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【法則】ベンフォードの法則 ─ 世の中の数字は「先頭が1」で始まるものが最も多い

【法則】ベンフォードの法則 ─ 世の中の数字は「先頭が1」で始まるものが最も多い

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。 本記事は数字の世界に潜む不思議な規則性「ベンフォードの法則」について解説します。

世の中にあふれる数字、たとえば川の長さ、国の人口、株価、電気代、建物の高さ。これらの数字の一番左の桁(先頭の数字)に注目すると、驚くべき偏りが見つかります。1から9まで均等にばらけていそうなものですが、実際には先頭が「1」で始まる数字が圧倒的に多く、約30%を占めるのです。一方、先頭が「9」の数字は5%もありません。この直感に反する現象がベンフォードの法則で、なんと会計の不正や選挙の不正を見破る道具としても実際に使われています。

図解

ベンフォードの法則とは

ベンフォードの法則(英語では Benford’s law)とは、「自然界や社会に現れる多くの数値データでは、その先頭の桁が『1』である確率が最も高く、数字が大きくなるほど先頭に来る確率は下がっていく」という、統計的な規則性です。「先頭桁の法則」とも呼ばれます。

具体的な数字を見ると、その偏りの大きさに驚きます。多くのデータで、先頭の桁が現れる確率は、おおよそ次のようになります。

先頭の桁現れる確率
1約30.1%
2約17.6%
3約12.5%
4約9.7%
5約7.9%
6〜9合わせて約22%

先頭が1と2の数字だけで、全体のほぼ半分(約48%)を占めてしまうのです。もし1から9が均等なら、それぞれ約11%ずつになるはずですから、これは相当に大きな偏りです。しかも不思議なことに、この偏りは川の長さでも、人口でも、物理定数でも、多くの会社の会計データでも、共通して現れます。単位をメートルからマイルに変えても、円からドルに変えても、この分布は保たれます。まるで、数字の世界に隠された自然の設計図のようです。

なぜ「1」が多いのか

なぜこんな偏りが生まれるのでしょうか。直感的な理由を、「数が増えて成長していく様子」で考えると分かりやすくなります。

たとえば、あなたの貯金が100万円から始まって、少しずつ増えていくと想像してください。100万円台(先頭が1)から200万円台(先頭が2)になるには、貯金を2倍の200万円まで増やす必要があります。ところが、900万円台(先頭が9)から1000万円台(先頭が1)になるのは、900万から1000万へ、約1割増えるだけです。

つまり、先頭が「1」の区間(100万〜200万)は幅が広く、そこに長く留まるのに対し、先頭が「9」の区間(900万〜1000万)は幅が狭く、あっという間に通り過ぎてしまうのです。数字が倍々に成長していくような世界では、小さい先頭桁の区間ほど、そこに滞在する時間が長くなる。だから、ある瞬間に数字を観察すると、先頭が1である確率が最も高くなるわけです。

この背後には対数(ログ)という数学があります。ベンフォードの法則は、正確には先頭桁の確率が対数で決まることを示しています。難しく感じるかもしれませんが、要点は「割合で成長する世界では、小さい数字のほうが幅広い区間を占める」という一点だけ。この直感さえつかめれば、なぜ1が多いのかは腑に落ちるはずです。多くの自然現象や経済活動が「一定の割合で増えたり減ったりする」性質を持つため、この法則が広く成り立つのです。

不正会計を見破る「数字の指紋」

ベンフォードの法則が有名になった最大の理由は、不正を見破る道具として実際に役立つからです。これは、この法則の最も実用的で、そして少しスリリングな一面です。

原理はこうです。正直に記録された本物の会計データは、先頭桁がベンフォードの法則に従って分布します。ところが、人間が数字をでっち上げると、この自然な分布から外れるのです。人が架空の金額を作るとき、無意識に各桁を均等に使おうとしたり、5や6など中途半端な数字を多く使ったりしてしまいます。「1が3割」という自然な偏りを、人工的に再現するのは意外と難しいのです。

そこで、企業の会計データや税務申告の数字を集めて先頭桁の分布を調べ、ベンフォードの法則から大きく外れていれば「数字が操作された疑いがある」と判断できます。実際に、会計監査や税務調査、不正会計の摘発で、この手法が使われています。さらに、選挙の得票数や、経済統計の水増しの検証にも応用され、データが自然に生まれたものか、人の手で作られたものかを見分ける「数字の指紋」のような役割を果たしています。純粋な数学の規則性が、不正を暴く探偵の道具になる。この意外な実用性こそ、ベンフォードの法則が愛される理由だと思います。

