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【神話・宗教の原典解説】キリスト教の原典④:旧約聖書の預言書17巻を1巻ずつ解説

【神話・宗教の原典解説】キリスト教の原典④:旧約聖書の預言書17巻を1巻ずつ解説

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。本記事は、世界の神話・宗教の「原典」を解説するシリーズの一篇で、キリスト教の聖書を扱う全8記事のうちの第4弾です。

前回(記事③)は、人間の内面を見つめる「詩歌・知恵文学」を解説しました。本記事では、旧約聖書を締めくくる最後の区分「預言書」17巻を解説していきます。神に背いた民への警告と、来るべき救い主(メシア)の約束――旧約聖書から新約聖書への橋となる、重要な領域です。

詩歌・知恵文学の解説はこちらの記事を参照してください。

【神話・宗教の原典解説】キリスト教の原典③:旧約聖書の詩歌・知恵文学5巻を1巻ずつ解説senkohome.com/myths-religions-origins-christianity-ot2/

本記事で解説する範囲

まず、聖書66巻の全体の中で、本記事がどの部分を扱うのかを確認しておきましょう。

聖書66巻の全体構成(本記事の範囲) 旧約聖書(39巻)— イエス誕生以前 新約聖書(27巻) 律法 5巻(記事①) 歴史書 12巻(記事②) 詩歌・知恵 5巻(記事③) 預言書 17巻(記事④) 福音書 4巻 歴史 1巻 書簡 21巻 預言 1巻 ↑ 本記事の範囲

それでは、預言書の世界へ入っていきましょう。

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預言書(17巻)とは

旧約聖書の最後を飾る17巻が「預言書」です。

ここで言う「預言者」とは、単なる未来予知者ではなく、神の言葉を預かって民に語り伝える者のことです。彼らの主な役割は、神に背いた民に対して「悔い改めよ」と警告し、来るべき裁きと、その先にある救い(メシアの到来)を告げることでした。

預言書は「大預言書(5巻)」「小預言書(12巻)」に分かれますが、この「大」「小」は重要度ではなく、単に分量(書の長さ)の違いです。

また、預言者が活動した時代は、イスラエルの歴史(前回解説)と密接に関わっています。大きく「滅亡前」「捕囚中」「帰還後」の3つに分けると整理しやすくなります。

預言者が活動した時代 滅亡前(警告) 罪を責め、悔い改めを迫る イザヤ・エレミヤ ホセア・アモス・ミカ ヨエル・オバデヤ・ヨナ ナホム・ハバクク・ゼファニヤ 捕囚中(慰め) 異国の地で希望を語る エゼキエル ダニエル (哀歌=滅亡を悼む詩) 帰還後(再建) 神殿と信仰の再建を促す ハガイ ゼカリヤ マラキ ※ 大預言書(太字)と小預言書を、活動時期で大きく3つに分けた整理

大預言書(5巻)

まずは分量の多い5巻、大預言書から見ていきます。

巻名章数中心的な内容
第23巻イザヤ書66章裁きの警告と、救い主(メシア)の預言
第24巻エレミヤ書52章エルサレム滅亡の警告と「新しい契約」
第25巻哀歌5章エルサレム陥落を悼む哀悼の詩
第26巻エゼキエル書48章捕囚の地での幻と、回復の約束
第27巻ダニエル書12章信仰を貫く物語と、終末の幻

第23巻 イザヤ書

南ユダ王国で活動した預言者イザヤの書で、全66章は前半(1〜39章)の「裁きの警告」と、後半(40〜66章)の「慰めと回復の約束」という大きな2部構成になっています。

冒頭近くの6章には、有名な「イザヤの召命」の幻があります。イザヤは、セラフィム(天使)が「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の主」と讃える神殿の幻を見て、自らの汚れを恐れますが、燃える炭で唇を清められ、「わたしがここにおります。わたしを遣わしてください」と預言者の使命を受けます。

イザヤ書は「救い主(メシア)」の預言が特に豊富なことでも知られます。「おとめがみごもって男の子を産み、その名をインマヌエル(神は我々と共におられる)と呼ぶ」という預言(7章)、そして「ひとりのみどりごが生まれた。その名は『驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君』」(9章)という平和の王の到来が語られます。さらに11章では、狼と小羊が共に宿るような、争いのない世界の到来が預言されます。

