ゲーム制作

【要約】桜井政博のゲーム作るには「仕様」|手触りを生む仕様を全18テーマで網羅

【要約】桜井政博のゲーム作るには「仕様」|手触りを生む仕様を全18テーマで網羅

『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの生みの親・桜井政博さんは、YouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」でゲーム開発のノウハウを数多く公開しています。この記事は、そのチャンネルの内容をテーマごとに要約・再構成したものです。

ただし、要約はあくまで入り口にすぎません。桜井さんご本人の言葉・実例・テンポ、そして映像そのものからしか得られないものが本当に多いので、記事を読んで終わりにせず、ぜひ各テーマに埋め込んだ元動画もあわせてご覧いただくことを強くおすすめします。

ヒットストップやジャンプの仕組みなど、手触り(プレイフィール)を生む仕様が語られるカテゴリです。ここでは「仕様」カテゴリの全2本(個別動画18テーマ)の要点を、元動画2本に沿った2部構成でまとめていきます。各部の冒頭に解説動画を置いているので、あわせてどうぞ。

「仕様」総まとめ・2部構成 1 ヒットストップ・ジャンプ・手触りの設計 #01〜#08 2 ランダム性・ハンデ・平均と平凡・オンラインアップデート #09〜#18

第1部 ヒットストップ・ジャンプ・手触りの設計(#01〜#08)

このカテゴリは、ゲーム内に組み込む仕組みの考え方を扱います。企画・ゲーム設計よりもコンピューターと付き合う、手触りに近い具体的な話が中心です。

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1. 大事なところはストップ!

ヒットストップとは、相手を攻撃した瞬間、ほんの少しだけ止まる演出のこと。これがあるのとないのとでは、手応えが全然違ってきます。とても大事な仕様です。

桜井さんが「ボスストップ」と呼ぶ、ボスを倒した瞬間に止める演出は、ファミコンの『星のカービィ 夢の泉の物語』からすでに実装されています。ボスを倒した瞬間に画面をフラッシュさせつつ止める。十分な手応えを得るために、とても大事なのです。

これほど大事なのだから、ジャンルを問わずあちこちに付けていいとのことです。たとえばスクロール型のシューティングは、いつの間にかやられていて「あれ、今の当たったの?」となりがち。1986年の『ファンタジーゾーン』は、弾に当たった瞬間に一瞬画面が止まり、「しまった」という感覚が増します。実はこの止め演出、さかのぼると1980年の『ディフェンダー』にも見られるそうです。ここぞという時にしっかり止めて、やっつけた/やられた手応えを演出するとよい、ということでした。

2. 物理ボタンに重たさを感じさせる

ゲームをプレイしていて、ボタンに重みを感じることはないでしょうか。PS5のDualSenseのような物理的な反力ではなく、同じ物理ボタンなのに、画面上で動かすものによって与える印象が変わる、という話です。

ファミコンの十字ボタンによる操作は、自キャラの移動仕様によってタッチが大きく異なります。動きが遅いか速いかだけでなく、慣性の大きさ、ジャンプ仕様、フレームレートなど、いろいろなものが影響する。同じボタンなのに、これだけ印象の差が出る。これはビデオゲームの武器だと考えているそうです。

ビデオゲームは、目と耳でコンピューターからの情報を受け取り、手で情報を与えて遊ぶもの。手から得られる「触感」を慎重に見ていくと、仕様の組み方も変わってくる。スマブラでは各ファイターの移動の緩急や攻撃の予備モーションの大げささが、駆け引きだけでなく手触りの面でも検討されています。実は機種を変えるごとにアナログパッドの仕様が異なるため、いわゆる「遊び」(傾斜を認識する最低値)も毎回設定し直しているそうです。

3. ジャンプのしくみ

キャラクターがジャンプする。単純なようで、考えるべきことがたくさんあります。一般的には、空中にいる間、一定の落下加速度を与え続けます。最初に上方向の速度(仮に5)を与え、毎フレーム落下加速度(仮に1)を加えると、速度は5→4→3…と下がり、頂点で0になった後は下方向に加速して落ちていきます。

