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【エジプト神話の原典②】オシリス神話 ― 死と再生、ホルスとセトの戦いを詳しく解説

【エジプト神話の原典②】オシリス神話 ― 死と再生、ホルスとセトの戦いを詳しく解説

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。本記事は、エジプト神話の原典を解説するシリーズの第2弾です。

今回は、エジプト神話で最も重要で人気のある物語「オシリス神話」を詳しく見ていきます。「死と再生」「善と悪の戦い」を描いた、エジプト神話の核心とも言える物語です。

エジプト神話の原典全体の見取り図については、以下のまとめ記事を参照してください。

【神話・宗教の原典解説】エジプト神話の原典まとめ ― ピラミッド・テキストと全記事の一覧senkohome.com/myths-religions-origins-egyptian/

なお、この物語は断片的にしか原典に残っておらず、最もまとまった形で伝えているのは、後世のギリシアの著述家「プルタルコス」の『イシスとオシリスについて』です。ここではその伝承に沿って解説します。

物語の大きな流れは、以下のようになります。

オシリス神話の流れ オシリスの治世 善き王が文明を教える セトの裏切り オシリス殺害 イシスの探索 遺体を集め復活させる ホルスの誕生 復讐者が育つ 王権の継承 ホルス勝利 ※ オシリスは「死と再生」、ホルスは「正統な王権」を象徴する

オシリスの善き治世

物語の主役は、大地の神ゲブと天空の女神ヌトの子である4柱の神です。長男「オシリス」、その妹であり妻の「イシス」、弟「セト」、そしてセトの妻となる妹「ネフティス」です。

オシリスは、最初にエジプトを治めた善き王でした。それまで野蛮な暮らしをしていた人々に、農耕や法律、神々を敬う方法を教え、エジプトを豊かな文明国へと導きます。妻イシスもまた知恵と魔法で王を支え、人々から深く慕われました。

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セトの裏切りとオシリスの死

ところが、兄オシリスの繁栄と人望を、弟「セト」は激しく妬みます。混沌と暴力を司るセトは、王位を奪うために恐ろしい計略をめぐらせました。

セトは盛大な宴を開き、ひそかにオシリスの体にぴったり合う「美しい箱(棺)」を用意します。そして「この箱にぴったり収まった者に、これを贈ろう」と座興を持ちかけました。

招かれた者が次々と試した後、オシリスが箱に横たわった瞬間、セトと仲間たちは一斉に蓋を閉じて釘を打ち、溶かした鉛で密閉して、箱をナイル川に流してしまいます。こうしてオシリスは殺され、セトがエジプトの王位を奪い取りました。

イシスの探索と、遺体の切断

夫の死を嘆いた妻「イシス」は、髪を切り喪服をまとって、流された棺を探す長い旅に出ます。

棺はナイルを下って海へ出て、はるか異国「ビブロス」(現在のレバノン)の岸辺に流れ着いていました。そこで一本の木が棺を包み込んで大きく生長し、見事なその木は切り倒されて、王の宮殿の大広間の柱になっていたのです。イシスはビブロスにたどり着くと、素性を隠して王妃に仕え、王子の乳母となります。やがて正体を明かしたイシスは、棺を収めたその柱を譲り受け、ようやく夫の遺体をエジプトへ持ち帰りました。

しかし、それを知ったセトは激怒します。セトはオシリスの遺体を奪い返すと、体を14の断片に切り刻み、エジプト全土にばらまいてしまいました。二度と復活できないようにするためです。

それでもイシスは諦めませんでした。妹ネフティスの助けも借りて、パピルスの小舟で湿地を巡り、エジプト中にばらまかれた夫の体の断片を一つひとつ根気強く集めていきます。ただし、男根(陰茎)だけは、ナイルの魚に食べられて見つかりませんでした。そこでイシスは、その部分を魔法で形づくって補ったと伝えられます。各地でオシリスの体の一部が見つかったとされる場所には、後にオシリスを祀る聖地が築かれました。

オシリスの復活と、ホルスの誕生

集めた遺体を、イシスは包帯で巻いて元の姿に戻しました。これが「ミイラ」の起源とされ、ミイラ作りを司る神アヌビスが手伝ったと伝えられます。

そしてイシスは、強力な魔法を使ってオシリスを一時的によみがえらせます。この間にイシスはオシリスとの子を身ごもりました。しかしオシリスは、もはや生者の世界には留まれません。彼は「冥界(死者の国)の王」となり、死者を裁き、再生をつかさどる存在となったのです。

