ゲーム制作

【要約】桜井政博のゲーム作るには「モーション」|動きを生む原則と技術を全18テーマで網羅

【要約】桜井政博のゲーム作るには「モーション」|動きを生む原則と技術を全18テーマで網羅

『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの生みの親・桜井政博さんは、YouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」でゲーム開発のノウハウを数多く公開しています。この記事は、そのチャンネルの内容をテーマごとに要約・再構成したものです。

ただし、要約はあくまで入り口にすぎません。桜井さんご本人の言葉・実例・テンポ、そして映像そのものからしか得られないものが本当に多いので、記事を読んで終わりにせず、ぜひ各テーマに埋め込んだ元動画もあわせてご覧いただくことを強くおすすめします。

「やり過ぎてちょうど」という原則から、補間・ブレンド・回転といった技術まで語られるカテゴリです。ここでは「モーション」カテゴリの全2本(個別動画18テーマ)の要点を、元動画2本に沿った2部構成でまとめていきます。各部の冒頭に解説動画を置いているので、あわせてどうぞ。

「モーション」総まとめ・2部構成 1 やり過ぎてちょうど・攻撃の4内訳・扁平スケーリング #01〜#09 2 ダメージ表現・フリップ・モーションブレンド・2軸回転 #10〜#18

第1部 やり過ぎてちょうど・攻撃の4内訳・扁平スケーリング(#01〜#09)

モーション(キャラクターの動き)は、スマブラなどで特に大事な要素。動きの指定の仕方から、気持ちよさを生む原則まで、その制作ノウハウが語られます。

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1. モーション指定の仕方

スマブラのファイターを企画する際、桜井さんが技や動きのニュアンスをモーションデザイナーに伝える方法を解説します。まず欠かせないのがモーションリスト。全モーションをテキストで書き出し、動きのイメージや、モーションの長さ・攻撃発生までの時間も記載します。この段階で駆け引きを感じながら、それなりに適切にしておくのです。

次に、待機・移動・攻撃など肝となるポーズをフィギュアの写真で指定します。フィギュアを出し、写真を撮り、肩を抜いてコントラストを調整し、仕様書に落とし込む。これで技のイメージがはっきりします。1ファイターあたり70〜80枚前後を用意することが多いそうです。

ただし、ここまで集めても制作工程では「序の口」。人形は人形で、稼働範囲もゲームのモデルとは段違いなので、モーションデザイナーに考えてもらうことは山ほどある。何度も監修し、うまくいかなければ諦めることもありますが、キャラクターが立つように気を配って制作されます。なお、桜井さんからの指示はモーションデザイナー全員で聞いてもらい、轍を踏まないようにしているそうです。

2. やり過ぎてちょうどよい

カズヤの「螺旋幻想」の腰のねじれを見て、「これだめだ、バグだ」と騒ぐのはやめてほしい——桜井さんはそう言います。モデルのウェイトが破綻するほど極端に振られたモーションは、良いモーションなのです。これは原作でもそうだったのでOKとしていますが、本当はもっとやりすぎるべき、とも。

攻撃モーションは「やり過ぎ」でちょうど OKと思った動き たいてい「全然足りない」 さらにオーバーに 小さい画面ではこれで丁度

攻撃モーションを作る際、「やりすぎ」ということはほとんどなく、「全然足りない」ことが日常茶飯事。どうせ小さい画面の小さいことだから、ぐっとやりすぎてちょうどいいくらいに考えるべきだ、とのことです。最初の3D格闘『バーチャファイター』にも、上半身と下半身がほぼ逆向きの動きがあります。稼働範囲が理屈で正しいことが、良いことではない。なお直線的な動きでは「行き過ぎて少し戻る」のも有効で、これはファミコン時代(カービィのニードル能力)からやっているそうです。

3. 攻撃モーションの内訳

多くのゲームにある攻撃モーション。桜井さんは、これを「待機・構え・攻撃・フォロースルー」の4つに分けています。

攻撃モーションの4つの内訳 ①待機 全ての原点。ぶらさない ②構え 予備動作・ため ③攻撃 肝のポーズ。ビシッと ④フォロースルー 後すき。最後まで演出 フォロースルーには「キャンセルフレーム」を設け、待機に戻る前から操作可能に

