ゲーム制作

【要約】桜井政博のゲーム作るには「企画コンセプト」|桜井作品12本の企画の核を網羅

【要約】桜井政博のゲーム作るには「企画コンセプト」|桜井作品12本の企画の核を網羅

『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの生みの親・桜井政博さんは、YouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」でゲーム開発のノウハウを数多く公開しています。この記事は、そのチャンネルの内容をテーマごとに要約・再構成したものです。

ただし、要約はあくまで入り口にすぎません。桜井さんご本人の言葉・実例・テンポ、そして映像そのものからしか得られないものが本当に多いので、記事を読んで終わりにせず、ぜひ各テーマに埋め込んだ元動画もあわせてご覧いただくことを強くおすすめします。

桜井さん自身がディレクターを務めた作品の企画コンセプトを、制作順に語るカテゴリです。ここでは「企画コンセプト」カテゴリの全3本(個別動画12テーマ)の要点を、元動画3本に沿った3部構成でまとめていきます。各部の冒頭に解説動画を置いているので、あわせてどうぞ。

「企画コンセプト」総まとめ・3部構成 1 初代カービィ・夢の泉・スーパーデラックス・初代スマブラ・DX #01〜#05 2 カービィのエアライド・メテオス・ムシキング・スマブラX #06〜#09 3 新・光神話パルテナの鏡・スマブラ for 3DS/Wii U・スマブラSP #10〜#12

第1部 初代カービィ・夢の泉・スーパーデラックス・初代スマブラ・DX(#01〜#05)

このカテゴリは、桜井さん自身がディレクターを務めたゲームのコンセプトを制作順に語るもの。今回はデビュー作から、スマブラDXまでの5作です。

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1. 星のカービィ

桜井さんがディレクターをした初めてのソフト、デビュー作。最初の企画を書いたのは19歳の時でした。当時はリスクとリターンを明確に意識していたわけではないものの、「敵を利用するのは楽しい」となんとなく思っていたそう。リスクとリターンが表裏一体になっているからです。

その場にいる敵をより簡単に利用できないかと考え、最初は舌で絡め取る仕様を検討、最終的に吸い込み・吐き出しに仕立てました。もう1つの特徴飛行は、体力制で落下が即ワンミスなのは重いと考えたから。敵に触れるのと崖から落ちるので、そんなに悪いことをしていないのに即死は重い——ワンミスはそのままに、飛行でパスできるようにしました。

あえて「簡単に」した初心者向け設計 吸い込み・飛行でリスクを減らす ゲーム初心者をゲームの世界へ導く 「子供向け」とは言っていない 手触りと音楽にこだわる 簡単でも何度も遊んでもらえる 最初からサウンドテストを搭載

吸い込みも飛行もゲームを簡単に、リスクを減らす方向。面白くなくなる可能性もありますが、初代カービィはゲーム初心者に向けた調整を貫きました。当時のファミコンは容量の小ささから難度を上げる作品が多く、理不尽な難しさでは初心者が入ってこられない。カービィの役割は、ゲーム初心者をゲームの世界に導くこと。簡単でも手触りが良く、何度も遊んでもらえました。ステージ開始がイントロにぴったり合う、クリアダンスなど音楽へのこだわりも当時から。結果、初代はカービィシリーズでトップの売上。初心者用という位置付けで作ったのは非常に良かった、と振り返ります。

2. 星のカービィ 夢の泉の物語

シリーズ2作目にして、コピー能力がついた初めてのカービィ。初代完成の頃、会社が和議申請(倒産寸前)を出し、PCに差し押さえの札が貼られる体験もしたそう。会社からの指示は「ファミコンで星のカービィを作ること」。スーパーファミコンが出て時間が経っていたのに、すぐ作ってすぐ売りたいからファミコンだったのでしょう。

しかし桜井さんは、初心者向けというコンセプトは市場が熟し切ったファミコンでは通用しないと考えました。そこで立てた課題が「初心者と上級者を同時に満足させるには」。答えがコピー能力です。

