心理学実験

マジカルナンバー7とは|人が一度に覚えられるのは7個?ミラーの論文の本当の中身と「4つ」説

マジカルナンバー7とは|人が一度に覚えられるのは7個?ミラーの論文の本当の中身と「4つ」説

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。 本記事は「マジカルナンバー7」について解説します。

マジカルナンバー7は、人が一度に頭の中に覚えておける数は、7つ前後(7±2)に限られている、という考え方のことです。1956年にアメリカの心理学者ジョージ・ミラーが発表した『不思議な数7、プラスマイナス2』という題の論文がもとになっていて、心理学の論文の中でも特に多く引用されてきたものの1つです。

電話番号や暗証番号の桁数、プレゼン資料の箇条書きは7つまでにしよう、といった話の根拠として、今でもよく持ち出されるので、聞いたことがある人も多いと思います。

ただ、ミラーの論文を実際に読んでみると、そこで主張されていたことは、一般に広まっている「人は7つまで覚えられる」という話とはかなり違っていました。そして今では、人が一度に頭にとどめておける量は、7つではなく4つ前後だとする見方が有力になっています。

「ある整数に付きまとわれている」

ミラーの論文は、少し変わった書き出しで始まります。

「私の悩みは、ある整数に付きまとわれていることです。この7年間、この数は私を追いかけ回し、私の個人的なデータに入り込み、公刊されている学術誌のページから私に襲いかかってきました」

もともとこの論文は、学会での招待講演の内容をまとめたもので、ミラーは当初、自分の研究には講演にできるほどのまとまりがないと考えて、依頼を断ろうとしていたそうです。そこで、自分が調べてきたいくつかの研究に、なぜか同じくらいの数が繰り返し出てくることを、ユーモアを交えて紹介する形にしたと言われています。

2つの別々の限界

ミラーが取り上げた7前後の数は、大きく分けて2種類の実験に出てくるものでした。

区別できる段階の数

1つ目は、絶対判断と呼ばれる実験です。たとえば、高さの違ういくつかの音を聞かせて、それぞれに番号を覚えてもらい、その後で音を1つずつ聞かせて、何番の音かを答えてもらいます。音の種類が5つか6つくらいまでならほとんど間違えませんが、それを超えると、間違いが急に増えていきます。

たとえば1952年のアーウィン・ポラックの実験では、低い音から高い音まで幅広い音を使い、聞き分けてもらう音の数をいくら増やしても、確実に区別できるのは6段階ほど、情報の量にすると2.5ビットほどにとどまったと報告されています。

音の高さだけでなく、音の大きさや、塩の濃さの違う味、目で見た位置などでも、1つの物差しの上で確実に区別できる段階は、だいたい4〜8段階くらいに収まっていました。

すぐに覚えて言える数

2つ目は、数字や文字を読み上げて、すぐにそのまま言ってもらう記憶の範囲の実験です。数字ならおよそ7桁、文字ならもう少し少なく、単語ではさらに少なくなることが知られていました。

さらに後の研究では、覚えておける数は、言葉を声に出したときの長さにも左右されることが分かってきました。1975年のアラン・バドリーたちの実験では、長い単語のリストより短い単語のリストのほうがたくさん覚えられ、人はおよそ2秒ほどで読み上げられる分だけ覚えておけるらしい、と報告されています。

ミラーは、この2つの限界がどちらも7前後になることを面白がりながらも、論文の最後では、2つが似た数になるのは、おそらく単なる偶然だろうと書いています。絶対判断の限界は、情報の量(ビット数)として説明できますが、記憶の範囲は、情報の量ではうまく説明できなかったからです。

図解

1956年という年

この論文が発表された1956年は、心理学にとって節目の年だったとされています。同じ年の秋には、マサチューセッツ工科大学で開かれた情報理論のシンポジウムで、ミラーをはじめ、言語学のノーム・チョムスキーや、人工知能の研究者たちがそろって発表を行い、人の心を情報を処理する仕組みとして研究する流れが本格的に始まりました。行動だけを外から観察する研究が中心だった心理学が、頭の中の働きそのものを扱うようになる、いわゆる認知革命の始まりの1つとして、ミラーの論文は今も語られています。