待機は全ての原点で、ほとんどの動作がここから作られるので、ぶらさないことが必要不可欠。構えは予備動作・ため(攻撃開始のポーズ)。攻撃は肝となるポーズで、攻撃判定が出た瞬間のポーズがビシッと決まることが重要(そこがダメなら全部ダメ)。フォロースルーは後すきで、待機に戻る時間です。フォロースルーにはキャンセルフレームを設定し、待機に完全に戻る前から移動やジャンプができるようにする。スマブラDXまではこの仕組みがなく、操作が少し重たく窮屈に感じられたそうです。

4. かまえは瞬時に極端に

構えとは、ボタンを押してから実際に攻撃が出るまでのポーズ。スマブラの構えには特徴があります。まず、ボタンを押した瞬間から、かなり大きくポーズが変わること。待機からの補間を丁寧にやるとコビ感が増えますが、スマブラはレスポンス重視で、入力を受け付けたらすぐ反応を返す。オンラインやテレビの遅延は防げないからこそ、入力への即応が理想なのです。

一方で、構えがほとんどない攻撃も存在します。ゼロスーツサムスの弱攻撃は1フレームで飛び出し、『ファイナルファイト』のジャブも瞬時に連打できて気持ちいい。構えがなくてもゲームは成立する。ただし、しっかりした「ため」がないとガツンと攻撃した印象に欠けるので、ただ早くすればいいわけではありません。入力受付をしっかり伝えるという観点から、構えを検討してみるとよいですね。

5. 攻撃ポーズ

攻撃する動作が気持ちいいかどうかで、ゲームの手触りは大きく変わります。スマブラでは攻撃がヒットするとヒットストップが入り、その瞬間のポーズが一番頭に残るので、フィギュア写真でもその瞬間を形作ります。桜井さんが挙げる勘所はこちらです。

  • 全体的に大げさ気味に、遠くから見てもはっきりする動作に
  • 正中線をまたぐ攻撃にする(奥や手前にそれるとヒットしなくなる)
  • シンメトリー(左右対称)を避ける(コミカルな意図がある時だけ使う)
  • 胴体を真横にするのは避け、少しねじってメリハリを出す
  • 振り抜き剣は、可能な範囲で振り抜いたところをヒットストップできるように
  • 多少のパース(画面の左右での見え方の差)に耐えるように
  • そして何より、シルエットが綺麗に見えるようにする

スマブラは横から見たゲームなので、横から見たシルエットが重要。そこが決まることが絶対だ、ということでした。こうした感覚は、立体物をガチャガチャ動かしてみると養われる、とのことです。

6. フォロースルーで印象が決まる

フォロースルーは攻撃後の隙になる動作。「攻撃し終わった後なんて重要じゃない」と思うかもしれませんが、ここが一番目に入るところなのです。

スマブラでは攻撃レスポンスを早くするため、構えから攻撃に入るのは全体的に早い。標準的な攻撃は大体1秒未満で終わり、攻撃が発生するのは全体時間の最初の1/3〜1/4、早ければ1/5ほど。つまり残りの時間はすべてフォロースルーです。攻撃までは短く、攻撃後が長い

攻撃自体は秒という一瞬で終わるので、フォロースルーで「その前に何をしていたのか」を十分に伝えるモーションでなければなりません。ただ待機に補間して戻すのではなく、許容できるギリギリまで粘り、気持ち長めに攻撃を表現する。そして待機に戻るいくらかの間にキャンセルフレームを設定し、操作できそうに見えるポーズでは実際に操作を受け付ける。攻撃後のフォロースルーも、最後まで気を抜かずしっかり演出すべきなのですね。

7. 情報が減るからおおげさにふるまう

桜井さんが印象に残ったエピソードとして、2002年の『クロックタワー3』を挙げます。これは名映画監督・深作欣二監督の遺作。ビジュアルシーンの演技がすごく大げさで、笑ってしまうほど。それについて監督はこう語ったそうです。「キャラクターは人間が持つ様々な情報がなくなるので、その分大きく演技しなければならない」と。

初めてのゲーム制作だったはずなのに本質をついている、と桜井さんは驚いたそうです。ゲームのキャラクターは実際には存在しないものだから、大げさに振る舞ってちょうど。モーションキャプチャーで取ってきても、そのままでは使い物にならないのが普通で、かなり大きく動かしてちょうどいいくらいです。画面に対するキャラの大きさも影響し、小さく・遠くにいるだけでちんまりした動きに感じられる。アクションゲームでも、基本は大きく堂々と動かす。剣を振るアクションなら、ただ振らせるだけでは足りないのです。