ジャンプ=上昇速度と落下加速度の設計 マリオ 上昇ゆっくり/長押しで高さ 魔界村 空中横移動できない スマブラ 直前に「ため」が入る

このジャンプ仕様は、ゲームの目的によって様々に変えるべきもの。『スーパーマリオ』は上昇がゆっくりで、ボタンを押した時間で高さを変えやすい仕様(弾を撃つ高さが大事なゲームだからかもしれません)。『魔界村』は空中横移動ができず、着地点が確定するデメリットの代わりに、ジャンプをよく考える駆け引きが生まれます。スマブラのジャンプは直前に「ため」が入り、これをなくすと上スマッシュ前にジャンプしてしまうため0にはできません。なおスマブラSPでは、最初に極端に強い上昇速度を与え、数フレームだけ落下速度も強くしてから普通に戻すという隠し味を採用。プレイヤーの反応が少し遅れても対処でき、メリハリも出る良い仕様だそうです。

4. 8つのヒットストップ仕様

攻撃がヒットした際に両者が一瞬止まるヒットストップ。明示的に入れて印象深かった例として、桜井さんは『ファイナルファイト』を挙げます。スマブラのヒットストップには、他のゲームにはない特殊仕様がいくつも仕込まれている。「企業秘密なんだけどなあ」と言いつつ、その8つが明かされます。

スマブラSPのヒットストップ 8つの工夫 ① やられ側を大きく、与えた側を小さくブレ ② やられ判定はブレない(見た目だけ) ③ 地上は横、空中は全方向に振動 ④ 振幅は徐々に収束する ⑤ 大きさを係数で制御(マルス先端) ⑥ やられポーズを約4Fで補間 ⑦ 攻撃側をごく微妙に動かす(切先) ⑧ カメラ距離で振幅が変わる 目にも止まらない積み上げが、ゲームをよりよくする 攻撃力×係数で「手応え」を演出。リュウは大きく、カズヤは原作感で制御 等

たとえば⑤は、攻撃力が高いほどヒットストップを大きくしつつ係数を掛け、マルスのスマッシュ攻撃の先端を当てると手応え抜群、付け根だと手応えがないように調整しています。⑦は特殊仕様の極めつけで、剣を持ったファイターが斬りかかると、ヒットストップ中に剣の切先が1フレームに満たない微量な速度で動いている。こうした一つひとつの積み上げが、手応えと滑らかさを両立させているのですね。

5. 注視点をくっつけない

3Dゲームのカメラには「注視点」があります。普段は見えませんが、カメラがあるゲームには常に存在します。キャラクターを中心にぐるぐる見渡せるのは、注視点がほぼキャラの位置にあるから。だけど桜井さんは、注視点をキャラクターにくっつけてはいけないと言います。

注視点を縦に追従させない くっつける どれだけ高く跳んだか分からない 縦の追従を軽減 高さが感じられる(マリオ64)

『スーパーマリオ64』では、歩いている間は画面中央でも、ジャンプすると画面中央から外れて相対位置が上に行く。これにより、どれだけ高く跳んだかが分かります。当たり前のようで当たり前ではないのです。『アーマード・コア』では上下左右の操作でACが画面中央から少し外れ、避けた弾が見えやすくなる。『カービィのエアライド』でもドリフト中にマシンが注視点から少し外れ、操作の実感を高めています。ただ追従させるのではなく、ゲームに合った演出を持たせることが大事ですね。

6. 遅さは罪

いろんなゲームに個性があり、好みは人それぞれ。だから自分が面白くなくても一概に否定はできません。ただ、ほぼ唯一これだけは誰も愛せないと思う要素がある。それは「遅いこと」です。

