『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの生みの親・桜井政博さんは、YouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」でゲーム開発のノウハウを数多く公開しています。この記事は、そのチャンネルの内容をテーマごとに要約・再構成したものです。
ただし、要約はあくまで入り口にすぎません。桜井さんご本人の言葉・実例・テンポ、そして映像そのものからしか得られないものが本当に多いので、記事を読んで終わりにせず、ぜひ各テーマに埋め込んだ元動画もあわせてご覧いただくことを強くおすすめします。
フレームの基礎から続編のありかたまで、ゲームを設計する実践的な考え方が語られるカテゴリです。ここでは「企画・ゲーム設計」カテゴリの全4本(個別動画30テーマ)の要点を、元動画4本に沿った4部構成でまとめていきます。各部の冒頭に解説動画を置いているので、あわせてどうぞ。
第1部 フレームの基礎と面白さの設計(#01〜#09)
このカテゴリは、ゲームのアイデアや仕組みを考えるときに必要になることをまとめたものです。フレームという基礎知識から、導入の作り方、オリジナリティの生み出し方まで、実践的な内容が並びます。
1. フレームはコマ数
ゲーム業界で言うフレームとは、たいてい「画面を書き換える回数」の単位のこと。映写機のフィルムのコマのようなものです。標準的なテレビは毎秒60枚書き換える、つまり秒間60フレーム。これがゲームの単位時間として扱われます。
距離=時間×速度。物が動くとき、時間の単位は距離の計算に大きく影響するので、このフレームの送り速度は非常に重要です。60フレームと30フレームでは、見え方や操作の滑らかさにかなりの差が出ます。ゲームはできれば60フレームで作りたいところですが、30フレームを標準にする場合もあります。
桜井さんは、ファミコン〜Nintendo 64の頃の昔話も語ります。当時のテレビ規格にはNTSC(日本・北米、毎秒約30フレーム構成で、走査線処理によりゲームは60フレームで作れる)とPAL(欧州・オーストラリア、毎秒25フレーム)がありました。当時、画面の割り込み回数をそのまま時間の単位にしていたため、PALに移植すると速度が5/6に落ちて、少しゆっくりした動きになってしまったそうです。64以降、ポリゴン処理になると「描画だけを遅くし、処理はそのまま」がしやすくなり、違和感がなくなっていきました。
2. とにかくゲームさせてみて
アーケードゲーム的な考え方ですが、ゲームはプレイした最初の3分で、その楽しさが分かるようにしなければなりません。それ以上待たせると、諦められてしまうからです。
桜井さんは、オンラインショップに並ぶトレーラーで、最初にストーリーデモが入りなかなかゲーム画面を見せてくれないものが多く、最初を飛ばす癖がついたと言います。どんなゲームなのかを知れないと用がないのです。ゲーム本編も、最初にプロローグが長々入ると損をしてしまいます。
おすすめは、とにかく最初にゲームをさせてしまう流れ。事件が起きて旅立つ話なら、時系列で後の場面を冒頭に持ってきたり、主人公より前の誰かが戦う演出にしたりして、すぐ操作に入れてしまう。映像を見せるのは他のメディアでもできるので、ゲームでのみ楽しめる部分を、まず味わわせるのが何よりです。チュートリアルも、いかにも練習ではなく本編を遊んでいるように作るのが良いですね。
3. 目の前に吊られたごほうび
ご褒美はゲームを進める動機につながりますが、ご褒美をゲーム途中で意識できるとさらに良くなります。
桜井さんが挙げるのは、1987年のPCゲーム『イース』(PCエンジン版)。メイン画面はやや小さめですが、その下に現在の経験値と、レベルアップまでの数値が見えている。敵を倒すごとに数値が増えるので、あと1つレベルが上がるまで、ついつい頑張ってしまうのです。同じく日本ファルコムの『ファザナドゥ』も、店のアイテムは少なく高めですが、わずかな小銭をためて装備を買えるとグッとパワーアップします。
現代のゲームはお金も装備も潤沢なので、この楽しさを演出するのは難しいかもしれません。だけど、目的意識を手の届く位置に置き、達成した喜びをダイレクトに伝えること。これは大きな参考になりそうだ、自分のゲームでももっと取り入れればよかった、と振り返っています。
4. ゲーム作りで食っていくには
「どうしたらゲーム業界に入れますか」という質問は、昔も今も非常に多いそうです。桜井さんが教える、ゲームの職につくための最短かつほぼ唯一の方法。それは、ズバリ、自分でゲームを作ってみることです。