これがエジプト人の死生観の根幹となりました。「オシリスのように、人は死んでも復活し、永遠の命を得られる」という信仰が、後の死者の書(記事③)へとつながっていきます。

幼子ホルスと、イシスの魔法

イシスは、セトの目を逃れてナイル・デルタの湿地(ケミス)に身を隠し、息子「ホルス」をひそかに産み育てます。父の仇を討ち、奪われた王位を取り戻させるために。

この「危険な荒野で、たった一人で幼子を守り育てる母イシス」の姿は、エジプトの人々の心を強くとらえ、数多くの護符や魔除けの呪文の題材になりました。とりわけ有名なのが、幼いホルスがサソリに刺されて瀕死に陥る物語です。嘆くイシスの願いを聞き、太陽神ラーが天空の運行を止め、知恵の神トトを遣わして解毒の呪文を授け、ホルスは救われます。この説話を刻んだ石碑「メテルニッヒ碑文」をはじめとする「ホルス石碑(キッピ)」は、その水を飲めば毒や病から守られると信じられました。神話が、人々の日々の祈り(医療呪術)に直接結びついていたことを示す、貴重な原典です。

ホルスとセトの戦い、そして王権の継承

やがて成長したホルスは、叔父セトに王権をかけた戦いを挑みます。この後半部分については、プルタルコスとは別に、エジプト本国の原典が残っています。新王国時代(前12世紀頃)の『チェスター・ビーティ・パピルス』に記された「ホルスとセトの争い」です。これは神々の裁判と対決を、ときに滑稽さも交えて描いた物語で、以下はこの原典に拠っています。争いは力比べだけでなく、神々の法廷での裁判も含む、80年にも及ぶ長いものだったと伝えられます。

神々の法廷では、なかなか決着がつきませんでした。多くの神はホルスを正統な後継者として支持しましたが、太陽神ラーは「ホルスはまだ若すぎる」とセト寄りの態度を見せ、議論は長引きます。しびれを切らした両者は、いくつもの直接対決を繰り広げました。

  • カバに変身しての潜水勝負:2神はカバに姿を変え、水中で長く潜る勝負をします。母イシスがセトを銛で突こうとして誤って息子ホルスを傷つけ、慌てて銛を引き抜く一幕も
  • 目をえぐられるホルス:争いの中でセトはホルスの両目をえぐり取って埋めてしまいます。しかし女神ハトホルがガゼルの乳でホルスの目を癒やしました
  • レタスの計略:セトはホルスを辱めて王の資格がないと示そうとしますが、イシスの知恵によって、逆にセトの側が辱めを受ける結果となり、計略は失敗します
  • 石の船の競争:セトは本物の石で船を造って沈み、ホルスは木の船を石に見せかけて勝利します

両者は何度も激しく争い、このとき傷ついて後に癒やされたホルスの目は「ウジャトの目(ホルスの目)」と呼ばれ、回復・守護・完全さの象徴として、エジプトで広く護符に用いられました。

最終的に、決着をつけたのは冥界の王となったオシリス自身でした。オシリスが法廷へ「正義が行われなければ、死者を司る私が報いを下す」と書き送ったことで、神々はついにホルスの王権を認めたのです。

最終的に、神々の法廷は正統な後継者であるホルスに王権を認め、混沌のセトを退けます。こうしてホルスがエジプトの正しい王となりました。

この結末から、エジプトでは「生きているファラオはホルスの化身であり、死んだファラオはオシリスとなる」と考えられるようになりました。オシリス神話は、単なる物語ではなく、ファラオの王権の正統性そのものを支える、極めて重要な神話だったのです。

登場キャラクターの強さは? ― 最強ランキング

本記事に登場した神々・英雄は、「神話・宗教・伝説 最強ランキング」でも強さ順に紹介しています。原典での活躍と、その「強さ」をあわせてお楽しみください。

セト(44位)ホルス(60位)

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まとめ

本記事では、エジプト神話の核心である「オシリス神話」を詳しく解説しました。如何だったでしょうか。

善き王オシリスがセトに殺され、イシスの愛と魔法によって復活して冥界の王となり、息子ホルスが父の仇を討って王権を継ぐ——この物語には、「死と再生」「善と悪(秩序と混沌)の戦い」「正統な王権」という、エジプト人の価値観が凝縮されています。

次回の記事③では、オシリスが王となった冥界で、死者がどのように裁かれるのかを描いた「死者の書」と死後の世界を解説していきます。

【神話・宗教の原典解説】エジプト神話の原典まとめ ― ピラミッド・テキストと全記事の一覧senkohome.com/myths-religions-origins-egyptian/

それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。