後半(40章以降)は、「慰めよ、わたしの民を慰めよ」という言葉で始まり、バビロン捕囚に苦しむ民へ、解放と回復の希望が告げられます。

中でも最も有名なのが53章の「苦難の僕(しもべ)」です。「彼は軽蔑され、見捨てられ…わたしたちの病を負い、わたしたちの痛みを担った…屠り場に引かれる小羊のように口を開かなかった…彼の受けた打ち傷によって、わたしたちはいやされた」と、自ら人々の罪を背負い、身代わりに苦しみを受ける救い主の姿が克明に描かれます。キリスト教ではこれを、後のイエス・キリストの十字架を約700年前に預言したものと理解しています。

第24巻 エレミヤ書

エルサレムが滅亡する直前に活動した預言者エレミヤの書です。彼は民に悔い改めを訴え続けましたが聞き入れられず、祖国の滅亡を嘆いたことから「涙の預言者」と呼ばれます。

この書で最も重要なのが「新しい契約」の預言です。神が「わたしは律法を人々の心に記す」と語る場面は、後の「新約(新しい契約)」という言葉そのものの由来となりました。

第25巻 哀歌

バビロニアによって陥落・破壊されたエルサレムを悼む、5つの哀悼の詩からなる短い巻です。荒廃した都を擬人化して嘆く深い悲しみが綴られますが、その中にも「主の憐れみは尽きることがない」という希望の言葉が織り込まれています。

第26巻 エゼキエル書

バビロン捕囚の地で活動した、祭司でもある預言者エゼキエルの書です。幻(ヴィジョン)の描写が多く、象徴的な行動で預言を示すのが特徴です。

冒頭では、4つの顔と車輪を持つ生き物に囲まれた「神の戦車」の壮大な幻とともに、エゼキエルが召命を受けます。このとき彼は、神の言葉が記された「巻物」を食べるよう命じられ、それは「蜜のように甘かった」とされます。神の言葉を取り込み、民への「見張り役」となることの象徴です。

最も有名なのが「枯れた骨の谷」の幻です。谷一面に散らばった無数の枯れ骨に向かって、エゼキエルが神の言葉を語ると、骨が音を立てて集まり、筋肉と皮膚がつき、息が吹き込まれて、生きた大軍となって立ち上がりました。これは、滅んで望みを失ったイスラエルが、再び国として生き返る(回復する)ことの象徴とされています。

巻の最後では、細部まで寸法が示された壮大な「新しい神殿」の幻が語られ、その都の名は「主はそこにおられる」と告げられて締めくくられます。

第27巻 ダニエル書

バビロン捕囚の中でも信仰を貫いた青年ダニエルの物語(前半)と、終末に関する幻(後半)の2部からなります。

前半 ― 信仰を貫く物語

捕囚としてバビロンの王宮に仕えることになったダニエルと3人の仲間は、まず異教の王の豪華な食事を拒み、野菜と水だけで過ごしますが、かえって誰よりも健康になりました。神への忠実さを示す逸話です。

続いて、有名な物語が並びます。

  • 夢の巨大な像:ネブカドネツァル王が見た「金の頭・銀の胸・青銅の腹・鉄の足」を持つ像の夢を、ダニエルが解き明かす。これは次々と交代する4つの帝国を表し、最後に人の手によらない一つの石が像を砕く=神の国がすべてに取って代わることを示す
  • 燃える炉の3人:王の金の像を拝むことを拒んだ3人の若者が、7倍に熱した炉に投げ込まれる。しかし炉の中に「神の使いと思われる第4の人影」が現れ、3人は髪一本焦げずに助かる
  • 壁に書かれた文字:次の王ベルシャツァルの宴の最中、突然現れた手が壁に「メネ・メネ・テケル・ウファルシン」と書く。ダニエルはこれを「王の治世は終わった」と読み解き、その夜バビロンは滅びる
  • ライオンの穴:王への祈りを禁じる法令にもかかわらず、神に祈り続けたダニエルが獅子の穴に投げ込まれる。しかし天使が獅子の口を閉ざし、ダニエルは無傷で救い出される

後半 ― 終末の幻

後半では、ダニエルが見た幻が語られます。海から現れる4頭の獣(諸帝国の象徴)の興亡や、終わりの日に「人の子のような者が天の雲に乗って来て、永遠の支配権を受ける」という幻が示されます。

この「人の子」という表現は、後にイエスが自らを指して用い、また終末を描く新約の「黙示録」にも受け継がれました。こうしてダニエル書は、後の「黙示文学」の先駆けとなったのです。

小預言書(12巻)

