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【道教の原典④】教団道教と道蔵 ― 張道陵・三清・全真教を詳しく解説

【道教の原典④】教団道教と道蔵 ― 張道陵・三清・全真教を詳しく解説

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。本記事は、道教の原典を解説するシリーズの第4弾(最終回)です。

これまで、老子・荘子の哲学(記事①②)と神仙思想(記事③)を見てきました。最終回となる今回は、それらが組織化された宗教「教団道教」へと姿を変え、独自の神々や、膨大な経典集「道蔵」を生み出していった姿を解説します。

道教の原典全体の見取り図については、以下のまとめ記事を参照してください。

【神話・宗教の原典解説】道教の原典まとめ ― 老荘思想と道蔵の全記事一覧senkohome.com/myths-religions-origins-taoism/

哲学から宗教へ ― 教団道教の誕生

これまで見てきた老子・荘子の思想(道家)は、あくまで哲学でした。しかし後漢の時代(2世紀頃)になると、これに神仙信仰・民間信仰・呪術などが結びつき、信者を組織した本格的な宗教教団が誕生します。これが「教団道教」の始まりです。

その先駆けとなったのが、ほぼ同時期に現れた2つの教団でした。

教団道教の起こり(後漢・2世紀) 五斗米道(天師道) 張道陵が創始。入信に米五斗 病を治し、罪を懺悔させる → 後の「正一教」へ 太平道 張角が創始。急速に拡大し 「黄巾の乱」を起こす 三国志の時代の幕開けに

張道陵と五斗米道(天師道)

教団道教の祖とされるのが「張道陵(ちょうどうりょう)」です。2世紀、彼は老子(太上老君)から啓示を受けたと称して教団を開きました。

入信する際に米を五斗(と)納めさせたことから「五斗米道(ごとべいどう)」と呼ばれます。この教団は、病を治すことを重視し、信者に自らの罪を反省・告白させて治療を行いました。張道陵は「天師(てんし)」と尊称され、その教団は「天師道」として、後の道教教団の中心的な源流となります。

太平道と黄巾の乱

ほぼ同じ頃、「張角(ちょうかく)」が起こしたのが「太平道」です。やはり病を治す呪術で爆発的に信者を増やし、やがて腐敗した後漢王朝への大反乱「黄巾の乱」を起こしました。信者が黄色い頭巾を目印にしたことからこう呼ばれます。この乱は『三国志』の物語の幕開けとしても有名で、宗教教団が歴史を大きく動かした例として知られています。

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道教の神々 ― 三清と玉皇大帝

教団道教は、独自の神々の体系(パンテオン)を築き上げました。その頂点に立つのが、3柱の最高神「三清(さんせい)」です。

三清位置づけ
元始天尊(げんしてんそん)宇宙の始まりを司る、最高位の神
霊宝天尊(れいほうてんそん)教えと経典を司る神
道徳天尊(どうとくてんそん)老子を神格化した神(太上老君)

注目すべきは、3番目の「道徳天尊」です。これは哲学者だった老子が、神そのものへと祀り上げられた姿で、「太上老君(たいじょうろうくん)」とも呼ばれます。哲学の祖が、いつしか最高神の一柱になった――ここに、道家(哲学)と道教(宗教)が一つに結びついた様子がよく表れています。

三清の下には、天界の政治を司る「玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)」がいます。これは天帝として民間で絶大な人気を持ち、人間社会さながらの天上の役所組織を統べる存在とされました。さらに、土地の神(土地公)、かまどの神(竈神)、城隍神など、生活に密着した無数の神々が信仰され、道教は中国の民間信仰と深く結びついていきました。

道蔵(どうぞう)― 道教経典の一大集成

仏教に「大蔵経」があるように、道教にも膨大な経典の集成があります。それが「道蔵(どうぞう)」です。

道蔵は、『道徳経』『荘子』といった古典から、神々への経典、神仙術・錬丹術の指南書、護符(お札)の作り方、儀式の作法、医薬・養生の知識まで、道教に関わるあらゆる文献を集めた、巨大な叢書です。長い歴史の中で何度も編纂され、現存する明代の『正統道蔵』は、実に1500種近くの文献を収めています。哲学・宗教・科学・呪術が渾然一体となったその内容は、中国文化の百科全書ともいえる貴重な原典群です。

道教の儀式と教派

教団道教は、独特の宗教実践を発展させました。代表的なのが「符籙(ふろく)」「斎醮(さいしょう)」です。

  • 符籙:神の力を込めた護符(お札)。災いを払い、病を治し、鬼神を退けるために用いられる。道士が独特の文字を書く
  • 斎醮:神々を招いて行う、大規模な祭儀。災厄を除き、死者を救い、国家の安寧を祈る

そして、宋・金の時代以降、道教は大きく2つの教派にまとまっていきます。

教派特徴
全真教(ぜんしんきょう)12世紀に王重陽が創始。出家して戒律を守り、内丹(瞑想)を重んじる。儒・仏・道の融合も説く
正一教(せいいつきょう)張道陵の天師道の流れをくむ。出家せず、符籙や祭儀(呪術的な実践)を中心とする