単純な移動速度だけでなく、何をするにも時間がかかる、何もしていない時間が長い、つまりゲームをしていない時間がどれほどあるか。やりたいことや面白いことがあるのに待たせるのは、とても悪いことだと思ったほうがいい。ローディングなど短縮できない時間もありますが、短縮できる時間は切り詰めて、より濃密な時間を提供すべきだ、とのこと。ムービーなどの「箸休め」はむしろあったほうがいいですが、無駄なブランク時間は詰めるべきだ、とのこと。桜井さんは制作時、ゲームを操作している実時間を意識し、何も楽しませていない時間を「申し訳ない」とまで思うそうです。

7. 速度の単位

速度はゲーム内の様々なものをつかさどる、とても重要な要素。速度=距離÷時間で、3つのうち2つが分かれば残り1つも分かります。

ファミコンなどスプライトベースの時代は、速度をDPF(ドット・パー・フレーム)、1フレームに何ドット進むか、で表していました。マリオの最高速度はおそらく1.x DPFくらい。ただしゲームボーイ・ファミコン・スーファミではドット数(土の広さ)が違うため、同じ設定でも違う速度になりました。3Dゲームになると、キャラやフィールドをリアル単位で定義すればkm/hのようなリアルな速度単位がそのまま使えます。『カービィのエアライド』はkm表示ですが、これはカービィを20cm程度の大きさと前提しているため、時速が低く見えても実際はかなり速い。仕様書に速度を示せないと何もできないので、ゲーム内の距離感・単位時間の統一が不可欠。ゲームにおける速度感覚を養うことが大事ですね。

8. ガケぎわのふるまい

多くのゲームでは崖から落ちられますが、その仕様も色々あります。無条件で落ちる仕様は昔のゲームに多かったものの、よろしくないことが少なくない。移動中は落ちてアクション中は落ちない仕様(攻撃の踏み込みでいちいち落ちると動作キャンセルのようで嫌)、さらにアクションごとに落ちる/落ちないが決まっている仕様(前方回避は落ちない、突進攻撃は落ちる、など)が一般的です。

スマブラでは、フォックスのイリュージョンは崖で止まり、ファルコンキックは崖から飛び出す(ただし終わり際は落ちない)。速度の引き継ぎに注意しないと、いきなり高速で踏み切ることもあります。3Dゲームでは、崖をグッと押すと落ちる、進行方向の崖際が浅い時は落ちないよう補間するなどの仕様も有効。落ちるのが当たり前だと思いがちな崖際ですが、これだけ多くのことが考えられます。テストプレイ中の違和感を見逃さず、適切な仕様を目指してみてください

第2部 ランダム性・ハンデ・平均と平凡・オンラインアップデート(#09〜#18)

ランダム性やハンデ、バランス調整、オンラインアップデートなど、ゲームの公平さ・楽しさ・演出を左右する仕様が中心になります。

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9. マップもゲーム画面

いろんなゲームをしていると、「実質マップ画面で遊んでいるな」と感じることがあります。3D空間を歩いているのに、画面の隅のマップばかり見てしまう。広大で美しい画面なのに、隅でゲームをしているのはもったいないですよね。

桜井さんが思い出に残るのは、『不思議のダンジョン』シリーズの画面全体に半透明でマップを重ねる表示。ボタンを押せばゲーム画面が消え、マップだけで見られます。マップを充実させるだけでなく、メイン画面の情報量を増やすのも有効。レースゲームのガイド表示のように、マップを見なくてもコーナーの度合いが分かるようにしたり、地形の描写で曲がる場所を分かりやすくしたり。画面のどこを見ながらプレイするのか、プレイヤーの意識を踏まえることが大事です。

