心理学実験

単純接触効果(ザイアンス効果)とは|見た回数が多いほど好きになる実験と、逆効果になる条件

単純接触効果(ザイアンス効果)とは|見た回数が多いほど好きになる実験と、逆効果になる条件

当サイトを閲覧いただきありがとうございます。 本記事は「単純接触効果」について解説します。

単純接触効果は、ある人や物を何度も見たり聞いたりするだけで、それについて特に何かを知ったわけでもないのに、だんだん好ましく感じるようになる現象のことです。1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが、意味の分からない外国語風の単語や知らない人の顔写真を使った実験で、見た回数が多いものほど好ましく評価されることを示して広く知られるようになり、日本では提唱者の名前から「ザイアンス効果」とも呼ばれています。

何度も流れているうちにいつの間にか好きになっていた曲や、最初はなんとも思わなかった近所のお店に、何度も前を通るうちに入ってみたくなった、という経験は多くの人にあると思います。テレビCMで同じ商品名を何度も繰り返すのも、この効果を狙ったものだとよく言われています。

ただ、単純接触効果は、どんな場合でも働くわけではありません。その後の研究からは、回数が多すぎるとむしろ飽きられることや、最初の印象が悪いものはいくら見せても好きにならないことなど、効果が出る条件もかなり分かってきています。「会えば会うほど好きになる」と単純に言い切れないのは、こうした条件があるからでしょう。

意味の分からない単語を何度も見せる

ザイアンスは、ポーランド出身のアメリカの社会心理学者で、ミシガン大学で研究を続けていました。人は見慣れたものを好む傾向がある、ということ自体は昔から言われていましたが、それが本当に「見た回数」だけで起きるのかを確かめるには、参加者が意味を知らない、最初は何の好みも持っていないものを使う必要がありました。

そこでザイアンスが用意したのが、「イクティタフ」「アフウォルブ」「サブリカ」のような、トルコ語のように見えるけれど実際には意味の無い単語でした。アメリカの大学生の参加者にとって、これらの単語は見たことも聞いたこともないもので、良い意味か悪い意味かを判断する手がかりもありません。

図解

実験では、こうした単語をカードに書いて、単語ごとに0回、1回、2回、5回、10回、25回と、見せる回数を変えながら次々に見せていきました。どの単語を何回見せるかは参加者ごとに入れ替えてあって、単語そのものの響きの良さが結果に影響しないようになっていました。

見た回数が多い単語ほど「良い意味」に

すべてを見せ終わった後、参加者に、それぞれの単語が「良い意味」だと思うか「悪い意味」だと思うかを、7段階で答えてもらいました。

結果は、ザイアンスの予想どおりでした。見た回数が多い単語ほど、良い意味の言葉だと判断される傾向がはっきりと見られたのです。0回の単語よりも1回、1回よりも2回、そして25回見た単語がもっとも良い意味だと判断されていました。

ザイアンスは同じ論文の中で、漢字に似た記号や、大学の卒業アルバムから選んだ知らない男性の顔写真でも同じ実験を行っていて、いずれも見た回数が多いものほど好ましく評価されるという結果を報告しています。顔写真の実験では、写真の人物を「どれくらい好きになれそうか」を尋ねていて、何度も見た顔ほど好意的に評価されていました。

ザイアンスは、同じ論文の中で、英語の単語の使用頻度と、その単語の意味の良し悪しの評価のあいだにも関係があることを示しています。よく使われる単語ほど良い意味を持つことが多く、たとえば都市の名前でも、よく耳にする都市ほど好ましく評価されていたそうです。

気づかないほど一瞬でも好きになる

単純接触効果の研究の中で、特に驚きをもって受け止められたのが、1980年にウィリアム・クンスト=ウィルソンとザイアンスが発表した実験です。

この実験では、不規則な形の八角形の図形を、1000分の1秒という、ほとんど何かが見えたとは気づけないほどの短い時間だけ、何度か参加者に見せました。その後、見せた図形と見せていない図形をペアにして、「どちらを前に見たか」と「どちらが好きか」を答えてもらいます。

結果として、どちらを前に見たかを当てる成績は、当てずっぽうとほとんど変わりませんでした。ところが、どちらが好きかを尋ねると、参加者は前に見せた図形のほうを6割ほどの割合で選んだのです。見たという記憶はないのに、好みのほうにはちゃんと影響が出ていたことになります。

この結果は、好き嫌いの判断が、何かを意識的に認識するより先に、あるいはそれとは別のところで起きている可能性を示したものとして、大きな議論を呼びました。ザイアンスは、「好みは推論を必要としない」という有名な論文の中で、感情は認知とは独立に、より速く働くことがあると主張しています。

鏡の自分と写真の自分

単純接触効果の研究でよく紹介されるのが、1977年に行われた、自分の顔の好みについての実験です。

研究者たちは、参加者の顔写真を撮り、普通の写真と、左右を反転させた写真の2枚を用意して、どちらが好きかを本人と、本人の親しい友人や恋人に選んでもらいました。すると、本人は左右を反転させた写真のほうを好み、友人や恋人は普通の写真のほうを好む傾向が見られたのです。

本人が毎日見ているのは、鏡に映った左右反転の自分の顔です。一方で、周りの人が見ているのは、反転していない本当の顔です。人の顔は完全な左右対称ではないので、本人にとっては反転した顔のほうが見慣れていて好ましく、周りの人にとっては反転していない顔のほうが見慣れていて好ましい、というわけです。写真に写った自分の顔に違和感を覚えるのも、このせいではないかと考えられています。