どんな数字にも当てはまるわけではない

ここで、この法則を正しく理解するために、当てはまらないケースもきちんと押さえておきましょう。ベンフォードの法則は万能ではありません。

この法則がよく当てはまるのは、数字が幅広い範囲にばらけている、自然に生まれたデータです。数十から数百万まで、いろいろな桁の数字が混ざっているようなデータ、たとえば人口、金額、面積、物理データなどです。

一方で、次のようなデータには当てはまりません。まず、範囲が狭く、決まった桁に集中しているデータです。たとえば成人の身長は、多くが150〜190センチの範囲に収まるので、先頭桁は1に偏りますが、これはベンフォードの法則とは別の偏り方です。次に、人が意図的に割り当てた番号です。電話番号、社員番号、郵便番号などは、自然に生まれた数字ではなく、決まったルールで振られたものなので、この法則には従いません。「割合で成長する」性質を持たないデータでは、法則は成り立たないのです。

この「当てはまる条件」を理解しておくことは、法則を実務で使うときにとても重要です。何でもかんでもベンフォードの法則で不正判定しようとすると、もともと法則が当てはまらないデータを「不正だ」と誤判定してしまいます。あらゆる経験則と同じで、「どこで成り立ち、どこで成り立たないのか」を知って初めて、道具として正しく使える。これは、当サイトのハインリッヒの法則で「数字を鵜呑みにしない」と述べたことにも通じる、大切な姿勢です。

ベンフォードの法則をめぐる疑問

誰が発見したのですか?

名前はフランク・ベンフォードという物理学者に由来しますが、彼が最初の発見者ではありません。実は、その半世紀以上前の1881年に、天文学者サイモン・ニューカムが同じ現象に気づいていました。彼は、対数表(計算に使う数値の本)の最初のほうのページ(1で始まる数字の部分)ほど、手垢で汚れて傷んでいることに目を留めたのです。人々が1で始まる数字を調べる回数が多い、という観察から法則にたどり着きました。その後1938年に、ベンフォードが多くの実データで裏づけて広めたため、彼の名が付きました。最初の発見者ではない人の名が付くのは、科学の世界ではよくあることで、これ自体が一つの興味深い逸話です。

日常生活で、自分で確かめることはできますか?

簡単にできます。手近な数字を集めて、先頭の桁を数えてみてください。おすすめは、新聞や雑誌に載っている数字(人口、金額、面積など)、家計簿の金額、あるいはニュースに出てくる統計データです。ある程度の数(数十個以上)を集めて先頭桁を数えると、1で始まる数字が、9で始まる数字よりずっと多いことに気づくはずです。特に、桁がバラバラに散らばっているデータほど、きれいに法則が現れます。数字の世界に隠れた不思議な規則を、自分の手で発見できる。これは、数学の面白さを手軽に体験できる、とても良い遊びだと思います。

なぜ不正をする人は、この法則を再現できないのですか?

人間の直感が、自然な数字の分布とずれているからです。私たちは「でたらめな数字」を作るとき、無意識に各桁を均等に使おうとする癖があります。ランダムに見せようとすると、かえって不自然に均等になってしまうのです。当サイトで解説したギャンブラーの誤謬で、人が作る「ランダムな列」が本物のランダムより行儀良く並んでしまうのと、同じ心理です。「1を3割も使う」という本物の偏りを、意図的に再現するのは非常に難しい。だからこそ、ベンフォードの法則は不正の検出に有効なのです。人間は、自分が思うほど上手に「自然」を偽造できない。この事実が、数字の指紋を成立させています。

関連する法則・バイアス

人が作るランダムの不自然さを扱う「ギャンブラーの誤謬」、直感が数字に裏切られる「誕生日のパラドックス」、そして数字の規則性を追う未解決問題「リーマン予想」の記事です。

まとめ

本記事は「ベンフォードの法則」について解説しました。如何だったでしょうか。

世の中の数字は、先頭が「1」で始まるものが約30%と最も多く、数字が大きくなるほど先頭に来にくくなる。この直感に反する偏りは、「割合で成長する世界では、小さい数字ほど幅広い区間を占める」という、対数の性質から生まれていました。そして純粋な数学の規則性が、会計不正や選挙不正を暴く「数字の指紋」として実際に役立っているのが、この法則の痛快なところです。

ただし、どんな数字にも当てはまるわけではありません。法則が成り立つ条件を知って初めて、正しく使えるのは、あらゆる経験則に共通する鉄則です。次に新聞やニュースで数字の一覧を見かけたら、先頭の桁を数えてみてください。1が思いのほか多いという発見は、見慣れた数字の世界が、実は不思議な秩序に支配されていることを、実感させてくれるはずです。

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それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。

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