10. 想定外の完成形

桜井さんは、想定していなかったことが製品版で起きて、納得のいかない結果になった経験を、恥を忍んで明かします。

最適化で「想定外」が起きた例 メテオス 終盤の最適化で高速化=難化 ムシキング 製品版で腹減りが早く スマブラSP なぜかCPが強く感じる

『メテオス』は開発終盤の処理最適化でゲームが高速化し、難度上昇曲線が変わって想定以上に難しくなった。『ムシキング』は開発基盤と製品版で処理速度が変わり、腹減りが早くなった。『スマブラSP』は発売版でなぜかCPが強く感じられ、複数スタッフも同意したものの原因不明のまま。コンピューターを相手にする以上、何が起こるか分からない。他の開発がうまくいくのも、危ういバランスの綱渡りなのかもしれない、と桜井さんは語ります(SPはオンラインアップデートで対処できましたが、ない時代なら何ともならなかったところです)。

11. はじき入力

Nintendo 64で初めてアナログスティックを扱ったとき、デジタルの十字ボタンと違うのは「方向と進度が無段階で取れる」こと。3D空間を歩くのに打ってつけです。だけど桜井さんはもう1つ、入力が隅まで到達する時間を取れることに着目しました。これが、勝手に名付けた「はじき入力」です。

それまでのダッシュは、同じ方向に2度ちょんちょんと入れたり、ボタンを併用したりと、2ステップの操作が必要でした。アナログスティックを倒す速さで強さを変えるのは、感情がこもって分かりやすい。スマブラの実態感のある操作も、これによるものです。スマブラSPでははじき入力の速さも調整できます。『新・光神話 パルテナの鏡』ではダッシュが回避も兼ね、相手の攻撃を引きつけるリスクとリターンに噛み合い、操作もシンプルにできました。新デバイスは闇雲に取り入れず、汎用的なアナログスティックで独特の操作を作れたのが良かった、とのことです。

12. How to Play

複雑なゲームの操作を1から習熟させるのは非常に困難です。だからチュートリアルは不可欠。だけど、面倒なチュートリアルはやりたくないですよね。最も良くないのは、長い文章を説明書のように読ませること。次に避けたいのは、無機質な練習フィールドで操作させること(「早くゲームさせてくれ」と思われます)。

割と一般的なのは、最初のステージの道中にテキストを置いて読ませ、実践させる方法。スマブラはデモムービーを付けるだけにしていますが、これは好んでではなく、操作でコツを覚えてもらう企画を立てながら何度も実装できなかった結果だそうです。初代スマブラの「ターゲットを壊せ」も習熟目的の配置でした。とにかく能動的に遊ばせながら学ばせることが大事。なお、スマブラSPで操作しながらテクニックを学べるモードを実装しようとして、スケジュールの都合で流れたことを、桜井さんは今も「一番悔しい」と悔やんでいるそうです。

13. ランダム性は彩りを添える

ランダム(出鱈目に要素を決める仕組み)は、うまく使えばゲームに彩りを添えます。良い点は、同じことを繰り返す遊びを飽きにくくし、毎回違う展開で鮮度を保てること。一見、戦略性を失うようでいて、実は「様々な状況に対応する」という戦略を与えます。

ランダム性の功罪 良い点 飽きにくい/毎回違う展開 逆転の可能性を残す 悪い点 フェアでない/納得感が薄い ガチ競技には向かない

悪い点は、フェアではないこと。運で結果が変わると、かけた苦労が台無しになり納得できません。運をパラメーター化したRPG(古くは1981年の『ウィザードリー』)もありますが、優先度は低い。スマブラは近年、ファイターからランダム要素を除外する傾向です(ピーチのスマッシュは打ち分け可能に)。ただし勇者の「出るコマンドがランダム」は、うまく使いこなせるかは腕前次第なのでOKとしています。アイテムには多様なランダム性を残し、場をかき回して誰でも逆転できる可能性を残す。「わははと笑って次に行く」ゲームには、この方向性が合うのですね。なお、コンピューターは厳密な乱数を作れないので、内蔵時計など不確定なものを参照すると良いそうです。