コピー能力=初心者と上級者の住み分け 初心者 吸い込み・吐き出しだけで 最低限クリアできる 上級者 マニアックなコピー能力を使いこなし より幅広い遊びができる

不慣れな人は吸い込み・吐き出しだけで最低限クリアでき、慣れた人はコピー能力を使いこなしてより幅広く遊べる住み分けです。そしてコピー能力はカービィのキャラクター性を爆発的に高め、新しい敵と会うのも楽しみに(敵に個別の意味を持たせられるのが大きい)。画面が広くなり飛行が強くなる問題は、大きめのインフォボードや中ボスのスクロールロック、飛行速度を遅くすることで調整。ワンボタンのサブゲーム3つも初心者へのサービスでした。カービィにコピー能力がついたことは、後の人気に絶大な貢献。ファミコンのソフトを作れたのも嬉しかった、と語ります。

3. 星のカービィ スーパーデラックス

スーパーファミコンで1996年発売。大きなコンセプトは2つ、2人同時プレイオムニバスです。

2人同時プレイは、宮本さんから「カービィで2人同時プレイできへん?」と言われたのがきっかけ。マリオは速度的に難しいが、カービィなら遅いのでなんとかなるのでは、と。しかしカービィにはもうコピー能力があり、そのスピードは侮れません。そこで考えたのがヘルパーシステム=主役と脇役を分ける方式。

ヘルパーシステムとオムニバス 主役と脇役を分ける カメラは主役を追う 敵がプレイヤーキャラに=個性増 オムニバス構成 短く決着するシナリオの集合 長大化に飽きず遊べる

カメラは主役を追い続け、脇役はカメラ外に出てもスペースジャンプで戻る。敵キャラクターそのものがプレイヤーキャラになることで、楽しさも個性も増しました。ここでコピー防止の概念も誕生(後にスマブラ制作で甚大な苦労を生むことに)。コピー能力に入力で多彩な技が加わり、雑魚にも耐久力の概念が入りました。

もう1つのオムニバスは、コルクボードに貼られた複数シナリオを選ぶ構成。決着までが長いゲームは厳しいと考え、短く決着する異なる遊びを集めることで、ボリュームが高くても飽きずに遊べるようにしました。CG背景は相性が悪くうまくいかなかった反省もありつつ、2人プレイ・オムニバス・コピー能力で決定版のような作りに。桜井さんが直接ディレクションした横画面カービィは、初代・夢の泉・本作だけだそうです。

4. 大乱闘スマッシュブラザーズ

スーパーデラックス後、1996年からNINTENDO64の時代へ。桜井さんは1人で3DCGを勉強し、64ソフトとして2つの企画を立てます。1つが4人対戦型バトルロイヤル格闘=スマブラの原型、もう1つがラジコンロボットアドベンチャー。プロトタイプ(企画・モデル・モーションは桜井さん、プログラムは岩田さん)の通称「格闘ゲーム竜王」は、必殺技やアイテムこそないものの、ルールはまんまスマブラでした。

「格闘ゲームへのアンチ」から生まれた発想 コンボは駆け引きではない やられているだけの時間が増える コマンド入力が複雑すぎる 直感的に遊べない 蓄積ダメージシステム 毎回違うリアクション・場外で負け 方向+ボタンで直感操作 弾き入力(スマッシュ)も誕生

スマブラは格闘ゲームのアンチとよく言われますが、格闘ゲームを否定しているわけではありません。ただコンボは駆け引きではない(やられているだけの時間が増える)と考え、毎回リアクションが異なり、場外に飛び出したら負けという蓄積ダメージシステムを生みました。複雑化したコマンド入力に対し、方向+ボタンで直感的に操作できることを目指し、弾き入力(スマッシュ)も誕生。任天堂キャラが出るのは企画書になく、後から交渉したそう。知らない主人公がいきなり大勢並ぶ難しさに客観的に取り組み、人気キャラを借りることに。発売前は「キャラが殴り合うなんて」と拒否反応もありましたが、発売後に評判を呼びじわじわ広がりました。声優起用も初で、カービィの公式声もここで決定。好きなところだけ好きなように遊ぶ方針は、初代である程度確立できたといいます。

5. 大乱闘スマッシュブラザーズDX

桜井さんの企画はロジカル(課題→解決)が多いですが、DXのコンセプトは非常にシンプル。ズバリ「スマブラを飛躍的にパワーアップすること」です。初代と比べ、ファイター・ステージ・グラフィック・エフェクト・モーション・サウンド・ボリューム・プレー感覚・アイテム・おまけが全てパワーアップ。

