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【世界のパラドックス】ヒルベルトの無限ホテル ─ 満室なのに新しい客を泊められる?

【世界のパラドックス】ヒルベルトの無限ホテル ─ 満室なのに新しい客を泊められる?

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。 本記事は「ヒルベルトの無限ホテル」のパラドックスについて解説します。

想像してみてください。部屋が無限にあるホテルがあり、しかも全ての部屋が埋まっている。普通に考えれば「満室」なのだから新しいお客さんは泊まれませんが、ちょっとした工夫で何人でも泊められてしまうということです。

図解

無限ホテルの設定

ドイツの数学者ダフィット・ヒルベルトが1920年代に考案したこの思考実験は、こういう設定です。

部屋番号が1、2、3、4…と無限に続くホテルがあります。各部屋に一人ずつ客が泊まっており、全室満室です。

そこに新しい客が1人やって来ます。フロントで「すみません、空室はありますか?」と尋ねます。

通常のホテルなら「申し訳ございません、満室です」で終わりですが、無限ホテルの支配人は違います。

新しい客を1人泊める方法

支配人は全ての宿泊客に館内放送をします。

「お客様にお願いがあります。現在お泊まりの部屋番号に1を足した番号の部屋に移動してください」

すると、1号室の客は2号室に、2号室の客は3号室に、3号室の客は4号室に…と全員が一つ隣の部屋に移ります。部屋は無限にあるので、「最後の部屋がない」ため、全員が問題なく移動できます。

その結果、1号室が空きます。新しい客はここに入れます。

満室だったのに、全員移動しただけで空室ができてしまった。有限のホテルでは絶対にできないことが、無限のホテルでは可能になります。

無限人の客を泊める方法

次はもっと凄い話です。無限人の新しい客が一度にやって来たらどうなるでしょうか。

支配人は今度は別の放送をします。

「お客様にお願いがあります。現在の部屋番号を2倍にした番号の部屋に移動してください」

1号室の客は2号室に、2号室の客は4号室に、3号室の客は6号室に、4号室の客は8号室に…と移動します。

すると、元の宿泊客は全員が偶数番号の部屋に入ります。奇数番号の部屋(1、3、5、7…)が全て空きます。奇数は無限にありますから、無限人の新しい客を全員泊めることができます。

満室のホテルに無限人を追加で泊められる。無限の持つ恐ろしいほどの柔軟性なのだと思います。

泊められない客も存在する

では、無限ホテルにはどんな数の客でも泊められるのでしょうか。実はそうではありません。

カンターの対角線論法によると、「実数の数」「自然数の数」よりも真に大きいことが証明されています。

もし「実数と同じ数」の客がやって来たら、無限ホテルの部屋は自然数で番号付けされているため、全員を泊めることは不可能です。

結局のところ、「無限」にもレベルがあり、無限ホテルが対応できる無限と対応できない無限があります。ここに無限の奥深さがあります。

【世界のパラドックス】カンターの対角線論法 ─ 無限にも「大きさ」の違いがある?senkohome.com/paradox-cantor-diagonal/

無限が直感に反する理由

ヒルベルトの無限ホテルが私たちの直感に反するのは、私たちが「満室=これ以上入れない」という有限の世界の常識を持っているからです。

有限の集合では、部分は必ず全体より小さくなります。10個の部屋があるホテルから5部屋を取り出せば、残りは5部屋です。

しかし、無限の集合では部分が全体と同じ大きさになりえます。偶数全体の数は自然数全体の数と同じです。これが有限の世界の常識と決定的に異なるポイントであり、無限ホテルのパラドックスの根幹です。

無限に対する足し算と掛け算

ホテルの操作を、無限どうしの計算として整理しておきます。

可算無限の演算表

自然数と同じ個数だけあるものを可算無限と呼びます。この大きさは、足しても掛けても変わりません。

操作ホテルでの対応結果
無限 + 1満室に1人追加無限のまま
無限 + 有限満室に100人追加無限のまま
無限 + 無限満室に無限の団体1組無限のまま
無限 × 無限無限台のバスが無限人ずつ乗せて到着無限のまま
無限 の 2乗部屋番号を2つの数の組で管理無限のまま