14. ハンデブースト

対戦ゲームは、拮抗した展開が一番面白い。だけど腕の差は残酷なほど大きくつきます。そこで対戦ゲームには、時折ハンデがつきます。極端なのは『マリオカート』。順位が低いほどスピードアップするブーストや、アイテム面の優遇です。トップを引きずり下ろしがちでフェアとは言えませんが、カジュアルなゲームなら、ぜひ入れるべき。1位の人がずっと1位では面白くないからです。

ところがスマブラは、基本的に忖度をしません。カジュアル寄りながら実力をしっかり反映させる方針で、「負けると攻撃力が上がる」といった仕様は原則ありません。共通システムとしては、スマッシュボールがリードしている人は取りにくい、切り札ゲージは負けている方がたまりやすい、程度。地形・アイテム・ステージで結果に揺らぎを生む「何でもあり」ルールがパーティーゲームに合います。そして桜井さんいわく、子どもや初心者にわざと攻撃を食らうような「人力ハンデ」こそ最大の効果。家庭の環境でこそ、でこぼこを直せるのですね。

15. 平均と平凡は同じ

仕様でもパラメーター調整でも、桜井さんが持ってほしいと言うのが「平均と平凡は同じ」という考え方です。

スマブラのバランス調整では、強さだけを見ると短所が補われ長所が削られ、性能がどんどん平均化していきます。それは何より面白くない。だから長所がある分は短所を大きくするなど、個性を殺さない方向で監修します。究極的にはマリオ対マリオにすればバランスは完璧ですが、それでは面白くない。異なるものをぶつけたほうが、様々な駆け引きが生まれるのです。

ここで桜井さんは、世界一公平だというデータを明かします。スマブラSPのオンライン対戦の勝率です。

スマブラSP 87ファイターの勝率 最高 51.43% 一番勝てるファイター 最低 47.118% 一番勝ちにくいファイター

87種類のファイターが、最高51.43%から最低47.118%という狭い範囲に綺麗なグラデーションで収まっている。「最下位ファイターでも勝ち目がある」と言えるデータです。弱みもなく強みもなければ、魅力的に感じない。バランス調整をする人は、メリハリをつけてキャラが立つようにしてほしい、というメッセージですね。

16. オンラインアップデート

オンラインアップデートについて、桜井さんは率直に「ありがたい」と言います。今回は制作側の見解として、4点が挙げられます。

1つ目、昨今のゲームは複雑すぎる。昔の100倍・1000倍とも言える複雑さで、巨大なデータはデジタルらしからぬ揺らぎを生む。全てが正しく動くだけでも奇跡的なのです。2つ目、制作中は完成版でプレイできない。手直しすれば完成版ではなくなるため、無修正の完成版に触れる時間は非常に短い。3つ目、市場のテスト力は段違い。1000人に1人のバグもデバッグ中は見つけにくいが、市場に出ればその思考回数は桁違いで、しかも動画に上げられます。

4つ目、バランス調整はあくまでメーカーの自発的なサービス。致命的なバグは直すべきですが、調整はディレクターらを拘束してコストをかけて行うもの。それでも、より良くしてくれることは非難されるべきではない、と考えているそうです。ただし、プレイヤーが最初にやめてしまえばそこまで。最初からより良い状態であるに越したことはない、とも。

17. 画面遷移は素早く

画面遷移は、可能な限りパッと済ませるべきだ、とのことです。別項でも語られた通り、ゲームにおいて遅さは罪です。眠いゆっくりしたフェードアウト、長い暗転、操作を戻すまでの長い時間は、それだけでプレイヤーの貴重な時間を奪います。短気なくらいがちょうどいい(とはいえ何の演出もないと戸惑うので、迅速に、が基本)。

ただし制作側の事情として、暗転をロード時間に当てている作品も多い。初代『バイオハザード』の扉演出はロードを兼ねつつ恐怖演出でもあり、ゾンビがいる部屋では少し開くのが遅かったそうです。初代『ゼルダの伝説』の画面端スクロールも、位置関係を分かりやすくするメリットがありました。ゲームに合った目的を持たせつつ、プレイヤーに無駄な時間をかけないのが基本。テンポが合えば、ワイプなどの遷移演出を使いこなすのも手ですね。

18. 重心をズラすとどうなる?