8. ポージングのススメ

可動フィギュアを持って「ブーン」と遊ぶことを、日本では「ブンドド」と言うそうです。桜井さんいわく、これはモーションデザイナーには割と悪くない遊び。リアルな動きの追求には合わないかもしれませんが、ポージングが決まることはとても大事です。

日本には良いアクションフィギュアが山ほどあります。どうやったらポーズが決まるのか、良いアングルとは何か。立体物を実際に手に取ることは、いろんなことを教えてくれます。フィグマのピットを例に、桜井さんはポージングのコツを挙げます。シンメトリーを避ける、真正面を避ける、顎を引く、首をまっすぐ垂直にしない、上半身・腰・足が直列に並ばないように、肩を多少怒らせる、左右の腕は別角度から見せる、手首を軽く手前に曲げる、重心を少し崩す、足の角度を軽くハの字に……。動きのない立ち状態でさえ、いろんなことが考えられるのです。最終的には理屈ではなく「良いと思えるのは何か」。その感覚を養うには、立体物をいじる以上のものはない、とのことです。

9. 扁平スケーリング

モデルを拡大縮小することをスケーリングと言います。CGの動きは原則、スケーリング(拡大縮小)・ローテーション(回転)・トランスレーション(移動)の3要素で構成されます。移動や回転は日常的ですが、スケーリングはそうでもない。だけど軽く見てはいけない、とのこと。

扁平スケーリング(スクワッシュ&ストレッチ) 移動・回転だけ 硬く、手触りが乏しい 潰す/伸ばすを併用 縦に潰れたら横に伸びる =質量を保ち、質感が出る

弾がバウンドする動きも、移動だけよりスケーリングを併用すると、質感や手触りが全然違ってきます。これをスクワッシュ&ストレッチと呼びます。ポイントは、概ね質量を保つこと。縦に潰したら横に伸びる、という風にするとよい。カービィのしゃがみや着地はゲームボーイ時代から扁平していますが、単純に潰すと量感に欠けるので、端っこに量感を持たせるよう工夫しているそうです。マリオの拳がパンチで大きくなるのは、どちらかというと誇張表現で少し別物。味付けに困ったら、スケーリングの導入を頑張ってみてください

第2部 ダメージ表現・フリップ・モーションブレンド・2軸回転(#10〜#18)

前半が「やり過ぎてちょうど」といった動きの原則の話だったのに対し、後半は補間・ブレンド・回転といった、より技術寄りのノウハウが中心です。3DCGでキャラクターを動かす際の具体的な勘所が語られます。

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10. ダメージモーション

攻撃を受けたときのダメージモーションについて。スマブラでは、ダメージを受けた瞬間にすぐ痛そうなポーズへ置き換わることを想定しています。ダメージモーションの1フレーム目はヒットストップがかかって長く見えるので、ここを痛そうに見せることが大事。やられポーズと待機ポーズが近い作品もありますが、スマブラでは待機とは全然違う極端なポーズを取らせ、遠くから見てもダメージを受けたとはっきり分かるようにしています。

ただし、攻撃を受けた瞬間のポーズからダメージモーションへは、わずかに補間でつないでいます。どんな状況でヒットしても必ずダメージポーズになるので、相手のやられ判定が長いと、かなり遠い位置でダメージモーションを取ることになる。やられ判定を伸ばしたままヒットストップさせる手もありますが、やられた感を重視してこうしているそうです。

スマブラのダメージリアクションは上・中・下に分かれ、ヒット位置に近いところでリアクションを取ります。さらに地上では強さに小・中・大があり、上中下と合わせて9通り。吹っ飛べばさらにバリエーションが増えます。そしてスマブラはほぼ全員が体型のユニークすぎる人型でないのが悩みどころ。全員が標準的な人型ならモーションを使い回せますが、そうでないので、ファイターを1体増やすだけでも大ごとになるのです。どのダメージモーションもシルエットがしっかり見えることを重視し、体をひねって手足のシルエットが出るようにしています。