今はUnity、Unreal Engine、各種プログラミング言語、スクールなど、いろんな手段があります。プランナー志望でも、プログラム的な考えは必ず必要になる。最初は何かのゲームの真似でも構いません。真似でも作れるだけ偉いのです。1つ満足いくまで作ったら、友達に遊ばせたり、フリーで配ったり、売ったりして、その反応を見て改善していく。
手応えが得られたら、ゲーム会社に応募書類と一緒に送ってみるとよい、とのことです。多少要件から外れても構わない。良いゲームを作れる人材は、メーカーも喉から手が出るほど欲しいからです。ただし、送るゲームはどこかに光るオリジナリティを加えること。メーカーに入らず、1人や少人数で制作を続ける道もあります。小規模でもいいので、自らゲームを作ることが、ゲームを食にするために不可欠なのですね。
5. 世界の窓はとっても狭い
レースゲームは実写さながらの映像を追求しますが、いくらグラフィックを突き詰めても本物の運転感覚にはなりません。理由は色々ありますが、特に大きいのはモニターが小さいことです。座って向き合う場合、視界は角度にして30°前後しかない。実際の運転の広い視野には、はるかに及びません。
だから、画面のどこをどのくらい使ってプレイしているのかを意識することが大事です。レースゲームでコクピット視点が最もリアルなはずなのに選ばれにくいのは、実際にプレイできる範囲が画面に対してぐっと減るから。VRは酔いやすく遠くがぼやけることもありますが、進行方向と目線が独立する乗り物系はVRと相性抜群なので、一度試す価値はあります。『新・光神話 パルテナの鏡』では、敵をプレイヤーの数倍の大きさにして、狭い画面を最大限に生かしました。
6. ワンボタンでできること
ワンボタンしか使わなくても、ゲームは作れます。実際、『星のカービィ 夢の泉の物語』や『スーパーデラックス』には、ワンボタンのミニゲームが実装されました。1つのボタンでできるゲームは、大きく分けて4種類です。
- 連射:ボタン連打の速さを競う。ただし個人差が大きく、疲れるので今は流行りにくい
- タイミング:所定のタイミングに合わせて押す(クレーンゲームや「メガトンパンチ」など)
- 早押し:合図と共になるべく早く押す(「早打ちカービィ」など)。純粋な反射神経の遊び
- 切り替え:押した状態と離した状態を切り替える(卵が来たら押し、爆弾が来たら離す「卵キャッチャー」など)
他の操作と組み合わせれば、できることはさらに広がります。いずれにせよ大事なのは、プレー感覚と操作感覚がマッチすること。ただ機能を盛り込めばいいわけではなく、感触をよく考えるべき。シンプルだからこそ、演出が効くのです。
7. 分解、考察、再構築
作品にオリジナリティを出したいとき、ただ面白いものを模倣するのでは及びません。桜井さんがすすめるのは、面白さの要素を分解し、独特の構成で再構築することです。
例として、レースゲームを「調の効いたもの」にする場合。まず分解し、「ドリフトが楽しい」と仮定する。次に考察。なぜドリフトは楽しいのか。そこにもリスクとリターンがあるからです(壁にぶつかってはいけない危険な状態を、制動でうまくクリアすれば有利に先へ進める)。そして再構築。ドリフト全体を速くするより、カーブをクリアした「終わり」にこそ加速させたほうが良さそう。ブレーキでチャージを開始し、ドリフトしてカーブの終わりにドッと解放して加速する——これが『カービィのエアライド』を考えたときのプロセスでした。単に思いついたのではなく、分解・考察・再構築という段階を踏んで設計されているのです。
8. 良いおつかい、悪いおつかい
ゲームの「おつかい」、つまりシナリオの都合であちこちに行かされること。同じおつかいでも、より良い見せ方があります。桜井さんは良いおつかいの条件を5つ挙げます。
特に④は、旅行を考えると分かりやすいです。旅行の帰り道は、行きに比べてあまり面白くない。楽しいところだけを楽しませればいい。⑤については、同じ距離を移動させるにも「お肉を買ってきて」では退屈ですが、「子どもの行方不明が続く中、ある少女の姿が見えない。物音のした家を見てきてほしい」とすると、同じ移動でも見せ方で印象がまるで変わります。
9. フレームを計れるようになれ
ゲームの単位であるフレーム。その時間の長さを目安で知ることができないと、何かと困ります。30フレームがどのくらいか、体感で分からないといけない。全ての動作はフレームが基準なのですから。
とはいえ、フレームで測れるストップウォッチはありません。そこで桜井さんが教えるのが、体感で測るコツです。「1、2、3」と数えるのではなく、間に1拍入れて「1と、2と、3と」と数えると、概ね30フレームになる。その半分が15フレームです。