64の過酷な水準から、GCで飛躍 初代(NINTENDO64) 1体300ポリゴン、対戦時200ほど サムスの足が三角になるほど DX(ゲームキューブ) 性能が大幅アップ・作りやすく 光ディスクで生音・CGムービー初

64は1ファイター300ポリゴン(対戦時200ほど)と格闘ゲームでは最低水準で、サムスの足が三角になるほど。DXはゲームキューブで性能が大幅アップし、作りやすくなりました。初の光ディスク開発でストリーミング再生(生音)が可能に。オーケストラを数曲採用し、これが10年続いたPRESS STARTや、以降の音楽家との共演につながる。CGムービーも初(正月休みを潰してプロットを書いた)。おまけのフィギュアは、採用キャラに限度がある中で任天堂の歴史を集めガイドする喜びを、と導入。多くの作品は「他にない」ということでできている必要がある——その最大の特徴を生かすべく力を入れた、と。DXはゲームキューブで1番の売上となりました。

第2部 カービィのエアライド・メテオス・ムシキング・スマブラX(#06〜#09)

今回は、フリーになる前後に手掛けた多彩な4作。レースゲーム、落ち物パズル、育成LSI、そしてスマブラXまで、企画の核が語られます。

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6. カービィのエアライド

2001年にカービィがアニメ化し、桜井さんはカービィシリーズの統括ディレクターに。アニメに合わせてゲームの製品群も必要で、正統アクションより時間がかからないと判断したのが、レースゲーム『カービィのエアライド』です。

「頂点を目指す」を「広げる」方向へ ドリフト=リスクとリターン 壁に当たるスリルと抜けた快感 ブレーキでチャージ→解放 シティトライアル 箱庭を自由に走り回る どう転ぶか分からない楽しさ

ゲーム性は、まずドリフトが楽しいと仮定。グリップ走行の方が速いはずですが、ドリフトには独特の快感(リスクとリターン)がある。ブレーキ操作と同時にチャージし、解放することでさらに楽しく。そして頂点を目指すゲームは合わないと考え、コンマ1秒を縮める方向ではなく広げる方向にデザイン。シティトライアルの箱庭を自由に走り、どう転ぶか分からないのを楽しむ——これが大きなコンセプトです。クリアチェッカー(PS3/Xboxの実績システムより前)で、なんとなく遊ぶものにも達成感を持たせました。

ところが企画がなかなか進まず、任せて1年以上経ってもワープスター1つまともに動かない状況に。桜井さんがディレクターに戻り全面作り直し、仕様を切り直して3ヶ月半で完成させました(コースや素材ができていたこと、スタッフが食いついてくれたおかげ)。製品版のマシンは個性的ですが、実は中身は単なるパラメーター違い(パラメーターは全て桜井さんが記述)。他では見られないゲーム性が満載で、今も高い人気を誇ります。エアライド完成後、桜井さんはフリーになりました。

7. メテオス

フリーになった桜井さんは、ゲーム業界にどう貢献するか考えていました。1タイトルに何年も費やすより、と監修やコンサルもしていた時期(作品名は伏せている)。そんな中、元セガの水口哲也さんから「落ち物パズルを作ってほしい」と依頼が。当時でも古いイメージはありましたが、課題として面白いと感じました。

「消す」のではなく「打ち上げる」 落ち物の原理 積むほどリスクが高まり 一気にリターンに変える メテオスの発想 揃えたブロックを推進力に 豪快に打ち上げる

桜井さんは落ち物パズルが大の苦手(ぷよぷよなど)ですが、ゲーム性が生まれる原理を知っていれば企画はできる。落ち物は積むほどリスクが高まり、一気にリターンに変えられる分かりやすいジャンル。そこで「本当にブロックを消さなければならないのか」を根底から考え、揃えたブロックを推進力にして豪快に打ち上げるという発想に至りました。バカバカしくてインパクトがあり、縦添加・空中ドッキングなどのテクニックも生まれます。