授業に出た回数だけ魅力的に見えた

1992年には、大学の授業を使った、もう少し現実に近い実験も行われています。研究者たちは、見た目の印象がよく似た4人の女性に、同じ授業に受講生として出席してもらいました。ただし出席する回数は人によって違っていて、1人は一度も出席せず、ほかの3人はそれぞれ5回、10回、15回出席しています。女性たちは授業中、ほかの学生と話すことはありませんでした。

学期の終わりに、受講生たちに4人の女性の写真を見せて、魅力や親しみやすさを評価してもらうと、授業に出席した回数が多い女性ほど、魅力的で好ましいと評価されたそうです。受講生の多くは、その女性を授業で見かけたことすら覚えていなかったと言われていて、ここでも記憶とは関係なく好みが動いていたことになります。

いつでも効くわけではない

単純接触効果は、その後数多くの研究で確かめられてきた、比較的しっかりした現象です。1989年に心理学者のロバート・ボーンスタインが、それまでの200を超える実験をまとめて分析したところ、全体としては効果がはっきり確認された一方で、効果が出やすい条件と出にくい条件も見えてきました。

回数が多すぎると飽きる

まず、回数を増やせば増やすほど好きになっていくわけではありません。好ましさが上がっていくのは、ある程度の回数までで、それを超えると頭打ちになり、さらに増やすとむしろ下がっていく傾向があることが分かっています(頭打ちになる回数は、見せるものや条件によって10回から数十回ほどと幅があるようです)。何度も流れているCMや曲に、ある時点から嫌気がさしてくるのは、この飽きの効果によるものだと考えられています。

また、長い時間じっくり見せるよりも、短い時間だけ見せたもののほうが効果が出やすいという結果も報告されています。じっくり見てしまうと、かえって飽きが早く来るのかもしれません。

最初の印象が悪いと逆効果

もう1つ大事なのが、最初の印象の問題です。最初から嫌いだったり、不快に感じたりするものを何度も見せた場合には、好きになるどころか、嫌いな気持ちがかえって強まることがあると報告されています。

知り合いのことを何度も会ううちに好きになる、という話はよく聞きますが、最初に悪い印象を持たれた相手に何度も会いに行くと、むしろ印象が悪くなってしまう可能性もあるということです。営業や恋愛のテクニックとして「とにかく何度も会え」と紹介されることがありますが、正直、それはこの効果の半分しか見ていない使い方だと私は思っています。

単純接触効果についてよく出る疑問

なぜ見た回数が多いと好きになるのですか?

説明の1つとして有力なのが、何度も見たものは脳が処理しやすくなり、その「処理しやすさ」の心地よさが、そのもの自体の好ましさと取り違えられる、という考え方です。もう1つは進化の観点からの説明で、何度出会っても害が無かったものは安全だと判断できるので、見慣れたものに近づき、見慣れないものを警戒する傾向が、生き延びるうえで役立ったのではないか、というものです。どちらの説明も、単純接触効果が意識的な判断を経ずに起きることとよく合っています。

広告の効果もこれで説明できるのですか?

広告の研究でも、同じ商品名やロゴを何度も見せると好感度が上がることは確かめられていて、単純接触効果は広告が働く仕組みの1つだと考えられています。ただ、実際の広告では、内容が面白いかどうか、誰が出ているか、商品そのものの評判など、ほかの要因もたくさん関わっているので、見せる回数だけで売り上げが決まるわけではありません。前に紹介したように、回数が多すぎると逆効果になることもあります。

関連する実験と記事

1つの印象がほかの評価にまで広がっていく心理は、認知バイアスの記事でも扱っています。見慣れた相手を好ましく思う気持ちも、こうした評価の広がりと結びついていると考えられます。

【認知バイアス】ハロー効果 ─ ひとつの長所が評価のすべてを塗り替えるsenkohome.com/cognitive-bias-halo/

すでに持っているものを手放したくないと感じる心理も、見慣れたものを好む傾向と近いところがあります。

【認知バイアス】現状維持バイアス ─ 変えた方が得でも「今のまま」を選んでしまうsenkohome.com/cognitive-bias-status-quo/

まとめ

本記事は単純接触効果について解説しました。如何だったでしょうか。

意味の分からない単語や知らない人の顔でも、見る回数が多いほど好ましく感じるようになるというザイアンスの実験の結果は、その後の数多くの研究でも確かめられていて、見たという記憶がないほど一瞬見せただけでも好みが変わることまで分かっています。心理学の実験の中でも、今もかなりしっかりと通用している部類の発見だと思います。

ただし、効果が上がっていくのはある程度の回数までで、それを超えると飽きが来ることや、最初の印象が悪いものは、何度見せても好きにならず、むしろ嫌いになることがあることも分かっています。単純接触効果は「何度も会えば好かれる」という単純な話ではなく、もともとの印象を少しずつ強めていく働きなのだと考えておくのが、ちょうどいい付き合い方なのだと思います。

ほかの有名な心理学実験は、一覧の記事からまとめて読めます。

有名な心理学実験の一覧|ミルグラム実験・スタンフォード監獄実験などの結論は今も正しいのかsenkohome.com/psych-experiment-list/

それでは次の記事も閲覧いただけると幸いです。