15フレームは、スマブラで言えばスマッシュ攻撃が入力されてから攻撃が出るまで、鉄拳なら普通のキックが出るまでくらい。20フレームなら15フレーム強……といった具合に、基準点をどれだけはみ出すかで目安をつけます。ディレクターが頭の中の動きをスタッフに伝えるにも、自分である程度フレームを測れないと始まりません。コンピューターに入力したデータが間違っていることもあるので、人間による実感を鍛えておくと効果があります。
第2部 ほめてやれ・シナリオの特異性・3D酔い対策(#10〜#18)
前半の設計の基礎に続き、ここではプレイヤーの体験を気持ちよくする演出や、シナリオ・ご褒美の設計といった、より細やかな話が中心になります。
10. 自然なチュートリアル
チュートリアルとは、操作に慣れていない段階での操作ガイドのこと。今のゲームには必要不可欠で、そのノウハウもまとまってきました。いかにも練習場というステージで無機質なものと戦わせるやり方は、少数派になってきています。
導入としても、できればいきなり実践に飛び込ませ、戦わせながら学ばせるほうが良い。早くゲームをさせたいという意味でも、気持ちの盛り上がりとしてもです。たとえば『スーパードンキーコング3』の最初のステージは、背景がボタンの形のバナナで配置を示していますが、これは少し気づきにくいかもしれません。
資格的な操作ガイドを出す場合、キーコンフィグにも対応しなければならないのが結構面倒です。ボタンをアイコン化するなら全部のボタンを網羅する必要があります。最終的にゲームの操作が分かれば何でもいいのですが、どうせなら作業に感じられないよう、ゲーム内寄りに楽しく構成したいところですね。
11. ほめてやれ!
ゲームは遊びですから、プレイヤーの良い行いに対して褒めてあげることは大事です。何かが儲かる、クリアできるというのも褒める要素ですが、それだけで終わるのは物足りない。報酬は「お約束」で出しているだけで、褒めるという観点で設定されたものではないからです。
桜井さん自身のゲームにも、褒める演出が多く入っています。スマブラでは相手を大きく吹っ飛ばしたときや、崖ギリギリで捕まったときに、こっそり歓声が上がる。『カービィのエアライド』にはクリアダンスの音楽に合わせた手拍子も流れます。
『無双』シリーズでは撃破数に応じて味方武将が褒めてくれ、『リッジレーサー』ではきれいに走ろうとボコボコになろうと、とにかくボーナスがつきます。『スマブラSP』では、ミスしたときの爆発に紙吹雪を混ぜました。ミスという観点ではおかしな表現ですが、撃墜した側を華やかに褒めるエフェクトです。当たり前の出来事をそのまま表現するのではなく、プレイヤーの気持ちに沿う演出を考え、直接的にも間接的にも褒め殺してあげるとよい、とのこと。
12. ノーリアクションを排除せよ
ゲームのコントローラーには多くのボタンがあります。メニューなどのUIでは、決定キーをいくつかのボタンに割り振っておくと良い。シンプルなアクションゲームでも、どこかのボタンを重複させておくのはありです。
ゲームは、手からの情報をコンピューターに送り、その反応を目や耳で受け取る、双方向の情報交換です。操作をしても何も起きない状態を作るより、一応何かしらの反応を返したほうが良い。せっかくプレイヤーがアクションをしたのに、ゲームがノーリアクションでは寂しいですよね。
特にムービー中も、ボタンを押したらスキップなどの選択肢を出すと良い。プレイヤーはボタンを押すとき、何かを求めているはずです。押したか押していないか分からないようなリアクションも避けたい。ノーリアクションが必ずNGというわけではありませんが、ゲームはアクションに対するリアクションを返すもの、という意識を深めておきたいですね。
13. ゲームのシナリオは特異
ゲームのシナリオは、普通のメディアのシナリオ作りとは大きく異なります。逆に言えば、その違いを逆手に取れば斬新な見せ方もできます。桜井さんは、他メディアと違う4つの点を挙げます。
これらはシナリオの問題点ですが、あえてセオリーを無視して実装し、嫌な思いも含めて印象深いシナリオにする手もあります。そして桜井さんが強調するのは、最初はストーリーではなくゲームを始めること。プロローグを長々説明せず、さっとゲーム内に飛び込ませ、細かいシナリオはそれから。『新・光神話 パルテナの鏡』では、ステージを始めるとすぐ扉をくぐり、ゲームをしながらミッション説明を受けます。なお、新パルテナのシナリオは桜井さん自身が執筆したものです。
14. 応援する楽しみ