11. モーション補間のワナ

モーション制作ツールはとても便利で、いくつかのポーズ(キーフレーム)を設定すれば、あとは勝手に間を補間してくれます。めり込みなどの破綻も修正は簡単。ところが、この便利さが落とし穴になるのです。

同じ8フレームのキックでも印象が段違い ただ補間まかせ 中間が均等に詰まり 「ぬるん」と見える 構え/攻撃に時間を寄せる 割り時間はほぼ無くてよい =切れ味が出る

2Dゲームを3Dに落とし込むとき、ポーズが同じでも2Dのキビキビした印象が損なわれることがよくあります。同じ時間・同じポーズでも、中間の動きが均等に補間されると「ぬるい動き」に見えがちなのです。桜井さんは、リュウの強パンチ(アッパー)を例に挙げます。原作は3枚の絵を往復させて表現した非常によくできた動きですが、これをそのままCGに補間させるだけでは勢いが殺されてしまう。

そこでスマブラでは、構えと攻撃に時間を寄せ、決めポーズ(キーフレーム)への至り方を極端目にしました。前腕はより後ろに引き絞ってためを長く取り、振り抜きは1フレームで一気に送ってズバッと。フォロースルーは行きと同じ軌跡にせず、待機と同じポーズになるギリギリまで粘る。補間は間を埋めて補うものだが、それで印象をもっさりさせないよう注意が必要。誇張できているかは常に考えるべき、ということですね。

12. フェイシャル(表情)

フェイシャルとは表情付けのこと。キャラクターが小さくてよく見えないスマブラスペシャルでも、表情は結構真面目に作られています。リップシンクや微妙な表情変化が要らない作品なので、全体的に元気に大きく動かしたいのです。

開発ではモデルを作る前に、絵のレタッチで方針を決めます。上がってくる絵は小さな表情変化のものが多いのですが、桜井さんはそこに手を入れ、もっと大きく動かすよう指示します。ウルフのダメージ表情を例に、「顎の構造体から言ってもこれくらい強くするのが妥当」と、頑張ったと思ったところからさらに大きくするのが良いそうです。

目を見開く際は上下の白目を見せる、上下の前歯を噛み合わせない、といった引っかかりやすいポイントもありますが、これはゲームの狙いによって全く変わります。情報が減りがちなCGだからこそ、大げさにしてちょうど。リアル系とコミカル系でやることは違いますが、表情も大きく付けたいところです。ちなみにロボット系の表情や、スティーブの瞬きだけのフェイシャルも、立派なフェイシャルなのですね。

13. フリップモーション

リンク同士が向き合うと片方はお腹、片方は背中を向ける。一方マリオ同士が向き合うと、両方ともお腹を向ける——この後者がフリップモーションです。ポーズや動きを左右で鏡対称にする技術で、公式名称らしきものがなく、桜井さんの開発内でこう呼んでいるそうです。

ストリートファイターII はキャラクターがドット絵(スプライト)なので、左右反転した絵がそのまま使われます。ストリートファイターIV はポリゴンですが、IIに倣ってちゃんと左右反転している。これは結構手間がかかり、右ストレートが左ストレートになり、アイテムの持ち手を素早く入れ替える必要も出てきます。剣を持つような左右非対称のファイターには適用しにくい技術です。

なぜこうするかと言えば、もちろん見栄えが良いから。普通に作ると右の人が背中を向けてしまい、表情も見えず情報量が低い。せっかくなら正面を向いてくれた方が良いですよね。スマブラXまではフリップモーションがなく、走りなどを真横から見るしかありませんでしたが、真横は顔が見えず楽しくない。動きの半分は顔が見えなくなってしまうのです。

なお余談として、ストII の「DJ」が「MAXIMUM」と書いたパンツを履いているのは、左右反転(鏡対称)にしても大丈夫な文字の組み合わせだから。カービィの「マキシムトマト」も左右反転でピッと作れるから、Mのデザインになっているそうです。

14. モーションブレンド

モーションブレンドとは、2つ以上のモーションを組み合わせる技術です。攻撃の打ち分けの回で触れたキャンセルフレームがその例。攻撃の一定の隙から先はキャンセルフレームになっており、ここで操作すると、いきなりパキッと動作開始するのではなく、操作による動きとキャンセルフレーム以降の動きが合わさったポーズになります。

