同じような偏りは、所得や資産の分布、企業の規模、ウェブサイトのアクセス数、本の売れ行きなど、さまざまな場面で報告されています。ごく一部の巨大なものと、無数の小さなものが、規則正しい割合で並ぶ。分野がまるで違うのに、同じ数学的な形が繰り返し現れる。この普遍性が、多くの研究者を惹きつけてきました。

たとえば、動画サイトやネット通販を思い浮かべてみてください。ごく一部の大人気の動画や商品にアクセスが集中する一方で、再生数や売上がごくわずかな作品が、気が遠くなるほど大量に存在します。この「ほんの少しの大ヒットと、無数のニッチ」という構造は、まさにジップの法則が描く形そのものです。かつては埋もれていた「長い尾」の部分に、ネットが光を当てたとも言えます。言葉の頻度という素朴な観察から始まった法則が、現代のビジネスを読み解く視点にまでつながっているのは、面白いところだと思います。当サイトのベンフォードの法則も、単位や分野を超えて数字に共通の偏りが現れる話でしたが、ジップの法則は「順位と規模の関係」という、また別の角度から世の中の偏りを照らし出しているのです。

なぜこんな規則が生まれるのか

では、なぜこれほど広く同じ形が現れるのでしょうか。実は、その理由については、今もはっきりした一つの答えがあるわけではありません。ここは正直に押さえておきたいところです。とはいえ、有力とされる考え方はいくつかあります。

ジップ自身が唱えたのは、「最小努力の原理」という考え方でした。人は言葉を使うとき、できるだけ楽をしたい(少ない語彙で済ませたい)という気持ちと、相手にちゃんと伝えたい(言葉を使い分けたい)という気持ちの、両方を持っています。この「楽をしたい」と「正確に伝えたい」のせめぎ合いのバランスが取れたとき、結果としてジップの法則のような分布が生まれる、という説明です。

一方で、もっと単純な仕組みからでも、この形が自然に現れるという指摘もあります。たとえば、意味を考えずにでたらめに文字を打っただけの「文章」でも、ジップの法則に似た分布が出てくることが示されています。つまり、この規則性は言葉の意味そのものよりも、何かを数えて順位づけするという行為の性質から生まれている可能性もあるのです。理由がまだ完全には解明されていないところも含めて、ジップの法則は奥の深い現象だと言えます。

ジップの法則についてよくある疑問

ベンフォードの法則と、何が違うのですか?

どちらも世の中の数字に潜む規則的な偏りを扱う、いとこのような法則ですが、注目している対象が違います。ベンフォードの法則は「数字の先頭の桁」に注目し、1で始まる数が最も多いという偏りを示します。一方、ジップの法則は「順位と規模(頻度)の関係」に注目し、順位が下がるほど規模がきれいに反比例して小さくなることを示します。着眼点は違いますが、「自然に生まれたデータには、共通の数学的な形が現れる」という発見の面白さは、二つに共通しています。セットで知っておくと、数字の世界の見え方が広がると思います。

パレートの法則とは関係がありますか?

深く関係しています。当サイトで解説したパレートの法則は、「全体の成果の8割は、上位2割が生み出す」という「一部への集中」を表す経験則でした。ジップの法則も、ごく一部のものが全体の大部分を占めるという点で、これと同じ「偏りの構造」を別の形で言い表しています。実は両者は、数学的には「べき乗則」と呼ばれる同じ仲間に属していて、少数の巨大なものと、多数の小さなものが規則的に並ぶという共通の骨格を持っています。世の中の偏りを、順位から見たのがジップ、割合から見たのがパレート、と考えると分かりやすいかもしれません。

自分で確かめることはできますか?

手軽にできます。おすすめは、手元の文章に出てくる単語を数えてみることです。長めの文章を用意して、単語(日本語なら「の」「は」などの助詞を含めて)が何回出てくるかを数え、多い順に並べてみてください。上位のいくつかの語が飛び抜けて多く、順位が下がると急に少なくなる様子が見えるはずです。あるいは、住んでいる国の都市を人口順に並べてみるのも面白い実験です。2位の都市が1位のおよそ半分くらいになっていれば、そこにジップの法則が働いています。身近な数字の中に隠れた規則を、自分の手で見つけられるのは、この法則の楽しいところだと思います。

関連する法則・バイアス

数字の先頭桁の偏りを扱う「ベンフォードの法則」、少数への集中を表す「パレートの法則(戦略的思考)」、そして半導体の指数的成長「ムーアの法則」の記事です。

まとめ

本記事は「ジップの法則」について解説しました。如何だったでしょうか。

順位と頻度をかけると、だいたい一定になる。2位は1位の約半分、3位は約3分の1という、きれいすぎる偏りが、言葉の使われ方に現れていました。しかもこの同じ形は、都市の人口、所得、企業規模など、まるで無関係に見える世の中のあちこちに顔を出します。ごく一部の巨大なものと、無数の小さなものが規則正しく並ぶ「ロングテール」の構造こそ、この法則の正体です。

なぜこうなるのかは今も完全には解明されていませんが、「最小努力の原理」など、興味深い説がいくつも提案されています。理由が謎めいているところも含めて、ジップの法則は、見慣れた数字の世界が実は不思議な秩序に貫かれていることを教えてくれます。次に長い文章や都市の一覧を見かけたら、上位と下位の差を眺めてみてください。そこに、静かに働く数学の規則が見つかるはずです。

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それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。

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