桜井さんはあまりスポーツ観戦をしないそうです。理由は明確で、どちらのチームにも肩入れしていないから。逆に言えば、観戦して楽しむには、まずどちらかに偏ることが秘訣なのです。戦ってどちらかが勝つ場合、最初から応援すべき方がはっきりしていたほうが燃えます。
スマブラには、誰かの試合のリプレイを流す観戦モードがあり、勝者だと思う人にポイントを賭けられます。知らない人同士なので予想は当たりませんし、ポイント自体に大きな意味はありません。何かに肩入れする、ささやかな動機として織り込んでいるのです。応援して楽しむ要素がある作品は、どちらかに肩入れできる環境を整えると良いですね。
ちなみに、スマブラの応援仕様は、各国のレギュレーションでギャンブル的表現に引っかからないよう、慎重な調整を重ねてやっと作られたそうです。ガチャのような仕組みも、2つか3つから選ばせたり、見た目に差をつけたりすると、単純なランダムより良い印象が得られるはずだと言います。
15. 3Dゲームで酔う場合
3Dゲームをプレイすると、激しく酔うことがあります。これは個人差が大きく、桜井さんは比較的酔わない方だそうです。ゲームの酔いは、乗り物酔いと同じ原理だけれど、逆の作用で起こります。
原理は、目からの情報と内耳からの情報の差です。乗り物酔いでは、運転者はカーブや上下動に動きを合わせられるので酔いにくく、壁やスマホを見ている同乗者が酔いやすい。一方ゲームでは、実際には加速していないので内耳からの情報はないのに、画面内では激しく慣性がついた挙動が起きる。その矛盾が人を酔わせます。
対策としては、視野を少し広げる、画面の外は固定だと意識する、酔い止めの薬を試す、長時間プレイを避けるなど。ゲームの仕様側では、演出を控えめにするのが有効です。FPSの足踏みによる縦揺れオプションを切る、乗り物のフレームを画面に固定する、画面の真ん中に固定の情報を置く、など。酔わないカメラは演出のないカメラでもあるので、酔い止め対策のオプションをいくつか持たせるのが良いですね。
16. 階層アウトラインでまとめる
Microsoft Wordにもある機能なのに、スタッフに話すと「知らなかった」と言われることも少なくない、と桜井さんが解説するのがアウトラインです。これは文章を階層化して管理できる仕組みで、桜井さんは「これがないと始まらない」というほど活用しているそうです。
要は、フォルダのような階層構造をテキストで管理できるもの。たとえばファイターの必殺技の仕様をまとめるとき、ファイターの並びの中に必殺技リストを書き、そこに仕様を書き込む。仕様を折りたためばシンプルになり、位置の入れ替えや階層の置き換えも自由です。
桜井さんが階層アウトラインを使い出したのは、Macが配備された1993年頃。いろんなものを整理し、アイデアをまとめるのに欠かせない仕組みだそうです。ただしこれは自分のアイデアをまとめるためのもので、人に見せるには清書が必要。この番組も、最初は階層アウトラインでカテゴリー分けを計画したとのこと。まずは触ってみると良いですね。
17. 見返りを想定する
ゲーム内のご褒美・報酬は不可欠ですが、あげるものがなければ何もできません。だから企画段階で、何をご褒美にできるのかをよく考えておく必要があります。最も有効なのは、プレイヤーキャラクターを純粋に強くすること。お金で装備、経験値でレベル、スキルポイントで技、素材で合成……こうした行為は、先に進みたい欲求を高めます。
ただし、それができる企画とできない企画があります。たとえばスマブラは難しい。対戦ゲームなのにゲーム進行でキャラ強化を与えると、「全キャラ育ててからやっとスタート」になりかねません。そうした制約の中で、スマブラがどんなご褒美を用意したかが紹介されます。
ファイターのアンロック、フィギュア(スマブラDX〜4)、シール(X)、スピリッツ(SP)、音楽や通貨、そして条件達成でコマが解放される「クリアゲッター」。ご褒美は、ゲームに目的を与えるという意味で、動機と報酬が表裏一体です。やりすぎると付き合えないので匙加減は難しいですが、プレイしても何の報酬も進展もないゲームは、何とも味気ないもの。初期企画・初期設計からご褒美を考えておくべきなのですね。
18. あるものでしかわからない
何か斬新なゲームが発表されると、必ず「既存作品の○○のような」という形容で語られます。人は、何かに当てはめないと認識ができないからです。見たことも聞いたこともないものを理解するのは難しい。だからこそ、まだ誰も作り始めていないゲームを企画書段階から正確に伝えることは、とても難しいのです。
ここで桜井さんが1点だけ強調するのは、企画する側が「○○のような」と言うのは、なるべく我慢してやめようということ。プレゼンを聞いた人がそう捉えるのは自由ですが、作る側が言うのは避けたい。理由は2つあります。