待機から歩行に入った瞬間と、攻撃から歩行に入った瞬間。歩行モーションは1つなのに、始まりのポーズが随分違って見える。これがモーションブレンドの効果です。適用度とその時間を指定できますが、中間モーションが増えるとメリハリが減り、破綻もしやすいので、あまり時間をかけず迅速に行います。シールド構えの傾きシフトも、外周を回すモーションと中央で固定するモーションの掛け合わせです。

キビキビしたスマブラでは影響度はそこまでではありませんが、モーションブレンドはむしろ3Dゲームにこそ生きるとのことです。上半身・下半身の別制御、地形に合わせた足運び、向きや傾斜の反映など、どこまでブレンドしているか分からないほど複雑になる。単に動きが生きていればよいわけでも、技術で破綻なく埋めればよいわけでもなく、終わらない研究がどこかで続いているのだろう、とのことです。

15. 指の表現

何かを手に持つとき、指の表現は引っかかりやすいポイントです。何かを握るときは手に対して垂直にグリップするのが自然ですが、前腕の動きに合わせるような時は手に対して斜めになる。指の角度を使って自然な持ち方にすることは大事です。

指は「自然さ」と「処理負荷」のトレードオフ 自然な持ち方は大事 指の角度で握りをそれらしく フィギュア的にならない でも処理負荷は重い 指は小さいわりに複雑 真っ先に省かれる運命

ただし指はその小ささに対してとても複雑で、処理負荷を考えると真っ先に削られる運命にもあります。モデルが消えるわけではなく、動いているようで固められていたり、いくつかの指パターンを当てがっていたり、ということもあるでしょう。可動できる指の多さが、そのハードの性能を物語っているように感じたこともあるそうです。

いずれにせよ、ゲームを作るなら費用対効果は常に想定されるもの。指が多くの階層構造を持ち常に計算されていたら、結構なロスになります。ハードや狙いによりますが、省くところは省き、大事なところの処理に回すことは常に考えられているのですね。

16. 攻撃判定を常に意識

スマブラは横から見たゲームなので、横から見たシルエットを重視しています。前提として、相手への攻撃判定は剣や拳の形に直接付くのではなく、より広い範囲を覆うように配置されています。スマブラは激しく素早い座標移動を行うので攻撃判定は大きめ。そうしないと攻撃が当たらず、ストレスのたまるゲームになってしまうのです。

そこでモーション制作の現場でよくあるのが、攻撃が正中線を通っておらず、ヒットしにくいという問題。もちろん直してもらいます。プランナー側で攻撃判定を配置すればヒットさせること自体はできますが、見た目と判定がさらに大きくズレてしまう。見た目と判定サイズがある程度違うのはゲームの楽しさ重視で割り切ってよいものの、モーションの位置まで異なると破綻が大きくなるのです。

さらに、攻撃判定が出る時間やクリーンヒットしそうな時のポーズも大事。この瞬間はヒットストップが入って目に残り、とどめの一撃ならビシッと画面が止まります。そこで攻撃感の薄いポーズでは良くない。剣を振り抜く時は、少し振り抜いた位置で攻撃判定を呼ぶこともあります。厳密にゲーム調整を行うのはプランナーでも、モーションは手応えに大きく影響するので、モーション側もゲーム自体を意識して取り組むべきなのですね。

17. スケルトンの限界

CGでキャラクターを動かす際は、スケルトン(骨組み)を仕込むと便利です。普通の運動物は根元が動くことで先端が動く——肩から肘、肘から手首と動いて手首の位置が決まる仕組みをFK(フォワードキネマティクス)と言います。逆に、手の位置をつまんで動かすと肩や肘の角度が決まる仕組みがIK(インバースキネマティクス)。編集が便利で地面への設置も表現しやすく、歴史の長い基本技術です。

そのスケルトンについて、桜井さんには思うところがあります。ジョイント(関節)の可動限界は当然180°ですが、「もっと反らせるようにできないか」と。まっすぐを超えてさらに曲げ、アニメーションをもっと元気にしたい。単純に逆方向へ曲げるスケルトンは普段の使いにくさを増すでしょうが、CGなればこそ理屈以上に誇張したいこともあるのです。