本当の主役は「チャンク」

ミラーの論文で、その後の研究に最も大きな影響を与えたのは、7という数そのものではなく、チャンクという考え方でした。

記憶の範囲の実験では、覚えておける数は、情報の量ではなく、意味のあるまとまりの数で決まっているように見えました。ミラーは、このまとまりをチャンクと呼びました。

たとえば、F B I C I A U S Aという9つのアルファベットを順番に覚えるのは大変ですが、FBI、CIA、USAという3つのまとまりとしてとらえれば、ずっと楽に覚えられます。覚えている文字の数は同じでも、頭の中で扱っているのは3つのチャンクだけになるからです。日本語でも、電話番号を3つや4つの数字のかたまりに区切って覚えるのは、同じ工夫だと言えるでしょう。

ミラーは、情報を自分の知っているまとまりに符号化し直すことで、覚えておける量を大きく増やせることを示した研究も紹介していて、このチャンクの考え方は、その後の記憶や学習の研究の土台になっていきました。

79桁を覚えた学生

チャンクの力を印象的に示したのが、1980年に心理学者のアンダース・エリクソン、ウィリアム・チェイス、スティーブ・ファルーンが発表した研究です。

研究に参加したのは、記憶力がとくに優れているわけではない、ごく普通の大学生でした。この学生は、読み上げられた数字をその場で覚えて言う練習を、何か月にもわたって繰り返しました。最初は7桁ほどしか覚えられませんでしたが、230時間以上の練習の後には、79桁もの数字を覚えて言えるようになったのです。

秘密は、この学生が長距離走の選手だったことにありました。学生は、3492という数字を「3分49秒2、1マイル走の世界記録に近いタイム」のように、自分のよく知っている走りのタイムとして覚え、さらにそのタイムをいくつかずつまとめていきました。頭の中で同時に扱っているまとまりの数は、ふだんの人と大きく変わらず、まとまり1つに詰め込む中身を増やしていたのだと思います。

実際、この学生も、数字ではなく文字を覚える課題では、普通の人と同じくらいの数しか覚えられなかったとされています。覚えておける容量そのものが増えたのではない、ということがよく分かる結果です。

「7」ではなく「4」

その後の研究では、人が一度に頭にとどめておける量は、7よりもっと少ないのではないか、という見方が強くなっていきます。

数字を7桁ほど覚えられるのは、頭の中で声に出して繰り返したり、自分なりにまとまりを作ったりする工夫が入り込んでいるからではないか、という指摘です。そうした工夫ができないように条件をそろえて調べると、確実にとどめておけるのは3〜5個ほどになることが多く、2001年に心理学者ネルソン・コーワンは、それまでの研究をまとめて、その限界は4つ前後だとする論文を発表しました。

コーワンは後に、ミラー本人とのメールのやりとりも紹介しています。ミラーは、1950年代の時点ですでに、次々に流れてくる数字の最後のほうを覚えておく課題では、覚えておける数が4つほどしかないことに気づいていて、7という数は、頭の中で繰り返した最初の部分と、最後の部分をつなぎ合わせたものだろうと考えていたそうです。

正直、私はこの話を知ってから、「7つまでなら覚えられる」という言い方を見かけるたびに、論文を書いた本人がいちばんその数を信じていなかったのではないか、と思うようになりました。

マジカルナンバー7についてよく出る疑問

箇条書きや選択肢は7つまでにするべきなのですか?

画面のデザインやプレゼン資料の作り方で、「項目は7つまで」という決まりがよく紹介されますが、ミラーの論文は、目の前に見えている項目の数について述べたものではありません。見えていれば読み返せるので、記憶の限界をそのまま当てはめる必要はなく、むしろ、関係のある項目をまとまりに分けて見せるほうが、チャンクの考え方には合っていると思います。

記憶力は鍛えられるのですか?

79桁を覚えた学生の例のように、特定の種類の情報を、自分の得意なまとまりに置き換えて覚える力は、練習でかなり伸ばすことができます。ただ、それは頭の中の容量そのものが大きくなったのではなく、まとめ方が上手になった結果なので、練習した内容以外の記憶にまで効果が広がるとは限らないようです。

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まとめ

本記事はマジカルナンバー7について解説しました。如何だったでしょうか。

「人は一度に7つまで覚えられる」という有名な話のもとになったミラーの論文は、実は、区別できる段階の数と、すぐに覚えて言える数という2つの別々の限界が、偶然7前後で一致していることを面白がったものでした。論文の本当の功績は、覚えておける量は意味のまとまりの数で決まるという、チャンクの考え方にあります。

そして今では、頭の中に確実にとどめておけるのは4つ前後だとする見方が有力で、7という数には、繰り返しやまとまり作りの工夫が混ざっていたと考えられています。7という数字だけが独り歩きしてしまった、という点では、有名な実験の結論が広まる過程でよく起きることの典型的な例なのかもしれません。

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それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。