機械的な「真っ直ぐ移動」や「中心での回転」に、ほんの少しの工夫で感情をつけていく。これも大事な仕様だということでした。

『カービィ』に出てくる大砲の弾は、ただ真っ直ぐ飛ばすと表現として面白くなかったので、スプライトの表示位置を6フレームで一周するようにずらした(開発名称「ヘロヘロ弾」)。すると存在感が段違いになり、ゲームボーイの残像が残る画面とも相性が良かったそうです。

回転軸を中心からズラすと「感情」が出る 中心で回転 無機質に見える 軸を少しズラす 不安定さ=生きた印象(爆弾・剣)

スマブラで爆弾を投げる際は、回転軸を爆弾の中心から少しずらして不安定な感じを出しています。中心軸に固定していたら、もっと無機質に見えていたはず。ホムラの横必殺技「ブレイズエンド」も、最初は剣のグリップが回転軸でしたが、それを少しずらして表現に違いを出しました。アニメーションとは「動かないものに魂を入れる」こと。仕様として作ると真っ直ぐや等速回転が当たり前になりがちですが、機械の常識で味気なくならないよう、工夫を施したいところですね。

まとめ

ここまで「仕様」カテゴリの全2本・18テーマを見てきました。最後に、各部(=元のまとめ動画)の要点を、個別テーマごとに振り返っておきます。

第1部 ヒットストップ・ジャンプ・手触りの設計(#01〜#08)

#テーマ要点
01大事なところはストップ!ヒットストップで大事な瞬間を止め、やった/やられた手応えを演出する
02物理ボタンに重たさを感じさせる同じ物理ボタンでも動かす物で印象が変わる。これがビデオゲームの武器
03ジャンプのしくみ最初に強い上昇+数フレームの落下を入れて戻すと、ジャンプが気持ちよい
048つのヒットストップ仕様先端で手応え抜群・付け根で無し等、8つの仕様で手応えと滑らかさを両立
05注視点をくっつけないカメラの注視点をキャラに固定しない。ゲームに合った演出を持たせる
06遅さは罪「遅いこと」は罪。短縮できる時間は切り詰め、濃密な時間を提供する
07速度の単位速度=距離÷時間。DPF(ドット毎フレーム)で速度感覚を養う
08ガケぎわのふるまい崖際は「押すと落ちる・浅い時は補間」など、公平さと楽しさを左右する

第2部 ランダム性・ハンデ・平均と平凡・オンラインアップデート(#09〜#18)

#テーマ要点
09マップもゲーム画面広い画面の隅で遊ぶのはもったいない。マップ画面も作り込む
10想定外の完成形CP相手は何が起こるか不明。想定外で難しくなった経験もある
11はじき入力スティックを倒す速さで強さを変える「はじき入力」。新デバイスは闇雲に入れない
12How to Play長文の説明書はNG。操作でコツを覚えさせたかったが実装できず今も悔い
13ランダム性は彩りを添えるランダムは反復を飽きさせない彩り。ただしファイターからは除外する傾向
14ハンデブーストカジュアルゲームはハンデを。劣勢ほど加速し、人力ハンデが最大の効果
15平均と平凡は同じ平均化すると平凡=魅力なし。異なるものをぶつけて駆け引きを生む
16オンラインアップデート市場のテスト力は段違い。だが最初から良い状態であるに越したことはない
17画面遷移は素早く遅さは罪。暗転をロードに当てる等、短気なくらい素早く遷移する
18重心をズラすとどうなる?表示位置や回転軸を少しずらすと、動かない物に魂が入る

ボリュームはありますが、気になった部から読み返してもらえればと思います。関連するカテゴリもあわせてどうぞ。