ブロックを惑星に降り注ぐメテオに見立て、押し付け合う惑星間戦争にしたのがメテオス。対象機種がニンテンドーDSになったのはたまたまですが、タッチ操作と相性が良かった。落ち物として珍しく、各惑星でブロックの形・フィールド幅・特性・音楽が全て変わる個性付けが特徴で、パズルなのにキャラ立ちがありました。完成品は熱中できるものの、処理負荷対策で想定したバランスにならず、バグも多いままのリリースに(惑星バランスは全て桜井さん設定)。その後の各種バリエーションには関わっておらず一般客同様に雑誌で知った、と残念がりつつ、落ち物の中でも一際個性を輝かせた、価値ある仕事だったと振り返ります。

8. そだてて!甲虫王者ムシキング

桜井さんの作品で最も小規模なチームで作られたのが、育成LSIゲーム『そだてて!甲虫王者ムシキング』。元になった『甲虫王者ムシキング』は2003年のカード型アーケードで、100円でカブトムシ等のカードが出て、じゃんけん(虫に強い拳が決まっている)で読み合いバトルをする、小学校低学年中心の大ヒット作でした。

育成とムシキングの組み合わせ 育成の情緒に気を使う 餌はゆっくり食む表現に 早寝早起きなど隠れ仕様も 完成後に判明した誤算 開発基盤と処理速度が違い 想定より腹減りが早い仕様に

きっかけは、セガの竹崎さん(現トムス社長)からの依頼。LSIによる育成物とムシキングを組み合わせたいというもので、育成段階で強弱が出るので対戦の破綻に注意しつつ、餌はゆっくり食む表現にするなど情緒に気を使ったそう。企画書は2005年GWに書き、直後のE3でスマブラXのオファーを受けて並行作業に。当時すでにテレワーク的(双方)な進行で、集まったのは数回。プログラムはドラクエ3・4のメインプログラマー内藤さん。完成まで携帯型で試せず、開発基盤と処理速度が違ったのか想定より腹減りが早い仕様になった誤算もありましたが、ゲーム自体は面白く、LSIゲームを作れた経験は良かったと語ります。

9. 大乱闘スマッシュブラザーズX

2005年E3でオファーを受けたスマブラX。フリーの桜井さんが受けなければ、DXの26体に手をつけずそのまま出されていたかも(岩田さん談)。制作コンセプトで特に大きいのは、オンライン対応長く遊べる1人用モードの2つです。

スマブラXの主なコンセプト オンライン対応(Wiiでは必須) 相性は良くないと考えつつ、課題だからやる 1人用モード「亜空の使者」 シナリオ・マップ・エンディングで充実 最後の切りふだ・アシストフィギュア 他社ゲスト(スネーク・ソニック)参戦 曲セレクト・スピード抑えめ Wiiのカジュアル層向けに調整

オンラインは、スマブラとの相性は決して良くない(完全同期型通信が必要で不利、近い人としか繋がりにくい)と考えつつ、「課題だからやる」。実際に動いた時は感慨深かったそう。1人用は「亜空の使者」として、ムービー・マップ・シールによるパワーアップ・エンディングで充実させ、キャラクターをしっかり立てたかった。手間は1本のゲームに準ずるほどで、ジャンプや移動のパラメーターも別設定、ファイターを増やすと倍の数を調整することに。

新要素として最後の切りふだ(固有技でキャラ性を引き立てる)、アシストフィギュア、他社ゲストのスネークとソニックが参戦(桜井さんいわく「私にとっては任天堂だって他社」)。曲セレクトで多くの曲と音楽家の共演を実現。そして、DXは操作難度が高く初心者に厳しかった反省から、Wiiのカジュアル層に向けてスピードを抑えめに。初めてテストプレイヤー(4人)を導入しました。スマブラXを作れなかったら、今に至るスマブラシリーズが終わっていた可能性もあったと語ります。

第3部 新・光神話パルテナの鏡・スマブラ for 3DS/Wii U・スマブラSP(#10〜#12)

企画コンセプトの締めくくりは、3DS以降の3作。パルテナの鏡の復活から、岩田さんに託された最後のミッション「スマブラSPECIAL」まで、集大成が語られます。

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10. 新・光神話 パルテナの鏡

スマブラX後、岩田社長から未発表段階のニンテンドー3DSについて2つのオーダーが。1つは仕様の提案、もう1つは専用ゲームの制作です。新型機の方針検討に外部の人間が関わるのは任天堂では例を見ないことでした。