続いて、分量は少ないものの重要なメッセージを持つ12巻、小預言書です。それぞれの内容を以下にまとめます。

巻名内容
第28巻ホセア書不貞の妻を赦し続ける預言者の姿で、背く民を愛し続ける神を描く
第29巻ヨエル書いなごの大群を裁きの予兆とし、悔い改めと「主の日」を預言する
第30巻アモス書貧者を虐げる社会的不正を厳しく糾弾し、公正を求める
第31巻オバデヤ書全1章の最短書。イスラエルを裏切った隣国エドムへの裁きを宣告
第32巻ヨナ書神から逃げた預言者が大魚に呑まれ、敵国ニネベで悔い改めを説く
第33巻ミカ書不正を糾弾しつつ、救い主がベツレヘムから生まれると預言する
第34巻ナホム書アッシリアの都ニネベの滅亡を預言する
第35巻ハバクク書「なぜ悪が栄えるのか」と問い、「義人は信仰によって生きる」と答える
第36巻ゼファニヤ書来るべき「主の日」の裁きと、その後の救いを預言する
第37巻ハガイ書帰還後、中断していた神殿再建を再開するよう民を励ます
第38巻ゼカリヤ書神殿再建を励ましつつ、ろばに乗る王などメシアの幻を語る
第39巻マラキ書旧約最後の書。形骸化した礼拝を戒め、来るべき使者を予告する

分量こそ少ないものの、それぞれが独自の重要なメッセージを持っています。12巻を1巻ずつ詳しく見ていきましょう。

第28巻 ホセア書 北イスラエル王国の末期に活動した預言者ホセアの書です。神はホセアに、夫を裏切って他の男のもとへ走る女ゴメルを妻とし、何度裏切られても赦して連れ戻すよう命じます。これは、他の神々(偶像)に走り続けるイスラエルを、それでも見捨てずに愛し続ける神の姿そのものを、預言者の人生を通して示したものです。裁きの警告の中にも「わたしはあなたを見捨てることができない」という、神の切ない愛が貫かれています。

第29巻 ヨエル書 国中を覆い尽くす「いなごの大群」による農作物の壊滅を、来るべき神の裁きの日「主の日」の前触れとして描きます。ヨエルは民に断食と悔い改めを呼びかけます。後半では、悔い改めた民への祝福として神が「わたしはすべての人に、わたしの霊を注ぐ」と約束する場面があり、これは後に新約聖書の聖霊降臨(ペンテコステ)の出来事で引用される、重要な預言となりました。

第30巻 アモス書 南ユダ出身の牧者アモスが、繁栄を謳歌する北イスラエルで活動した書です。彼は、経済的な豊かさの陰で富める者が貧しい者を踏みつけ、賄賂や不正な裁きがはびこる社会を痛烈に批判します。そして、心の伴わない形だけの祭儀を神は喜ばないとし、「公正を水のように、正義を絶えず流れる川のように流れさせよ」と訴えました。社会正義を説いた預言者として知られています。

第31巻 オバデヤ書 わずか1章21節からなる、旧約聖書で最も短い巻です。エルサレムがバビロニアに攻められた際、同胞でありながら略奪に加担した隣国「エドム」(イスラエルの祖ヤコブの兄エサウの子孫)に対する、神の裁きを宣告しています。

第32巻 ヨナ書 他の預言書が「預言の言葉」を集めたものであるのに対し、この巻は一編の「物語」として書かれているのが特徴です。神は預言者ヨナに、敵国アッシリアの都ニネベへ行って悔い改めを説けと命じますが、ヨナは正反対の方向へ船で逃亡します。しかし嵐に遭って海に投げ込まれ、「大きな魚」に呑み込まれて、3日後に吐き出されます。しぶしぶニネベで説教すると、町中が悔い改めて滅亡を免れました。敵が救われたことに腹を立てるヨナに対し、神は「お前はこの大いなる町を惜しまないのか」と問いかけ、「神の憐れみは、敵である異邦人にも及ぶ」ことを示します。

第33巻 ミカ書 アモスと同じ頃に活動し、支配者や裕福な者による社会的不正を厳しく糾弾しました。一方で、有名な救いの預言も含まれています。「ベツレヘムよ、お前から、イスラエルを治める者が出る」という一節は、後のイエス・キリストの誕生地を予告した預言とされています。また「主が求めておられるのは、正義を行い、慈しみを愛し、へりくだって神とともに歩むことだ」という、信仰の核心を突いた言葉でも知られます。