1つ目は、何かに類似性を持たせるくらいなら、オリジナルを遊んだほうがいいということ。他作品を売りにしていいのは続編くらいです。2つ目は、「○○のような」は世代や経験で大きく違うこと。「マリオ」と言っても、スーパーマリオを思い浮かべる人もいれば、マリオカートを、あるいはキャラクターとしてのマリオを思い浮かべる人もいる。人によって常識が違うので、自分の経験を尺度にしないほうがいい。実際には、その物差しから外れたところに正解があるのです。企画書でも完成品でも、独自性が滲むよう頑張ってみてください。
第3部 続編・スコアの見せ方・キャラ立ち・CP(#19〜#26)
続編やスコア、キャラクター、コンピューターの相手(CP)など、作品をより深く、より遊びやすくするための設計が中心になります。
19. 続編のありかた
人気が出れば続編やシリーズが出ます。しかし、ただそのまま出すと、売上は約半分になると思ったほうがいいということでした。特に変わった作風なら厳しい。
ビデオゲームに続編が多い一番の理由として桜井さんが挙げるのは、ゲームにはゲームシステムの開発が必要だからです。映像作品は1作目も2作目も内容をほぼ新規に起こしますが、ゲームは基礎システムを矛盾なく構築してから、ようやく中身を作り始められる。その仕組みには開発ツールも含まれ、肉付けに至るまで多大な労力がいります。だから続編は、すでにあるシステムを改良して肉付けに専念でき、大きくリードできるのです。
一方で、売上が下がるのはなぜか。続編の売れ行きは、前作の完成度に影響されます。前作で痛い目に遭えば、次を買う気は下がる。続編を出すときは、前作が「まだまだ遊びたい」と思われ、かつ「少なくとも前作より楽しい」とパワーアップを感じさせることが必要です。続編は制作を有利にしてくれるけれど、しっかり作らないと売れない。きちんとつぎ込むべし、ということですね。なお、スマブラはチームが毎回違うこともあり、続編でもシステムごと作り直しだったそうです(スマブラ4とSPの間だけは同じチームでした)。
20. 知っていることは話が早い
海外製のFPSなどは、操作方法が概ね一緒で、操作感までだいぶ同じです。ゲームシステムの独自性より、没入感や世界の描写、シナリオの差を重視しているのだろう、と桜井さんは見ます。
ここで強みになるのが、すでに知られていることは説明を省略できること。FPSで「R2で弾を発射、L1でグレネード」などといちいち丁寧に説明する必要はありません。何かに類似することは避けられがちですが、業界標準(デファクトスタンダード)は積極的に利用していい。それでコンピューターを相手にするプレイヤーに少しでも優しくできるなら良いのです。
そして、キーコンフィグは操作がややこしくなっても必ず入れたい。「設計者が想定した操作が推奨だからキーコンフィグは不要」という見解も昔ありましたが、プレイヤーは自由な操作で遊びたいもの。ゲームはそれになるべく応えるべきだ、とのこと。なお桜井さんは、ゲームセンターで配線を間違えられた『チェルノブ』を遊んだ思い出(前進ボタンで歩き、上で発射、横でジャンプ)を、その違和感が面白かったと振り返っています。
21. カスタマイズは想像で遊ぶ
何かをカスタマイズして遊ぶタイプのゲーム(メカものや、武器・スキル選択なども含む)。桜井さんは、そのカスタマイズの作業そのものが楽しいものでなければならないと言います。これは物を作るときにも通じ、第三者の反応を想像することが、良いものを作るのに不可欠だ、と。
カスタマイズの末にどんなメリットが得られるのか。それをはっきりさせるために、桜井さんは5つのポイントを挙げます。
特に②は、「範囲は広いが射程が短い武器」「範囲は狭いが遠くに飛ぶ武器」のように、使いこなしに意味がある個性が大事。⑤については、性能が全くなくても着せ替えだけで楽しいもので、それだけで成立するカスタマイズもあります。カスタマイズは、ゲーム性とは別の質の楽しさを生むのですね。
22. 同じような作品
何かのゲームに憧れて、それに近いゲームを作る。特にインディー界隈ではよくあることで、桜井さんはこれを良いことだと言います。何も作らないより、形にして世に出せただけで相当褒められるべきだ、とのことです。
ただし、既存作品をオマージュして制作する際に、心に置いてほしいことがあります。それは、「元となった作品を遊んでいればいいのでは」という可能性です。元のゲームが面白いからこそお手本になる。であれば、プレイヤーはオリジナルだけ遊べばいい、と普通は考えます。