何を足しても掛けても大きさが変わらないという性質が、無限の扱いにくさの正体です。

有限の世界では、100室のホテルに101人は泊まれません。無限では泊まれてしまう。この違いが、有限の常識をそのまま持ち込めない理由になっています。

泊められない客の正体

一方で、どうやっても泊められない団体も存在します。記事の前半で触れた、部屋番号を無限桁の数字で指定してくる客たちです。

この団体の人数は、実数の個数と同じ大きさになります。可算無限より真に大きい無限で、非可算無限と呼ばれます。

可算無限:自然数、整数、有理数。番号を振って数え上げられる ・非可算無限:実数、0と1のあいだの数、直線上の点。番号を振り切れない

ヒルベルトのホテルが泊められるのは可算無限までです。無限にも越えられない壁があることを、部屋が足りるか足りないかという形で見せてくれるのだと思います。

なお、0と1のあいだの実数だけでも、自然数全体より多く存在していて、長さ1の線分に含まれる点の方が数直線上の整数全部より多い。これも無限の大きさが個数の直感と合わないことを示す例になっています。

ヒルベルトがこの話を持ち出した理由

このホテルを考案したのは、20世紀前半を代表する数学者ダフィット・ヒルベルトです。1924年の講義で紹介したとされ、その後ジョージ・ガモフの啓蒙書『1、2、3……無限大』などを通じて広く知られるようになりました。

彼の狙いは、聴衆を驚かせることではありませんでした。当時の数学界では、カントールが持ち込んだ無限集合の理論に対して強い反発が残っていました。

批判の中心にいたのが、ヒルベルトの師にあたる世代のレオポルト・クロネッカーです。彼は「実際に構成できないものを数学の対象にしてはならない」という立場から、無限集合を扱う議論そのものを認めませんでした。

ヒルベルトはこれに真っ向から反対します。彼が残した「カントールが我々のために作ってくれた楽園から、誰も我々を追い出すことはできない」という言葉は、この対立を象徴するものとして知られています。

ホテルの話は、その楽園がどういう場所なのかを一般の人に見せるための装置でした。無限は奇妙だが、規則に従って一貫して扱える。奇妙さを隠すのではなく、正面から見せたうえで筋が通っていることを示す構成になっているのだと思います。

無限を扱う技術としての価値

この考え方は、抽象的な遊びにとどまりません。

数え上げの技法:整数や有理数に番号を振る手続きは、暗号や符号の設計で実際に使われる ・再帰の設計:無限に続く構造を有限の規則で記述する発想は、プログラムの再帰と同じ形をしている ・極限の扱い:無限個の項を持つ級数や積分は、可算無限の操作として整理される ・計算可能性:プログラムは可算無限個しかないが、関数は非可算無限個ある。だから計算できない関数が必ず存在する

最後の項目は特に効いています。プログラムの個数と、解きたい問題の個数が違う大きさの無限だから、解けない問題が残るという議論です。

ホテルの部屋が足りるか足りないかという素朴な話が、そのまま計算の限界を示す論拠になっている。無限の大小を区別することに、実用的な意味があったことになります。

数学的無限の関連パラドックス

ヒルベルトの無限ホテルと同じく無限集合の直感に反する性質を扱う関連パラドックスです。

まとめ

本記事は「ヒルベルトの無限ホテル」について解説しました。如何だったでしょうか。

満室なのに何人でも泊められるという結論は衝撃的ですが、これは「無限」という概念が私たちの日常的な直感とは根本的に異なるルールで動いていることを教えてくれます。無限の世界には、有限の常識は通用しないのだと思います。

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それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。

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