第34巻 ナホム書 アッシリア帝国の首都「ニネベ」の滅亡を預言した書です。かつてヨナの説教で悔い改めたニネベが、再び傲慢と暴虐に満ちたため、その都に下される神の裁きを告げています。

第35巻 ハバクク書 預言者が神に率直な疑問をぶつける、対話形式の珍しい巻です。ハバククは「なぜ悪がはびこり、正しい者が苦しんでいるのに、あなたは黙っておられるのか」と問います。神は「悪しき大国バビロニアもいずれ必ず裁かれる」と答え、「義人はその信仰(真実)によって生きる」という言葉を与えます。この一句は、後に使徒パウロが「信仰によって救われる」という教えの根拠として引用する、極めて重要な言葉となりました。

第36巻 ゼファニヤ書 全地に下される「主の日」の厳しい裁きを告げる一方で、悔い改めて神に身を寄せる「残りの者」には救いと喜びが訪れる、と預言します。裁きと救いの両面を描く点に特徴があります。

第37巻 ハガイ書 バビロン捕囚からの帰還後を舞台とします。人々が自分の家を整えることに夢中で、肝心の神殿の再建を放置していたことを叱責し、「主の神殿を建てよ」と励まします。このハガイの呼びかけによって、中断していた第二神殿の再建工事が再開されました。

第38巻 ゼカリヤ書 ハガイと同時代に神殿再建を励ました預言者の書ですが、内容は8つの幻をはじめとする象徴的・幻想的な描写に富んでいます。特に救い主(メシア)に関する預言が多く、「見よ、お前の王が来る。柔和な者で、ろばに乗って」という預言は、後にイエスがろばに乗ってエルサレムへ入城した出来事で実現したとされています。

第39巻 マラキ書 旧約聖書を締めくくる最後の巻です。帰還後、再び形だけになった礼拝(傷のある動物のいけにえや、献げ物の出し惜しみ)や、横行する離婚を戒めます。そして神は「見よ、わたしは使者を遣わす。主の大いなる日が来る前に、預言者エリヤを送る」と予告して、書を閉じます。この「来るべき使者」こそ、後の新約聖書に登場する洗礼者ヨハネを指すとされ、ここで旧約聖書と新約聖書が橋渡しされる形になっているのです。

預言書に散りばめられた「メシア預言」

詩歌と預言書を貫いて流れる、もう一つの大きな主題があります。それが「メシア(救い主)の到来」を告げる預言です。キリスト教は、これらの預言がすべてイエス・キリストにおいて実現したと読み、旧約と新約を一つに結びつけてきました。代表的なものを挙げてみましょう。

預言内容キリスト教の理解
イザヤ書7章「おとめがみごもって男の子を産む」処女マリアからのイエス誕生
ミカ書5章救い主はベツレヘムから出るイエスのベツレヘム降誕
イザヤ書53章「苦難の僕」=民の罪を背負って苦しみ殺される者イエスの十字架の死
ゼカリヤ書9章王はろばに乗って来るイエスのエルサレム入城
詩編22編「わたしの神よ、なぜわたしをお見捨てになるのか」イエスが十字架上で叫んだ言葉

中でも、イザヤ書53章の「苦難の僕(しもべ)」――自らは罪なきまま、人々の咎(とが)を背負って屠られ、その傷によって人々が癒やされる、という預言は、キリスト教においてイエスの十字架の死を数百年も前に言い当てたものとして、最も重んじられてきました。旧約聖書の側から見れば未来への約束であり、新約聖書の側から見ればその成就である――この「約束と成就」の関係こそ、キリスト教が旧約と新約を不可分の一冊として読む、根本の理由なのです。

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まとめ

本記事では、旧約聖書の「預言書」17巻を、大預言書5巻・小預言書12巻に分けて解説しました。如何だったでしょうか。

イザヤ書の「苦難の僕」、エレミヤ書の「新しい契約」、エゼキエル書の「枯れた骨の谷」、ダニエル書の「ライオンの穴」、そしてヨナ書の「大きな魚」――。預言者たちが語った警告と希望の言葉が、来るべき救い主(メシア)への待望へと収れんしていく流れを、感じていただけたかと思います。

これで旧約聖書39巻すべての解説が終わりました。次回の記事⑤からは、いよいよ新約聖書の世界へ入ります。まずは、救い主イエス・キリストの生涯を描く「福音書」です。

【神話・宗教の原典解説】キリスト教の原典⑤:福音書 ― イエス・キリストの生涯と教えを解説senkohome.com/myths-religions-origins-christianity-nt/

それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。