だから、何かを真似て作るなら、少なくとも元の作品にはない魅力が、1つではなく、いくつも必要です。最も難しいシステムの企画・構築が省ける分、その他のことで頑張らなければならない。元を超えるかどうかではありません。魅力は方向性なので、一元的に測れるものではないのです。最初は模倣でもいい。でも最後は、そのゲームにしか味わえない何かが生まれるよう頑張ってほしい、ということでした。
23. スコアの見せかた
昔のゲームで一生懸命になれる要素は、スコアくらいのものでした。今は経験値・ゴールド・スキル・ランキングなど要素が山ほどあり、単純なスコアそのものは、一部の人を除いてこぞって高く取ろうとは思いにくい。だけど、良いスコアを得ることを、もっと喜ばしくしたい。一生懸命になるからゲームは面白いのですから。
そこで桜井さんは、スコアの見せ方を工夫した例を挙げます。
脳トレの「脳年齢」、Wii Fitの「体年齢」、ゲーム偏差値(マイティボンジャック、ソロモンの鍵)、バーンアウトの「被害総額」、スマブラの「世界戦闘力」。それぞれ何らかの尺度に当てはめて工夫しているのがポイントです。「私の世界戦闘力は何万」と言えば気分も盛り上がります。スコアの存在を当たり前だと思ってはいけません、とのこと。見せ方は、絞れるだけ絞って考えたいですね。
24. パラメーターでキャラ立ちを
ゲーム企画でキャラクターを増やすとき、それがマイキャラでも敵でも、より「ピーキー」に性能を振るのが良いとのことです。ゲームのルールには理想形となるニュートラルな性能があり、そこからどれだけ外して異なる可能性を持たせられるかがポイントです。
これはマイキャラと敵キャラで大きく異なります。たとえばカービィシリーズの「ゴルド」は、無敵で攻撃も効かず、攻撃手段もない。そのまま置くだけならつまらない敵ですが、配置で他の敵と噛み合わせることで意味を持ち、印象に残るキャラになります。キャラの特性は、一言で見出しが付けられるくらい尖らせたほうがいい。
キャラを立てるには、面倒だけど避けられない要素があります。それが特殊仕様(固有仕様)、そのキャラにしかできないことのために専用プログラムを起こす要素です。スマブラSPのDLCファイターには、反逆システム、ペルソナ、片翼システム、8方向入力コマンドなど、必ず何らかの特殊仕様があります。手間はかかるけれど、大差ないのは面白くない。数字でだってキャラは立つので、小さくまとめず、デコボコにしてから問題を補うのが良いのですね。
25. 色が薄れた世界
桜井さんが「どうしても色分けを考えなければならなかった」と振り返るゲームが『メテオス』です。そこで欠かせなかったのが、色弱の方への対応でした。色分けでゲームの仕様部分が構成されていると、それだけに頼れば色弱の方はプレイできなくなってしまいます。
対応には色弱フィルター(今はPhotoshopの標準機能)を使い、ゲーム画面を実際にどう見えるか確認します。混じって見えやすい色には、明度の差をより多く持たせる。当たり前のようでいて、ちゃんとしなければならないところです。パズルに限らず、パワーアップの区別やステージの仕掛けの見極めができないこともあり得るので、忘れていたら、色覚の多様性を踏まえた調整を考えてみてください。
もう1つ、色に関する開発ネタとして、映像をあえて白黒にして確認するテクニックも紹介されています。明暗だけが際立つことで、どこが目立っているのかがはっきり分かる。絵を左右反転してバランスを見るのに近い、転ばぬ先の杖ですね。
26. コンピュータープレイヤー
コンピューターが操作するプレイヤー、略してCP。人とコンピューターはやはり違いすぎて、人に反応できない動作をすると、すごく理不尽に感じられます。スマブラのようなものはCP制作が非常に難しく、桜井さんのプロジェクトでは人に預ける割合が高い分野だそうです。
アクションゲームのCPは、コンピューターに目があるわけではないので、情報を各種数値で与えます。相手の位置やステータス、技の攻撃範囲・移動範囲をデータ化し、射程や攻撃タイミングとして格納する。このデータを基に行動が決まります。途中でロジックを変えることもあり、体力が低くなると怒る、得意な技が設定されるなど。複雑なものほど条件が増え、判断がバッティングして動かなくなることもあります。
スマブラSPのCPは、反射神経のようなものを用意して瞬発的な反応はせず、操作の左右が逆だと軽く混乱するようにできています。方向性としては攻撃性を高める調整。強いCPと戦いたい人に対し、適切に待ったり機械反応をしたりするのは面白みに欠けるので、攻撃主体でちゃんと対応して勝てるようにしたのです。正確にジャストシールドと回避をさせ続ければ無敵のCPも作れますが、それでは面白くない。何でも、楽しませるのが目的であることは忘れてはいけませんね。
第4部 最初にクライマックス・初心者にやさしく(#27〜#30)