カジュアル路線の「逆」を行く カジュアルは他に任せ タッチジェネレーションズ等が担う → 骨太でリッチな作品を作る TPSに新しい見せ方を 立体視を生かす(必須) 格闘→スマブラのように常識を崩す

桜井さんは、カジュアル路線は他に任せ、骨太でリッチな、ゲーマーも満足するタイトルを作るコンセプトに(逆を行く)。立体視を生かすためTPS(戦場へ赴く部分はレールシューター、到着後がTPS)を選択。すでにセオリーが固まったジャンルに、格闘に対するスマブラのように新しい見せ方を提供しようとしました。テーマにパルテナの鏡を起用したのは後から(海外で要望が多く、スマブラXでピットを強化した縁。パルテナが5分間だけ飛行できる「光の奇跡」をかけるアイデアが面白そうだったため)。

コンセプトの核は、まず時間制限のある空中戦(レールシューター)——いきなりTPSだと初心者に難しいので、深く考えず打てる遊びと、音楽展開をぴったり合わせる試み。次に地上戦(TPS)——携帯機で小さな面積を狙うのは向かないので、敵を何倍も大きく(雑魚でもピットの4倍以上)。スライドパッドの弾き入力(スマブラのノウハウ)をダッシュと緊急回避に使い、エイミングはタッチパネルをトラックボールのように操作。シナリオはほぼ全てゲーム中に展開し、原作が人を食った感じなのでコミカルに(桜井さんが全て執筆)。武器は10カテゴリーでキャラのように扱い、アップデートなしで「鉄板」が生まれなかったのは良かった、と。ARカードや合体神器ジェネシス(スマブラにも登場)も導入。開発は3DSのパフォーマンス不安定や寄せ集めチームの不一致で難航しましたが、傑作だと思っている、滑らかな大画面でやってみたいゲームだと語ります。

11. 大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS / Wii U

「赤い携帯ハードと青い据置きハード、どっちを選ぶ?」と言われた桜井さんは両方手に取りました。新パルテナで激務だった2011年のE3で、スマブラを3DSとWii Uの両方に供給することが発表されます。

2機種を「個と場」で結ぶ 3DS:フィールドスマッシュ 各自が画面を持つ=シティトライアル方式 Wii U:ワールドスマッシュ みんなで集まるパーティーゲーム キャラ作り・amiibo対応 強さの変動・必殺技カスタマイズ 3DSで60fps・オンライン更新 参戦ムービーが本格化したのもここから

携帯機初のスマブラは3DSで魅力を、Wii UはHD機でグラフィックを——ただどちらも従来の延長を逃れにくい。そこで「個(携帯で持つ)と場(据置きで集う)」を結ぶことに着目。2機種でもシステムやモーションを共有すれば2倍大変にはならない(できることは3DS性能に引っ張られる)。3DSにはフィールドスマッシュ(エアライドのシティトライアル方式を落とし込み、各自が画面を持つ特性を活用)、Wii Uにはワールドスマッシュ(パーティーゲーム)。キャラ作りで必殺技をカスタマイズでき、Miiファイターやamiibo対応(強さの変動があるからこそ実現。スマブラの立体物は画期的)も。

技術面では、3DSで4人対戦・立体視あり・秒間60フレームを保つのが本当にすごい(BNSの技術の賜物)。スマブラ初のオンラインアップデートが可能になり、DLCでファイターを供給できるように。開発内部の画期的な進歩として、ついに桜井さん以外もパラメーターを組むようになりました(以降プランナー数名で調整、テストプレイヤーも増加)。2013年のE3から参戦ムービーが本格化し、以後スマブラSPまでエンタメ性のある発表形態として親しまれます。

12. 大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL

ニンテンドースイッチでのスマブラは、スイッチ未発表の頃から依頼されていました。これが岩田さんから与えられた最後のミッション。コンセプトは明瞭、ズバリ「全員参戦」です。

「全員参戦」が実現できた理由 同じBNSで連続制作 スタッフ・環境・資産を引き継げる Wii Uからの移行が比較的楽 未参戦は意外と7体 DLCで先にリードを取っていた 「今しかない」と無理を通した