出家して心身を練る全真教と、在家で呪術・儀式を行う正一教。この2つが、現代まで続く道教の二大潮流となっています。

道教の一切経『道蔵』

道教は、長い歴史の中で膨大な経典を生み出しました。それらを集大成したのが『道蔵(どうぞう)』です。仏教の「大蔵経」にあたる、道教の一切経(経典の全集)で、現存する明代の『正統道蔵』は5000巻を超える大叢書です。

その分類法も独特で、内容を「三洞(さんどう)」「四輔(しほ)」という枠組みに整理しています。『道徳経』『荘子』はもちろん、『周易参同契』『抱朴子』といった錬丹の書、儀式の次第、符籙(お札)、神々の伝記、医薬や養生の知識まで、道教にまつわるありとあらゆる知識が、この中に収められています。道教が単一の聖典を持つ宗教ではなく、哲学・宗教・呪術・医学・科学を丸ごと抱え込んだ巨大な体系であることが、この『道蔵』の厚みからもよくわかります。

なお、その神々の頂点に立つのが、宇宙の根源「道」を神格化した三柱の最高神「三清(さんせい)」――元始天尊・霊宝天尊・道徳天尊(=神格化された老子)です。その下に天界を統べる玉皇大帝が置かれ、八仙や関帝・媽祖といった親しみやすい神々まで、壮大な神々の位階が広がっています。

道教の歴史 ― 国家と道教

教団道教は、長い歴史の中で、たびたび国家や政治と深く関わってきました。

後漢末の混乱期、五斗米道は教祖の孫「張魯(ちょうろ)」のもとで、漢中(現在の陝西省南部)に道教による一種の宗教共同体(政教一致の地方政権)を築き、約30年にわたって独立を保ちました。罪人に道を補修させて罰に代える、旅人に無料で食を施す宿を置くなど、独特の統治を行ったと伝えられます。

道教が絶頂を迎えたのが唐の時代です。唐の皇室の姓は「李」であり、老子(本名・李耳)と同じ姓であったことから、唐の皇帝は老子を自らの祖先として祀り、道教を厚く保護しました。老子に「太上玄元皇帝」の称号が贈られ、科挙に道教の経典が課されたこともありました。続く宋の時代にも道教は栄え、皇帝みずから道君を称する者も現れます。一方、北方では金・元の時代に全真教が勢力を広げ、その指導者がモンゴルの皇帝チンギス・ハンに招かれた逸話も残っています。このように道教は、中国の歴代王朝と分かちがたく結びついて展開してきたのです。

道教が暮らしに残したもの

道教は、教団や経典という枠を超えて、中国の人々の暮らしそのものに深く溶け込みました。私たちが「中国らしい」と感じる文化の多くは、実は道教に源流があります。

  • 占い・暦:陰陽五行、風水、干支、八卦などの思想は、道教と結びついて発展した
  • 民間の神々:商売繁盛の「関帝(かんてい)」(『三国志』の関羽が神格化された神)、航海と漁の女神「媽祖(まそ)」などは、今も篤く信仰される
  • 年中行事:祖先や亡者を供養する「中元節」(お盆の起源の一つ)など、季節の行事に道教の影響が色濃い
  • 健康法:気功・太極拳・漢方・養生といった、心身を整える文化も、道教の内丹・神仙術と地続きである

このように道教は、中国の人々の「現世での幸福(不老長寿・無病息災・商売繁盛)」への願いを、まるごと引き受けてきた宗教だといえます。来世の救いよりも、今この世をいかに健やかに豊かに生きるか――その現世的なまなざしこそ、儒教・仏教と並ぶ道教の大きな個性です。

登場キャラクターの強さは? ― 最強ランキング

本記事に登場した神々・英雄は、「神話・宗教・伝説 最強ランキング」でも強さ順に紹介しています。原典での活躍と、その「強さ」をあわせてお楽しみください。

元始天尊(7位)太上老君(12位)玉皇大帝(56位)

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まとめ

本記事では、教団道教と経典集「道蔵」を詳しく解説しました。如何だったでしょうか。

老子・荘子の哲学は、神仙信仰や民間信仰と結びついて組織化された宗教「教団道教」となり、張道陵の天師道に始まり、三清・玉皇大帝という神々、膨大な「道蔵」、そして全真教・正一教へと発展しました。哲学者・老子が最高神「太上老君」として祀られている点に、道教という宗教のユニークさが凝縮されています。

これで、道教の原典シリーズ全5記事が完結しました。老子・荘子の深遠な哲学から、不老不死の神仙、そして教団道教まで、中国独自の豊かな世界を味わっていただけたなら幸いです。

道教以外にも、仏教・キリスト教やインド・ギリシアなどの神話の原典を解説しています。全体の一覧は世界の神話・宗教の原典まとめからどうぞ。

【神話・宗教の原典解説】世界の神話・宗教の原典まとめ ― 各神話の解説一覧senkohome.com/myths-religions-origins/

それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。