このカテゴリの締めくくりは、導入の作り方とプレイヤーの時間という、プレイヤーをゲームに引き込むための話が中心です。
27. ゲーム内ムービー
最近のゲーム表現はすごく、最先端の作品なら、実機で構成するムービーのほうがプリレンダーより高品質、ということもあります。そんな中、本筋と関係ないムービーがやたらと長いことについて、桜井さんは「じれることが多い」と率直に語ります。
とはいえ、ムービーの長さは一概に良いとも悪いとも言えません。掘り下げによってお話がよく分かったり、感情移入が促されたりもします。ムービー内のちょっとした仕草に意味を感じることは、ゲーム内では起こりにくい。ただ、ネットに動画が上げられる時代では、ムービーがご褒美になりにくいのも事実です。
会話シーンはセリフ単位で送れるように作られていることが多いのに、ムービーではそれができない場合がほとんど。途中まで飛ばせたり、早送りできたりするムービー表現があると、ユーザーフレンドリーかもしれません。そして、ムービーは必ずまとめてスキップできるようにすべきだ、ということでした。スタッフロールも同様で、初プレイのデータでも初めて見るとは限りません。なお、ムービー中にボタン入力が入るQTEは嫌われがちなので、やるなら慎重にとのことです。
28. 最初にクライマックスを
ゲームを作るなら、可能ならいきなりクライマックスを持ってこられるように検討するとよい、とのこと。もちろん最初にラスボスと戦わせるという意味ではありません(してもいいですが)。それくらい、ゲームの導入部はとても大事だということです。
桜井さんは、『ファイナルファンタジー7』のオープニングを例に挙げます。あれは、ラストダンジョン前としても違和感のない展開ではないか、と。時系列で普通に考えれば、主人公がなぜ組織に参加したのかを語るように作りがちですが、見どころからスタートしているのです。『新・光神話 パルテナの鏡』も、スタート1分もしないうちにラスボスのメデューサが登場します。『逆転裁判』も裁判から始まりますよね。
日常の中でゆっくり事件が起きていく構成もありですが、それならすぐにゲームへバトンタッチするのを迅速に。特にゲームは「どんなゲームか操作させてみて」という気持ちが強いので、のんびり進めている場合ではありません。プレイヤーを最初から目覚めさせるつもりで取り組む、というわけです。
29. 初心者にはやさしく、気持ちよく
桜井さんは、格闘ゲームの苦い思い出を語ります。日本のゲームセンターの対戦台は筐体が向き合っているので、対戦相手が見えません。あるとき『ザ・キング・オブ・ファイターズ95』で乱入者と戦い、必殺技3種を含む贅沢なコンボをきれいに決めた。だけど手応えがなさすぎる。対面を覗くと、ごく普通のカップルの、女性の方だったのです。
「やっちまった」と思った桜井さんは、それ以来、格闘ゲームの野良対戦をほぼやめてしまったそうです。「対戦で手を抜くのは礼儀知らず」と言う人もいるが、そんなことはない。手を抜かないのが礼儀なのは、相手がそう希望していることがはっきりしている時だけ。ゲームは楽しく遊べなければ意味がないからです。
これから始めようという人には、やさしく導入してあげなければなりません。最初に触れた時から、ゲームの世界に引き込むまでは、意識して敷居を下げるべき。ただし難しいのは、手ほどきが過ぎて、周りからワイワイ連れられるようになると、かえって冷めてしまうこと。ほどほどの自由度や、自ら入っていくという演出も欲しいところですね。
30. いただく時間を意識する
「このゲームはクリアまでに300時間遊べます」と言われたら、多分引きますよね。ゲームを買おうか吟味しているとき、いくら面白そうでも、必要以上に時間がかかりそうなら見送ることもあります。実際に面白いとしても、「その時間で何ができるのか」と考え出すと、とても怖い。
ゲームは確かに何百時間も遊ばれることがあり、スマブラもそうです。でも、ゲームに時間を費やすのは「面白かった結果」としてそうあるべきもの。プレイ前の感覚からは、プレイ時間はむしろコストとして捉えるべきなのです。
現在は、あらゆるものとの時間の奪い合いです。やれることはいつでもある中で、何を選ぶか。多くの人はSNSやネットを見て過ごしますが、それは多彩なうえに見始める障壁が少ないから。ゲームは始めるまでの障壁が比較的大きいので、それを上回る魅力がないと難しい。だからこそ、楽しいところ、もしくはそれを補強するところだけを提供したい。プレイヤーが遊んでくれる時間はコストである、と意識することが大切なのですね。
まとめ
ここまで「企画・ゲーム設計」カテゴリの全4本・30テーマを見てきました。最後に、各部(=元のまとめ動画)の要点を、個別テーマごとに振り返っておきます。