これまでのスマブラは作品ごとにチーム構成がガラリと変わり資産を運用できませんでしたが、スマブラ4とSPは同じバンダイナムコスタジオで制作。スタッフ・環境・資産を引き継げ、Wii Uからの移行が比較的楽でした。スマブラ4に出ていない過去作ファイターは意外と7体(ピチュー、スネーク、こどもリンク、アイスクライマー、ウルフ、ゼニガメ、フシギソウ)。「過去作全員参戦できる可能性があるなら今しかない」と無理を通したのです。企画書は200ページ以上(VR対応の可能性も挙げられていた)。新ファイターはアンケート(有効約180万票)も踏まえ検討。各ファイターにつき70〜100項目の調整を列挙しました。

プレイフィールはスマブラデラックスと4の間くらいのテンポ(熟練者がエキサイティングで、不慣れでもついていけるギリギリの線)。ステージは融合して100超(終点化等で300)。媒体がカード(16GB)で容量半減という危機は、音楽を謎の圧縮技術でスマブラ4時代の4割にして解決。1人用は、爆発的ボリュームの中でやれることが限られる中、スピリッツ(フィギュアの代わり。組み合わせによる擬似再現で原作を彷彿とさせる)と灯火の星を企画しました。

2018年3月に初発表、9月に全員参戦発表、12月に発売。しかし終わらず、DLC制作へ(発売前日にジョーカー参戦発表)。開発中にコロナへ突入し迅速にテレワーク化。意思疎通もテストプレイも難しくなりましたが、事前に話していた通り2021年中に全DLCを完成・お届け。ただし3年(本体開発に匹敵する期間)かかりました。スマブラの今後は桜井さんにも分かりませんが、極限まで拡大したスマブラが同じ拡大路線になることはありえない、非常に難しいところまで来ている、と。そしてSP開発後に手が空いたので企画したのが、この番組——「次のプロジェクトはこの番組」という言葉で、企画コンセプトは幕を閉じます。

まとめ

ここまで「企画コンセプト」カテゴリの全3本・12テーマを見てきました。最後に、各部(=元のまとめ動画)の要点を、個別テーマごとに振り返っておきます。

第1部 初代カービィ・夢の泉・スーパーデラックス・初代スマブラ・DX(#01〜#05)

#テーマ要点
01星のカービィ「敵を利用すると楽しい」。吸い込みと飛行で、初心者をゲームの世界に導く
02星のカービィ 夢の泉の物語コピー能力で初心者と上級者を住み分け。後の人気に絶大な貢献
03星のカービィ スーパーデラックスヘルパー(主役と脇役を分離)と、短く決着するオムニバスの決定版
04大乱闘スマッシュブラザーズコンボは駆け引きでないと考え、場外で負ける蓄積ダメージを発明
05大乱闘スマッシュブラザーズDXコンセプトは「飛躍的パワーアップ」。生音とCGムービーを初導入

第2部 カービィのエアライド・メテオス・ムシキング・スマブラX(#06〜#09)

#テーマ要点
06カービィのエアライドドリフトの快感を核に、頂点でなく「広げる」方向へ。3ヶ月半で立て直し
07メテオス落ち物を「消す」でなく「打ち上げる」に。惑星ごとに全てが変わる個性
08そだてて!甲虫王者ムシキング最小チームで育成の情緒に配慮。基盤差で腹減りが早くなる誤算も
09大乱闘スマッシュブラザーズX相性が悪くてもオンライン対応。亜空の使者でシリーズを存続させた

第3部 新・光神話パルテナの鏡・スマブラ for 3DS/Wii U・スマブラSP(#10〜#12)

#テーマ要点
10新・光神話 パルテナの鏡カジュアルの逆を行く骨太TPS。敵を4倍大きくする等、新しい見せ方
11大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS / Wii U「個と場」で2機種を結ぶ。3DSで4人60fps、他者もパラメーターを組むように
12大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL岩田さん最後のミッション「全員参戦」。音楽を4割に圧縮して実現

ボリュームはありますが、気になった部から読み返してもらえればと思います。関連するカテゴリもあわせてどうぞ。