多関節にしたり構造体を増やせばやれることも増えますが、処理負荷もあるしトゥーンアニメ的なセンスも要るので、スマブラではそこまで仕込めていない——開発初期に提案したが実現できていない課題の1つだそうです。既存の便利なシステムは、はまると便利だが、そこからはみ出るものは作りにくく、頭の中に限界の線を引いてしまう。制作物は自由なので、様々なアイデアで限界を超えるようにしたい、と語ります。

18. 2軸で回転させる

首を横に回転させてみる。機械的に見えませんか——桜井さんはそう問いかけます。回転(ローテーション)はX軸・Y軸・Z軸で表現されますが、縦軸まわりの回転だからとY軸のみで回すのはNG。人の動きを作るときは2軸の回転を意識したい、ということでした。

同じ「首を横へ」でも、過程で性格が変わる 1軸だけで回す ドリルのよう・機械的 物足りない 2軸のねじれを足す 下を向いて回す=X+Y 傾けて回す=Z+Y

例えば首を横に向けるなら、下を向いて回す(X軸+Y軸)、あるいは横に傾けて回す(Z軸+Y軸)。手首も、単純な1軸回転だとドリルのようで物足りませんが、少し傾けてから回すだけでそれらしくなります。本来は連携する部分も動かすもので、ひねる動作では肩や鎖骨も連携し、バイクのアクセルを開けるような動作は手首の移動も併用します。

回転速度は3Dツールのファンクションカーブ任せでもそれらしく見えますが、2軸のタイミングを少しずらすともっと良くなります。回転の到達点が同じでも、その過程によって全く異なる性格を持たせられる。同じ「首を横へ」でも、下から・上から・真横からでは違って見えるのです。なお首を動かすときは目線の動きも意識すること。目線がしっかり加われば、それほど大きく向きを変えなくても成立することもあるそうです。

まとめ

ここまで「モーション」カテゴリの全2本・18テーマを見てきました。最後に、各部(=元のまとめ動画)の要点を、個別テーマごとに振り返っておきます。

第1部 やり過ぎてちょうど・攻撃の4内訳・扁平スケーリング(#01〜#09)

#テーマ要点
01モーション指定の仕方モーションリスト+フィギュア写真70〜80枚で指定。後は山ほど考えてもらう
02やり過ぎてちょうどよいウェイトが破綻するほど極端でも良いモーション。小画面ではやりすぎてちょうど
03攻撃モーションの内訳攻撃は待機・構え・攻撃・フォロースルーの4つ。攻撃の決めポーズが命
04かまえは瞬時に極端に構えは入力に即応し大きく変える。ただ早ければ良いわけではない
05攻撃ポーズ攻撃の瞬間のポーズが一番残る。正中線をまたぎ左右対称を避け、シルエット重視
06フォロースルーで印象が決まる攻撃発生は全体の1/3〜1/5、残りは後隙。後隙(フォロースルー)が一番目に入る
07情報が減るからおおげさにふるまうCGは人の情報が減るぶん大きく演技。基本は大きく堂々と動かす
08ポージングのススメ立体物(フィギュア)いじりは感覚を養う。立ち姿一つにも工夫がある
09扁平スケーリング潰し伸ばし(スクワッシュ&ストレッチ)で質感を。味付けに困ったら導入

第2部 ダメージ表現・フリップ・モーションブレンド・2軸回転(#10〜#18)

#テーマ要点
10ダメージモーションダメージは待機と全く違う極端なポーズ。シルエットをしっかり見せる
11モーション補間のワナ補間まかせは動きが「ぬるく」なる。構えと攻撃に時間を寄せ極端に
12フェイシャル(表情)表情も大げさに。情報が減るCGだからこそ大きく動かす
13フリップモーション左右反転で常に正面を見せる技術(見栄えのため)
14モーションブレンド操作と動きを合成。3Dゲームでこそ生きるが、中間が増えると破綻も
15指の表現指は自然な持ち方が大事だが複雑で重く、処理負荷で真っ先に削られる
16攻撃判定を常に意識判定は広めに配置。正中線を通さないと当たらない。攻撃感のあるポーズを
17スケルトンの限界関節の限界を超えたい。便利なシステムは頭に限界線を引かせる
182軸で回転させる1軸回転は機械的。2軸のねじれで人らしく。過程によって性格が変わる

ボリュームはありますが、気になった部から読み返してもらえればと思います。関連するカテゴリもあわせてどうぞ。