第1部 フレームの基礎と面白さの設計(#01〜#09)
| # | テーマ | 要点 |
|---|---|---|
| 01 | フレームはコマ数 | 動きは60フレーム基準(PAL移植で5/6に落ちた例も)。コマ数で考える |
| 02 | とにかくゲームさせてみて | 最初の3分で楽しさが分かるように。まずゲームを触らせる流れを作る |
| 03 | 目の前に吊られたごほうび | 経験値やレベルまでの数値を見せ、達成の喜びを即ダイレクトに伝える |
| 04 | ゲーム作りで食っていくには | まず自分で小さくても作ってみること。真似でも、作れるだけ偉い |
| 05 | 世界の窓はとっても狭い | 画面は世界の狭い窓。乗り物系はVRと好相性。画面の使い方を意識する |
| 06 | ワンボタンでできること | 1ボタンでも連射・タイミング等4種は作れる。操作とプレー感を合わせる |
| 07 | 分解、考察、再構築 | 面白さを分解・考察し再構築する。エアライドもこの手順で生まれた |
| 08 | 良いおつかい、悪いおつかい | おつかいは5条件で良くなる。同じ移動も見せ方で印象が変わる |
| 09 | フレームを計れるようになれ | 「1と2と3と」で約30フレーム。体感を鍛えると指示も調整も効く |
第2部 ほめてやれ・シナリオの特異性・3D酔い対策(#10〜#18)
| # | テーマ | 要点 |
|---|---|---|
| 10 | 自然なチュートリアル | 無機質な練習場は少数派に。実戦に放り込み、戦わせながら学ばせる |
| 11 | ほめてやれ! | 良い行いはほめる。撃墜した側を華やかに演出するなど気持ちに沿う |
| 12 | ノーリアクションを排除せよ | 操作に必ず反応を返す。決定キーを複数に割り、無反応をなくす |
| 13 | ゲームのシナリオは特異 | ゲームの物語は他メディアと違う4点。まず物語でなくゲームから始める |
| 14 | 応援する楽しみ | 観戦はどちらかに肩入れすると楽しい。賭け表現はレギュレーションに注意 |
| 15 | 3Dゲームで酔う場合 | 目と内耳の情報差で酔う。演出を控え、酔わないカメラを工夫する |
| 16 | 階層アウトラインでまとめる | 企画は折りたためる階層アウトラインで整理。人に見せるには清書を |
| 17 | 見返りを想定する | あげるもの(ご褒美)がないと動機は作れない。初期設計から想定する |
| 18 | あるものでしかわからない | 人は既知に当てはめないと認識できない。「○○のような」は世代差が大きい |
第3部 続編・スコアの見せ方・キャラ立ち・CP(#19〜#26)
| # | テーマ | 要点 |
|---|---|---|
| 19 | 続編のありかた | そのまま出すと売上は半減。守る所と変える所を見極め、確実にパワーアップ |
| 20 | 知っていることは話が早い | 業界標準(デファクト)は積極利用。既知のことは説明を省ける |
| 21 | カスタマイズは想像で遊ぶ | カスタマイズは作業自体が楽しいこと。想像で遊ぶ別質の楽しさ(5条件) |
| 22 | 同じような作品 | 元作品にない魅力が複数必要。模倣でも、最後は固有の何かを生む |
| 23 | スコアの見せかた | スコアは当たり前と思わず、何らかの尺度に当てはめ見せ方を工夫する |
| 24 | パラメーターでキャラ立ちを | 性能はピーキーに。数字でもキャラは立つ。配置で他の敵と噛み合わせ意味を持たせる |
| 25 | 色が薄れた世界 | 色弱対応を忘れずに。明度の差をより多く持たせる |
| 26 | コンピュータープレイヤー | 人に反応できないCPは理不尽。体力で怒る等で、何でも楽しませる |
第4部 最初にクライマックス・初心者にやさしく(#27〜#30)
| # | テーマ | 要点 |
|---|---|---|
| 27 | ゲーム内ムービー | 動画時代はムービーがご褒美になりにくい。必ずまとめてスキップ可に |
| 28 | 最初にクライマックスを | 出し惜しみせず最初に見どころを。すぐゲームへバトンタッチする |
| 29 | 初心者にはやさしく、気持ちよく | 最初は敷居を下げる。対戦で手を抜くのも礼儀知らずではない |
| 30 | いただく時間を意識する | プレイヤーの時間を尊重。楽しい所だけを提供し、無駄に長くしない |
ボリュームはありますが、気になった部から読み返してもらえればと思います。関連するカテゴリもあわせてどうぞ。















